釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

「狂気の世界」

2019-11-08 19:20:40 | 社会
昨夜の米国株式市場は史上最高値をさらに更新した。中央銀行FRBが9月半ば以来毎日600億ドル〜1000億ドルを金融機関に流し込んでおり、米中貿易戦争も一部で合意が得られたこともあって、株式市場は楽観的になっているようだ。FRBの行動は量的金融緩和(QE)そのものだが、あくまでも量的金融緩和ではないと主張しており、株式市場もそうせざるを得ない状況になっていることを気にしていないようだ。連日、FRBが金融機関にマネーを流し込まねばならない事態は、異常なのだが、それを無視する株式市場もまさに異常である。フランスのBNPパリバに次ぐ第2の銀行、ソシエテ・ジェネラルの投資戦略専門家で、欧州トップとの評価があるアルバート・エドワーズAlbert Edwards氏は、この米国の株式市場の上昇が、明かにFRBの実質量的金融緩和によると述べた上で、"The World Has Gone Mad(世界は狂ってしまった)"とまで表現している。日本はバブル崩壊後、米国はリーマン・ショック後ともに異常な金融緩和を開始し、マネーを金融機関に流し込むだけでなく、超低金利を持続させた。世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターのCEOレイ・ダリオ氏は、この超低金利が「お金は、お金と信用力がある人には基本的に無料で、お金と信用力がない人には基本的に利用できない。これは、富、機会、政治的ギャップの増大の一因となる。」として、現在の米国の格差問題が米国にとっての緊急課題だと述べている。「金融システムにお金をたくさん注入しても、それが金融システムにとどまってしまう。」金融緩和の恩恵を受ける裕福な人は、資金を投機に向けて、実体経済へはお金が回って行かない。米国で金融緩和が開始された後、富裕層がさらに富めば、それが溢れ落ちて、貧しい人たちへも流れて行く、トリクルダウンと言う考えが異常な金融緩和を擁護した。しかし、現実には、そんなことは起こらなかった。ダリオ氏は、今後の金融危機よりも、むしろ、こうした社会的不平等に危機感を感じている。米国社会を不安定化させるためだ。米国では、株式が最高値を更新する中で、学生ローンは1兆6,390億ドル、自動車ローンは1兆1,944億ドル、クレジットカード債務4.149兆ドルでいずれも過去最高となっている。企業債務も政府債務もまた過去最高の高さだ。この債務を拡大させたのが異常な低金利であった。債務はあくまで将来の先取りである。将来の需要、消費が先取りされていることを意味する。日本では、トヨタがまた最高益を更新した。やはり販売台数が増加したことによるものではなく、為替による利益増である。政府の円安政策だけでなく、国内に投資先が見つけられない巨額の資金が米国に投じられた。海外資産1000兆円は、円を売ってドルに変換した後、海外資産(株式・債券・不動産)がそのドルで買われる。つまり、円売りがあるため、これも円安を助長する。企業は社内留保に励み、国内での新たな産業を興すことなど眼中になく、安易に円安と海外投資での利益を求める。競争力の劣化は当然の結果でもある。政府の赤字財政と中央銀行の異常な金融緩和に支えられて、ようやくこの低成長の経済が維持されている。そんな経済が良く見えるように、政府も中央銀行も株価維持に全力を尽くしている。実体経済ではすでに悪化が明かであってもだ。
周辺の山々も色付いて来た

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