釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

失敗が明らかな金融緩和

2018-08-01 19:18:41 | 経済
日本銀行は異次元の金融緩和と称して、超低金利と国債の買い入れなどによる通貨の大量発行を続けて来た。それらにより物価を2%にすることを目標として掲げて来た。しかし、物価は一向に上がらず、超低金利による市中金融機関の経営圧迫と言う副作用や株式購入による株式市場の歪みを生み出した。物価は需要と供給の関係で決まる。需要、消費が供給を上回れば物価は上がる。しかし、日本では物価は1990年代末からほとんど横ばいである。物価指数でみると、1995年から2017年までに2.2%の上昇率に止まり、しかも、その間に消費税率が3%から8%上げられたことを加味すると、それは指数で3%引き上げに相当するため、消費税の影響を除くと、実質的にはむしろマイナス0.8%となり、まさにデフレそのものになる。物価が上がらない原因はネット通販や中国製品などによる価格低下に加え、賃金上昇がないために消費が増えないことがある。現政権が発足した2012年以後、名目賃金の対前年上昇率は0.5%未満であり、実質賃金ではマイナスとなっている。同じ中国製品を輸入し、ネット通販が盛んな米国でも同様に実質賃金は低迷している。簡単に言えば、低賃金で生産出来る中国と同じ製造業では賃金を引き上げることはできない。産業構造を変えなければ、今後も賃金が増えることはないだろう。しかも、日本は極端な少子高齢化型の人口構造になって行く。先月30日、日本銀行は同じ月の23日、27日に続く3度目の、指定した利回り(金利)で金額に制限を設けずに国債を買い入れる「指し値オペ」を実施した。長期金利の指標である10年国債の金利が上昇して来たため、それを低く抑えるための国債買い入れである。同じ月に3度もこれを行うのは市場では金利上昇圧力が高まって来ているからだ。30日、31日に行われた日本銀行の金融政策決定会合では、日本銀行も長期金利を押さえ込んで来た姿勢から、「経済物価情勢に応じ、上下にある程度、変動しうる」として、多少の金利上昇を容認する姿勢に変わって来た。短期金利と長期金利の差が市中金融機関の利益の元である。その差がこれまではわずかしかなく、市中金融機関は厳しい経営環境に追い込まれて来た。かって、1970年代には20%台であった日本の家計貯蓄率も今では顕著に低下して、2%台に落ち込み、G7諸国の中でもイタリアに次ぐ低さになってしまった。ドイツやフランスは10%以上を維持しており、貯蓄より消費が優先されると言われて来た米国すら5%を維持している。賃金が上昇しなければ、当然、貯蓄も増えない。日本の家計は貯蓄を出来なくなったが、企業はむしろ内部留保と言う企業貯蓄を大きく増やしている。財務省による調べでも2017年末で、前年比11.2%増の417兆にもなっている。現在はさらに増えており、日本のGDPに迫っている。企業は将来の個人の消費が期待出来ないことを理解しており、そのため新たな投資に資金を回さず、利益を賃金ではなく、内部留保に回している。一種の企業消費である投資も増えないために、なお、物価は上がって来ない。日本銀行の異次元の金融緩和は経済を活性化することが真の目的ではなく、政府債務の軽減が目的である。物価上昇は政府債務を実質的に軽減出来るし、超低金利はその債務の金利を軽減出来る。通貨を大量発行すれば、通常はインフレになる。戦後すぐのハイパーインフレは戦時の政府債務を実質的に帳消しにする働きをした。2013年4月からの通貨の大量発行もそれを狙ったが、発行された通貨は市中へは流れず、金融機関に日本銀行の当座預金として留まってしまった。金融機関から個人や企業が借り受けようとしなかったからだ。将来の経済的な不安があれば、個人や企業は無駄に借金を増やそうとはしない。仮にこれが行われていれば、物価は確実に上昇していただろう。政府債務の軽減が思惑通りにはならなった。来年度予算はついに100兆円を超えた。政府債務が減少するどころか、さらに増加する。そんな政府の発行する国債は今後ますます買い手が付かなくなる。買い手が付かなければ、国債価格は低下し、その金利は上昇する。いずれ国債価格の暴落とその国債の金利の急上昇がやって来るかも知れない。
昼咲き月見草

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