釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

インフレにトドメを刺される債務とバブル

2021-04-27 19:13:39 | 経済
昨日の米国の株式市場では、S&P総合500種とナスダック総合がともに終値で過去最高値を更新した。コロナ禍で実体経済はまだ回復出来ていないが、マネーだけは有り余っている。1979年からの英国サッチャー政権と1981年からの米国レーガン政権の小さな政府を標榜する両保守政権は新自由主義経済を展開した。政府支出を削減し、民営化を推し進めた。しかし、両国とも、特に米国は製造業が既に衰退しており、金融商品なる新しい商品を「金融工学」により生み出し、金融経済にシフトせざるを得なかった。金融経済とはマネーゲームであり、以後、金融危機が再三訪れることになり、特に2008年のリーマン・ショック後は、中央銀行が本格的に経済を支える構造が常態化した。日本ではそれをバブル崩壊後20年も早く行なって来た。小さな政府を掲げる保守の新自由主義下で、中央銀行の大量通貨印刷が平然と行われるようになった。それを加速させたのは日米の実体経済の低迷から脱却するための政務債務の増大である。もはや小さな政府に止まれなくなり、米国で新たに政権を握った民主党はコロナ禍で、まさに大きな政府を堂々と展開し始めた。コロナ対策1.9兆ドルに続いて、8年間で2.65兆ドルという巨額の環境、インフラ投資を行う。富裕層や企業への増税により社会保障の増額も検討されている。しかし、所詮はこれらの支出を税収で賄うことは出来ないために、債務をさらに積み上げ、中央銀行頼みを続けるしかない。コロナ禍での政府支出の増大や中央銀行の大量の通貨供給で、資産市場へは利益を求める投資資金が集まり、株式を史上最高値まで押し上げている。現在、世界の債務は300兆ドル、金融商品デリバティブは1500兆ドル、未積み立て年金が500兆ドルあり、実質的な総債務額は2300兆ドルにもなっている。コロナ禍では世界の国家間の貿易や投資は減少しており、米国では物価が上昇する、インフレが生じている。米国の先にあげた経済政策は史上まれに見る規模の経済政策で、アメリカのGDPの15%にも匹敵し、EUの7%、日本の4%の経済政策と比較しても群を抜く規模で、これが国内の消費を押し上げ、物価上昇を引き起こしている。今月14日のNHKは「アメリカ 消費者物価 8年7か月ぶり上昇 急激なインフレ懸念も」で、米国の「3月の消費者物価は、前の月に比べた上昇幅が0.6%と、8年7か月ぶりの大幅な上昇を記録しました。景気の回復を反映したものですが、急激なインフレにつながる懸念も出ています。」と伝えている。月に0.6%の物価上昇は年間では7%を超える上昇である。同じ日の米国メディアProject Syndicateで、ニューヨーク大学経済学のヌリエル・ルービニNouriel Roubini教授が、「Is Stagflation Coming?(スタグフレーションが来ているか?)」と題する論を載せている。経済が停滞する中でインフレが進む状態がスタグフレーションである。教授は、保護主義、米中対立、サプライチェーンの分断、移民の制限、労働者の権利向上などが供給の急速な落ち込みにつながるため、需要が大きく落ち込んだリーマン・ショックとは異なると言う。異例の規模の財政政策と、強力な金融政策が長く続く中で、供給が急落する。公的・民間債務がすでに積み上っており(先進国でGDPの425%、世界で同356%)、長期・短期金利とも低く維持しなければ、債務の持続性を保てない。今後数年のうちに、持続的な供給減少の出現により、緩和的な金融・財政政策が、持続的なインフレを、そして最終的にはスタグフレーション的な圧力の引き金を引き始めるとして、インフレがこれまでの債券の趨勢的な強気相場を終わらせ、債券の名目・実質利回り上昇(金利上昇)が現在の債務を持続不可能にし、世界の株式市場をクラッシュさせるだろう、と述べている。世界の主要国は超低金利により支えられて来たが、インフレがやって来ると、金利は上昇せざるを得ない。中央銀行の唯一のインフレ対応策は金利引き上げである。しかし、その金利引き上げは、超低金利に支えられた債務と資産バブルを崩壊させてしまう。そのインフレの足音がコロナ禍の米国で聞こえて来た。

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