釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

新興国体質から抜け出せない日本

2019-04-27 19:17:35 | 経済
現代の世界の経済は、物の製造、販売や輸送や医療介護のようなサービスを主体とする実体経済と、マネーが主体で動く金融経済の二つから成る。英国で産業革命が起きて以来、長く経済の主体は実体経済で、金融経済はその実体経済の補助役であった。資本主義下の株式制度も、企業が投資資金を得るために、その企業の株を売るのが目的であった。株を買った者には企業が得た利益から配当が支払われた。株式はあくまで投資資金を集める手段であった。しかし、やがてその株式は株式そのものの価格上昇を期待する投機的な対象となった。株を買って得られる配当よりも、多くの株価上昇による利益が期待されるようになった。第二次大戦後、世界で最も豊かな国となった米国では、製造業が大きく発展していたが、次第にドイツや日本に追い付かれ、安く優秀な技術で、ついには1980年代に、日本が勝ってしまった。世界第二の経済大国となった日本は、経済の絶頂を迎えたが、バブル崩壊後、長期の経済低迷に陥ってしまった。米国は先進国として、後進の日本やドイツに製造業で敗れ、金融経済に活路を見出したが、日本は世界第二の経済大国となってから現在まで、新興国と同じ輸出産業主体のままで、産業転換を行わなかった。本来、世界第二の経済大国になった時点で、新興国とは異なった産業へ転換しなければならなかった。新興国と同じ産業である限り、国内が疲弊して行くのは時間の問題だ。新興国の安い労働を得るために、工場が日本から移転され、国内では投資が減少する。米国は金融経済と言う新たな産業へ転換することで、新興のドイツや日本とは異なる土俵に乗り、負けることが明らかなそれ以上の競争をとりあえず上手く避けた。ドイツもEUと言う新たな枠組みの中で、自国技術の優位さを元に、EU域内での経済的活路を見出した。無論、現在はそのEUの枠組みが揺らいではいるが。ひとたび、経済大国となれば、新興国とは違った産業に方向転換しなければ、自国経済を成長させることは困難になる。同じ産業であっても技術が優位であれば、何とかなると考えるのは、愚かだ。技術は今では短期間で習得され、追い付かれる。バブル崩壊後、経済の低迷が続く中で、今の日本は、旧来の産業に固執し続けるため、国内では投資対象がなく、投資資金は主に米国に流れてしまった。見かけ上は維持されている現在の日本の経済も、中身を見ると、円安と言う為替による輸出産業の利益と、中国や米国への輸出がまだ残されているからに過ぎないことが分かる。新興国と同じ輸出依存の体質のままであり、その輸出も円安と言う為替に大きく依存している。中国や米国が本格的な景気後退に入れば、たちまち日本の輸出産業は窮地に追い込まれる。バブル崩壊後、1999年2月にゼロ金利が導入されて以来、超長期に渡って、金利が抑えられており、金融機関も利ざやを稼げず、疲弊してきており、みずほ銀行や三菱UFJ銀行などの大手銀行まで赤字を出している。米国への投資が出来ない地方銀行の疲弊はさらに強い。近い将来、世界のどこかで金融危機が発生すれば、その大きな津波にのまれて、日本の脆弱な産業は壊滅的な打撃を受けるだろう。米国では2008年のリーマン・ショックで、株式だけで、時価総額の半分の700兆円が失われた。その米国の株式は今や時価総額で3000兆円に達している。次の米国での金融危機で、仮に株式が同じく半分まで下落すれば、1500兆円が失われる。いかに規模が凄まじくなるか。日本は2008年よりも現在の方が、ずっと多くの資金を米国に投じている。金融危機に対処する政府や日本銀行の手段も、今では限界に来ている。これ以上借金のしようがないほどに借金は積み上がり、これ以上下げようがないほどに金利を引き下げてしまっている。失われた30年は、さらに失われた40年、50年とならざるを得ない。しかも、その40年、50年はこれまで以上に悲惨になる。結局はどこかでリセットするしかない。おそらく政府自身が新札発行の2024年を想定しているように思う。
辛夷( こぶし)

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