釜石の日々

怪物化したマネー

2008年の米国でのリーマン・ショックは日本円で1000兆円が失われたと言われる。この時発生した不良債権を中央銀行であるFRBが買い取ることで、世界恐慌への発展を防いだ。世界恐慌とは実体経済の極端な低迷状態だ。FRBは金融経済の世界で起きたことが実体経済に波及することを防いだわけである。それで、その当時、一般の人々の生活はとりあえず維持された。もちろん、金融経済の世界で仕事をしていた人たちは大きなダメージを受けており、失業した人も多かった。100年に一度などとも言われる経済危機であった。それだけの大きな危機であったにもかかわらず、その後10年経って、そのことを忘れて、今ではその当時以上の金融経済規模に膨らんでしまった。2017年の世界の国民総生産GDPの合計は80兆ドルであった。現在、世界の株式の時価総額は88兆ドルになっている。世界の総債務は233兆ドルで、先物取引、オプション取引、およびスワップ取引など、いわゆるデリバティブと言われる金融派生商品の総額は1200兆ドルに達している。ドイツ銀行だけのデリバティブが75兆ドルと言われている。米欧に加え日本、中国の主要国中央銀行は20兆ドルを超える通貨発行と超低金利により、安易な債務と、株式、債券、不動産などの資産価格の高騰を再び招いた。金融経済危機で最も危惧しなければならないのは総額がとてつもなく巨大なデリバティブである。現在、欧州ではイタリアやギリシャの財政赤字が問題とされているが、それらよりはるかに問題が大きいのはドイツ銀行のデリバティブである。(ちなみに日本の政府債務は12兆ドルに迫っているが、イタリアの政府債務は2950億ドルであり、イタリアの債務など可愛いく見えてしまう。)デリバティブには金融機関同士の取引が絡み、一銀行の破綻は必ず複数の銀行に連鎖する。2008年のリーマン・ショックでは潰れたリーマン・ブラザーズやAIGなどより救済されたシティバンクやメリルリンチなどの方が負債額が大きく、潰せないとして政府やFRBが手を差し伸べた。ドイツ銀行も同じである。しかし、これらの救済は、真の「救済」ではなく、単なる問題の先延ばしでしかない。結局、金融経済は2008年当時以上の負債とバブルを現在生み出している。膨らんだバブルは大きければ大きいほど、破裂した時の衝撃は大きくなる。しかも、中央銀行の行える金融政策はすでに使い尽くして来た。いざと言う時に出動出来る財政も大きな赤字を抱えている。政府や中央銀行が打てる手が限られている中で、一層巨大に膨らんだ金融経済が崩壊すると、もはや実体経済への波及は避けられない。つまりは世界恐慌は避けようがない。こうした世界の状況を見抜いている何人かの著名投資家は、一般の人への警告として、食料の備蓄を促している。これまでの米国での経済危機は、金利上昇局面で起きている。その金利を中央銀行であるFRBは2015年からわずかずつ上げて来ている。今月も来週に0.25%だけ上げる可能性がある。それを行うと、中央銀行から一般金融機関への貸出短期金利は1.75~2%の範囲になる可能性がある。市中の予想では、今年さらにFRBは1〜2回金利を上げるだろうと考えられている。長期金利の指標である米国10 年国債の金利は一度3%を超えてからすぐにまた3%以下に下がったが、今また再び3%に向かって上がって来た。金利上昇は、債務者の負担を増大する。それが過去の経済危機で大きく影響して来た。FRB自身もそのことを承知している。そのため、金利引き上げには慎重な姿勢をとってはいる。しかし、FRBは何としても次の金融危機に講じられる金融政策を確保しておくために、少しでも金利を上げておきたい。ゼロ金利に近ければ、金融危機時に金利を下げる幅が限られる。かと言って、金利を早く上げ過ぎると、バブル化した金融経済の崩壊の引き金を引きかねない。現在、中央銀行はいずれも舵取りの難しい局面に立たされている。ただ、もう現在の状況まで来てしまうと、金融崩壊、世界恐慌は避けようがない。
玉紗参(たましゃじん)
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