釜石の日々

祭りの後

今年7月21日の毎日新聞は、「世界債務  過去最高2.8京円に 量的金融緩和が原因」と題する記事を載せた。同様の記事は日本経済新聞でも小さく載せられた。世界の負債(政府債務+企業債務+世帯債務)が「国際金融協会(IIF)の調べによると、2018年1~3月期の残高は前年比約11%増え、過去最高の247兆2000億ドル(約2京7800兆円)になった。」同紙は続けて、「ドル建てが多く、米国の利上げやドル高が引き金になり、返済に困る新興国が出て市場が混乱する恐れがある。」と書いているが、利上げ=金利上昇で困るのは、何も新興国だけではない。現在、新興国経済が不安定になった原因は、確かに米国の利上げであり、米国の金利上昇で、新興国に投じられていた米国の投資資金が、上昇した金利を求めて、新興国から引き上げられたためと、米国からの新興国の借金が金利上昇分だけ増えているためである。金利上昇は、世界の全ての債務に負担となる。特に米国は政府も企業も、個人も大きな負債を抱えている。失業率が低く、企業収益が伸びているため、米国経済は好調だと報じられている。しかし、勤労者の実質賃金はほとんど伸びておらず、個人は衣食住の基本的な生活費を上回る課税額を負担させられている。(米国では年金保険料は税となっている。)過去最高額を更新し続けている米国の株式も、社債と言う企業の借金による自社株買いが大きく支えており、さらには海外からの米国株への投資も支えとなっている。日本からも年金保険料として貯まった162兆円の25%が主に米国の株式に投じられている。ゆうちょや他の金融機関も同じく米国の株や債券に投じられている。国のあらゆる経済主体が借金をしていると言う意味では、米国が世界で最も顕著である。米国の新債券王と称される債券投資のプロであるジェフリー・ガンドラックJeffrey Gundlach氏は、最近、「30年債利回りが引けで2日連続して3.25%を超えれば、利回り上昇が近いとの兆しになる。」と繰り返し行っていた。その米国の30年もの国債の金利がこの3日、4日続けて3.25%を超え、3.35%まで上がっている。超低金利が続いた中で増加し続けた負債、借金の多くは変動金利であり、金利上昇は金利負担を増大させる。1975年以降のデータでは、金融危機や経済後退は必ず金利上昇が引き金となっている。米国の株式に引きずられて日本の株式も高値を更新したが、株式の暴落時には共倒れする。2008年のリーマン・ショック後、米国の株式は3倍に膨らんだ。リーマン・ショックでは株式は最後には86%の暴落となった。社債と言う借金で支えられた株式は、金利上昇で金利負担のために企業が自社の株式を売らねばならない時期が必ず訪れる。歴史上最高値を更新し続けた米国の株式の暴落は歴史上初めての巨大な暴落となる。この時、日本の株式も当然暴落する。日本の年金162兆円のうち、ほぼ25%が米国の株式、同じく25%が日本の株式に投じられている。つまり162兆円の半分が株式に投じられており、80兆円になる。この株式がリーマンショックと同じく86%暴落すれば、年金は一瞬にして68.8兆円を失う。日本政府にはこれを補填する余力はない。株式はリスクのある投資であるため、長い間年金保険料は安全資産とされる国債に主に投じられて来た。しかし、現政権は無理やりそれを経済の好調を装うために、株式に投じるように変更させた。ゆうちょもそのために動員された。過去の歴史は、積み上がった負債で得られた経済繁栄は必ず崩壊することを教える。現在の世界の負債は、世界のGDPの3倍にもなっている。問題は遠からずやって来る金融崩壊後、政府や中央銀行に打つ手が残されていないことだ。財政出動も金融緩和もこれまで目一杯に行って来たからだ。特に日本では経済が悪化したからと言って、もはやこれ以上に下げようがないほどに金利を下げてしまっている。財政出動も、すでに持続不可能なほどの政府債務になってしまっており、限界がある。無理に財政出動すれば、一気に国債の信用が落ち、国債の暴落を招くだろう。すでに国債は一般金融機関が手を出そうとしていない。2008年の金融危機を予想した投資会社Bridgewater Associatesのレイ・ダリオRay Dalio氏は、次の金融危機は米国債と米ドルの下落となり、ドルは簡単に30%下げ得ると言う。ドルの20%の低下で、日本の対外資産1012兆円は大きく傷を受け、株式の暴落と合わせてダブルパンチを受け、まさに年金は破壊される。
金利上昇と金融危機・景気後退

紫式部
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