時空を超えて Beyond Time and Space

人生の断片から Fragmentary Notes in My Life 
   桑原靖夫のブログ

名画再見:「陽のあたる場所」

2008年02月13日 | 回想のアメリカ

 この映画については前に記したことがあった。今日では、実際に観た人も少なくなった。半世紀前、まだ白黒時代の映画である。しかし、その残像は、長く網膜に残っていた。たまたま衛星TV*で放映されることを知り、懐かしさも手伝って観てしまう。

 20世紀半ば、アメリカの「良き時代」がまだそこにあった。懐かしいモノクロの映像が流れていた。カラーになっていたら観なかっただろう。モノクロの美しさを改めて感じる。

 モンゴメリー・クリフト、エリザベス・テイラー、「だれ、それ」といわれてしまいそうだ。半世紀近く経っているのだから無理もない。エリザベス・テイラーはこれでスターの座を確保した。当時18歳、なんとも表現しがたい美しさだが、映像で見ると宇宙人のよう。別世界、上流階級の令嬢。ただいるだけでよい存在。   

 それに引き換え、田舎から出てきたジョージは、世慣れず、ぎこちない、ただ美貌であるだけの若者だ。叔父ジョージ・イーストマンが経営する水着工場で働くことになるが、特技もなく、包装部門で箱の整理係。しかし、イーストマン家の甥であるというつながりだけで、幹部への将来が約束される。

  ジョージは、まもなく同じ職場のアリス・トリップと映画館で偶然隣り合わせる。「世の中狭いわね」 "small world" という表現は、この時覚えた。エルム通4433が彼女のアパート。どこにでもいるような孤独でひたむきで、いじましいような女性、アリス役のシェリー・ウインターズは、役柄に徹した名演だった。

 その後、まもなくイーストマン家のパーティで、ジョージは名家の令嬢アンジェラ・ヴィッカーズ(エリザベス・テイラー)に出会う。輝かしい上流階級への道が目の前に開ける。アリスの存在が急に重荷となってくる。アリスは妊娠している。

 人気のない湖のボートでの事故死にみえるアリスの溺死。そして、裁判へ。殺意を否定するジョージ。状況証拠は明らかにジョージに不利。陪審員は被告を第1級の有罪と認める。

 電気椅子へ向かう直前。「心で殺人を犯した」という牧師の言葉を否定しないジョージ。そして、アンジェラの言葉、「私たちはお別れをいうために出会ったのね。」

*「陽のあたる場所」 衛星第2 2008年2月12日

コメント (6)
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