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ミリーの短編小説 その4

2013-09-04 23:38:16 | ショートストーリー
最初サジは少し離れたところからこちらの様子を見ていたが、ぼくとミリーがサジに気付いてから、こちらに近付いてきた。そして、ぼくを少し見た後、離れたところでミリーと二人で話していた。

でも、その後ぼくのところにきた。

「できれば、きみと話がしたい。いいかな?」

サジはルナソルマフィアの幹部らしいが、そんな雰囲気は全くなかった。どちらかというと、気さくな感じだ。でも、サジがぼくにいったいなんの用があるというのか。

「はい。」

ぼくは、こう答えるしかなかった。サジとぼくはミリーから少し離れるため、カフェの方向に足を向けた。そのとき、マリと目があった。マリはすごく心配そうに見ていたが、ぼくは、(心配ない)と伝えるため、軽く笑った。

その様子に気付いたかどうかわからないが、サジはカフェの中に入っていき、なんと、マリが座っている席に相席するように勝手に座った。マリはすごく驚いていたが、サジが話し始めたので、黙って聞くしかなかった。

「すまないが、あまり時間がないんだ。これから、君にある場所に行って欲しい。詳しく説明することはできないが、ぼくは君のことを良く知っている。実は君もぼくのことを良く知っているんだ。だから、ぼくのことを信じて欲しい。」

ぼくも、マリもあっけに取られたように何も話せなかった。するとこんどは、マリの方を向いて話し始めた。

「マリ、私は君のことも知っている。これから彼が行くところに君は一緒には行けない。なぜなら、君にもしてもらいたいことがあるんだ。」

ぼくはこの時のサジの言ったことを理解することができなかった。なぜなら、その後すぐにぼくは意識を失っていた。その時、何かビー玉くらいの大きさの赤い玉を見た。そして、それはミリーの小説内で主人公が持っていたものだと分かった。

この時の感覚はとても奇妙なものだった。自分が気を失っていくところをずっと見ていたのだ。いや、実際には見ていたわけではないのかもしれないが、それが分かったのだ。まるで、自分が主人公の小説でも読んでいるようだった。

===

その後、ずっとそのままで、自分が二人いるような感覚が続いた。マリは気を失ったぼくを心配していた。でも、ぼくの意識は深い井戸の底にでも落ちていくようだった。それは、意識を失っていく自分を見る観察者としてのもう一人の自分がいるからこそ意識できたことだ。観察者のぼくは、最初だけマリの様子を見ることができたが、やがて周りはみえなくなった。

そして、ぼくは目を覚ました。周りにはマリもサジもいなかった。もちろんミリーもいない。目を覚ましたぼくを見ていた観察者のぼくにとって、見知らぬ部屋だった。しかし、目を覚ましたぼくにはその部屋は自分の部屋だった。不思議な感覚だ。どうやら、今ぼくはぼくでない誰かになっているらしい。

観察者は観察するのみのようだ。実際に体を動かすのは、もう一人の行動する自分だ。観察者は行動者を観察し、行動者の考えも分かるが、行動者は観察者を意識できない。

ぼくは普通に生活をしているぼくを観察していた。ぼくはKタウンに住む高校生だった。それは、ミリーが転校した後に住んでいた街だと観察者は気付いた。季節は秋だった。行動者のぼくには何でもないことが、観察者には大問題だった。それは、観察者のぼくが高校2年の文化祭が始まる前だと気づいた。つまり、ミリーの短編小説はまだ誰にも読まれていないはずだ。どうやら、ぼくは過去に来ているようだった。

行動者のぼくは不思議な力があるように思った。どこからか、テレパシーのようなものを受信するのだ。それは眠りについている間など、行動者の意識が薄くなった時に観察者の意識と混信することが原因だった。しかし、行動者にはそんなことは分からないため、テレパシーのように感じるのだった。観察者はこの世界には月面都市など存在しないことに気づいた。そして、そのことは行動者にも伝わった。行動者のぼくは月面都市があるはずだというテレパシーを受信したのをすごく不思議に思った。

しばらくすると、行動者はテレパシーを通じて観察者の考えをある程度共有できるようになった。行動者は未来のことを知り、また、世界がいずれ変わってしまうことに気づいた。

行動者も高校生だった。友達にテレパシーや未来のことを話したが、誰も信用しなかった。しかし、行動者にはテレパシーが止まることはなく、世界の改変は間もなく起こってしまうことを確信していた。

そして、それは突然起こった。ある日目を覚ましたら世界は変わっていた。行動者のぼくには違和感は無かったが、観察者からのテレパシーで異変に気付いた。月面都市のルナルート、ルナコン、ルナソルがその世界には存在していた。そして、自分がルナマフィアのボスの息子になっていた。そう、ぼくはサジになっていたのだ。
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