goo blog サービス終了のお知らせ 

大川原有重 春夏秋冬

人は泣きながら生まれ幸せになる為に人間関係の修行をする。様々な思い出、経験、感動をスーツケースに入れ旅立つんだね

『芸三代』

2010-09-03 18:22:00 | 能・歌舞伎
 
『芸三代 心を種として 能楽師 関根祥六・祥人・祥丸』
関根祥六著 広瀬飛一写真 出版 : 小学館スクウェア


初めてお能を観るようになってからもうかれこれ二十年近い歳月が過ぎようとしています。お能の見方を誰かに教わったわけでもなくて全くの自己流で、なんとなく好きだから、気になるからという単純な動機でお能を観つづけてきました。
多い時は1年間に能楽堂で五十の演目を意識的に観る機会を得ました。昨年、関根祥六さんの演ずるお能を国立能楽堂で拝見し、幽玄かつ華美な世界を目の当たりにし、深遠な能の世界になお一層魅了されてしまいました。その場で『芸三代』という関根祥六さんのサイン入り本を国立能楽堂の書籍売場で檜書店の会長さんから求め、何度も何度も読ませていただきました。二十年近く能楽堂に通い、ようやくお能の楽しみ方について理解を深めるきっかけとなったのです。と同時に本書は、世阿弥の教えを忠実に体得し吸収することによって、一般の人々にもわかりやすくガイダンスしてくれる良質な書物であるという印象を受けました。
今年6月に悲しい出来事が『芸三代 心を種として 能楽師 関根祥六・祥人・祥丸』のなかに登場してくる方の中に降りかかり、とても悲しく思います。僕にとっては『芸三代』という本は、お能と世阿弥の世界観を現代に復権した重要な書物だと認識しています。この本の頁を開くたびに深く哀悼の意を表したいと思う日々です。わずか1年も経たないうちに一冊の同じ本を読み進む中で、楽しみながら頁をめくることから同じ頁をめくるごとに悲しくなる経験はしたことがありません。読書というのは、時間と状況によって喜怒哀楽の感情が複雑に交差するんだという体験をはじめてしました。いずれにせよ『芸三代』は、世阿弥の心とDNAを今日的に継承した素晴らしい書籍であり、日本の伝統文化の良質の遺伝子を体現していると信じています。同じ本を3冊求めました。


----------
以下、メモ
盲目の武者で「体はほとんど動きませんが心は激しく動く。そういう曲に、内面のおもしろさを感じるようになりました」と取材で(関根祥人さんは)語っていました。