連れ合いと子どもが帰ってきた。今じゃみんな家で寝てるぜ。
やっぱり家のがいいんだろう。どっか行っても必ず帰ってくるもんな。
==============================
「ワナワナしてるわ。目もパチパチしてるし。」
「チャッチャ、がんばるんだ。大丈夫か?」
「歩ける?」
「無理だろう。」
「意識はしっかりしてそうね。目も見えてそう。すぐ砂糖水を作ってくるわ。」
「パパー、チャッチャどうしたの?」
家の中が急に騒がしくなった。アイツが子どもよりドタバタ走り回ってる。ちゃんと喰わないでインシュリンの注射を打つと、糖尿病のアニキはフラフラになる。いつもだったら注射の後も喰うのに、あの日はぐっすり寝ちまったんだ。いっぱい二本足が来てたから、おいらもずっと部屋で寝てた。
フラフラになったら砂糖水ってもんを飲む。
フツーの水じゃなくて、なんか違う水らしい。おいらもガンのときに使ってたスポイトで口に入れる。
(こうやってね。おいらもこんなことやってたんだ→)
あれはヤなもんだぜ。口を無理に開けさせられてさ。フラフラだってアニキもヤなんだろう。
口を開けない。
「チャッチャ~。がまんしようね。これ飲んだらよくなるよ~。」
アニキを抱っこしてる連れ合いがヘンな声で言ってる。
アイツは黙って、アニキの顔を押さえながらスポイトで飲ませてる。
「もうちょっと。」
「あと1回。」
とかなんとか。
アニキはタオルにくるまれて連れ合いの腕の中。下から見てるおいらには見えない。
「もっと飲ませる?」
「吐くかな?」
「目のパチパチが止まらないわね。」
「まだ、効いてきてないんじゃないか。」
「早く、早く!」
「チャッチャ、苦しいか?」
ふたりでゴソゴソ話しながら、タオルの中のアニキを見てる。
良くないんだろう。アニキの頭の中のテレビはずっと真っ白でなんにも映ってない。
おいらは開いてたドアから外に出た。
こんなことが何回あっただろう?
おいらのガンはなくなったのに、糖尿病はなくなんないらしいな。
(つづく)
やっぱり家のがいいんだろう。どっか行っても必ず帰ってくるもんな。
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「ワナワナしてるわ。目もパチパチしてるし。」
「チャッチャ、がんばるんだ。大丈夫か?」
「歩ける?」
「無理だろう。」
「意識はしっかりしてそうね。目も見えてそう。すぐ砂糖水を作ってくるわ。」
「パパー、チャッチャどうしたの?」
家の中が急に騒がしくなった。アイツが子どもよりドタバタ走り回ってる。ちゃんと喰わないでインシュリンの注射を打つと、糖尿病のアニキはフラフラになる。いつもだったら注射の後も喰うのに、あの日はぐっすり寝ちまったんだ。いっぱい二本足が来てたから、おいらもずっと部屋で寝てた。
フラフラになったら砂糖水ってもんを飲む。
フツーの水じゃなくて、なんか違う水らしい。おいらもガンのときに使ってたスポイトで口に入れる。
(こうやってね。おいらもこんなことやってたんだ→)
あれはヤなもんだぜ。口を無理に開けさせられてさ。フラフラだってアニキもヤなんだろう。
口を開けない。
「チャッチャ~。がまんしようね。これ飲んだらよくなるよ~。」
アニキを抱っこしてる連れ合いがヘンな声で言ってる。
アイツは黙って、アニキの顔を押さえながらスポイトで飲ませてる。
「もうちょっと。」
「あと1回。」
とかなんとか。
アニキはタオルにくるまれて連れ合いの腕の中。下から見てるおいらには見えない。
「もっと飲ませる?」
「吐くかな?」
「目のパチパチが止まらないわね。」
「まだ、効いてきてないんじゃないか。」
「早く、早く!」
「チャッチャ、苦しいか?」
ふたりでゴソゴソ話しながら、タオルの中のアニキを見てる。
良くないんだろう。アニキの頭の中のテレビはずっと真っ白でなんにも映ってない。
おいらは開いてたドアから外に出た。
こんなことが何回あっただろう?
おいらのガンはなくなったのに、糖尿病はなくなんないらしいな。
(つづく)