シロ猫ピッピの「おいら物語」

生死をさまようガン闘病中に人間の言葉がわかるようになったシロ猫ピッピの物語。ニュージーランドからお送りしています!

Vol.0316■最後の「こんにちは」

2007-09-21 | 最後のメッセージ
アニキはおいらが見えないのに慣れてきたみたいだ。
夜になるとおいらのからだが埋まってるところのすぐ上のデッキに来て座ってる。
見えなくても感じてるんだ。でも、それもだんだん弱くなってるだろうな。
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「こんにちは」の人あきこさんからの3回目の交信。



「ピッピちゃん、こんにちは。」
「うん。」
弱りきってたおいらは、もう「こんにちは」って言えなかった。「うん」が精いっぱいだった。

「つらいね。みんな心配してるの。」
「うん。 ごめんね。」

「お水はどう?」
「いらない。」
からだの中が動いてなかったから、水も飲めなかった。飲んでも出てこないから、おいらはそんなに脱水してなかった。あんなに弱ってたのに、毛はけっこうフカフカしてキレイだったんだ。

「寒くない?」
「今 足がひえている感じ。」
もう寒さも感じてなかった。からだが冷えてきてて、寒いのか自分が冷たいのかよくわかんなかった。足の先っぽだけ、まだちょっとなにかを感じてたんだ。

「どこで寝たいの?箱はイヤ?」
「向きをかえると ちょっとはカラダが楽になるんじゃないかと思ってうごきたい。すみっこの暗いところにいきたい。」

その頃のおいらはベビーバスかアイツらが「ハウス」って呼んでたバナナの箱で寝てたんだ。骨と皮になったおいらは寝てると骨が痛かった。アイツがときどき来て「ピッピが焼けたかな~」とか言いながら、ひっくり返して向きを変えてくれてた。でも、アイツが寝るとそれがない。動けないおいらは箱の中でバタバタするしかなかった。

歩けないおいらに、四つ足らしく外のどこかに隠れるのはもうムリだった。せめて部屋のすみの暗いところに行きたかった。アイツらから丸見えでも、すみに行って背中を冷たい壁にくっつけていたかった。カーペットの上ならそんなに骨も痛くならない。寒さも感じないからもう毛布はどうでもよかった。

「チャッチャちゃんのことは心配しないでね。」
「うん。」

おいらはずっとアニキのことが心配だったんだ。アイツらが1日中おいらのことをしていて、ドタバタドタバタしてたからね。アニキはいつも部屋のすみで、ご飯と一緒に寝てた。目が覚めたらひとりで喰えるように。糖尿病でテイケットウが起きないように、あんなにご飯の入ったボールを持って追いかけ回され、お手々まんまで喰わされてたアニキなのに、おいらのガンがわかってからはずっとひとりで喰ってたんだ。

「みんなにメッセージはある?」
「うん。みんなありがとう。今はあまり頭がまわらないんだけどみんなが近くにいてくれてうれしい。」

(いつも一緒でありがとう→)




交信はこれで終わった。
伝えたいことは全部言った。

そう、「ありがとう」と「うれしい」。
これだけだ。 




おいらは口だけじゃなくて、目もしっかり閉めた。
暗いどこかに隠れられないんだったら、自分で目を閉めて暗くするしかない。やりたいことは全部やった。

(たぶん、つづく)


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