水沢司法書士・行政書士事務所

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サラ金の根抵当権仮登記

2008年03月05日 | Weblog
去年の5月というかなり古い話になってしまうのですが、時期が来たらブログに載せようと思っていた事案について紹介します。

この案件は、サラ金6社から約定残高400万円以上を借り入れている他、住宅ローンを負っているという方の依頼でした。

こういうケースの場合、住宅資金特別条項を使った民事再生手続を執ることができれば一番いいのですが、この方の場合、某サラ金1社(仮に、A社とします)からの借り入れについて、担保として自宅に根抵当権設定仮登記がされていました。

要は、サラ金からの、「おまとめローン」という甘い言葉を信用した結果、泥沼に陥った、という事案です。

こういう場合、民事再生手続を執ることはできません。

なぜなら、

住宅の上に、法196条3号の抵当権の他、住宅ローン関係の抵当権以外の担保権が設定されている場合には、住宅資金特別条項を定めることはできない(法198条1項但書前段)

とされているからです。

利息制限法所定金利に引き直した結果、債務合計額は約300万円です。


破産はできない、民事再生もできない、となると、あとは任意整理で解決を図るしかないわけですが、依頼者の収入から考えて、

根抵当権を付けているA社が分割返済に応じさえすれば、十分に住宅ローンを払いながら、サラ金の返済もできていける、はずです。

そこで、
6社全社に対し、5年以内での分割返済和解案を提示することにしました。

そうしたところ、A社を除く5社との間では、無事提案通り(合計月2万7000円)の和解が成立。

しかし、A社の反応は、

「こんな条件(分割返済、将来利息カット)を飲めるわけがない。何年も取引ある人だったら考える余地はなくはないが、1年も経っていない人には一切譲歩しない。」

という回答でした。

元々依頼者は、利息を払えないから司法書士に高い金を払って依頼しているのです。

ここで、将来利息の払いに応じてしまえば、司法書士に依頼した意味がありません。


「話し合いに応じてもらえないならしょうがないですね。こちらとしても、債務不存在の訴訟か、特定調停起こして17条決定貰います。」

と言ったところ、A社担当者は、

「どうぞどうぞ。こちらは異議を申し立てるだけですから。」

ということでした。


仮に、裁判所が、制限利息による引直し後の債権額を基に17条決定を出してくれたとしても、A社が異議申し立てれば、まったく意味がなくなってしまいます。

しかし、異議を申し立てた相手方も、17条決定に沿った入金が続いている限り、一括弁済を請求したり、訴えを提起したりすることは多くない、という話もどこかで聞いたので(未確認情報です)、

一か八か、A社に対しては特定調停を申し立て、万一の時は、錯誤無効・公序良俗違反を理由に提訴するしかない、ということを依頼者に説明し、同意を得ることができました。

そして、第1回目の期日となり、なんとか17条決定を出して欲しいと裁判所に伝え、待ち時間に、このようなケース(根抵当付き)の特定調停は多いか調停委員に尋ねたところ、ここ最近は、債権者から異議も出ずにうまくいっているとのことでした。

最近の事情はどうでしょう。1年も前の話じゃだいぶ事情が変わっているかも知れません。

ただ、調停委員の話だと、A社は、「今日は誰が来ているのか」「司法書士も来てるのか」ということを聞いてきたそうで、調停委員が、本人も司法書士も来ていると伝えたところ、すんなり債権者も応じたということなので、どちらかが来ていなかったら、また対応も違ったのかな、と少し思ったりもしました。

2週間ほど経って、分割払いを定めた17条決定が送達され、無事2週間の抗告期間も経過し、ようやく依頼者も一安心することができました。

ようやく1年が立つところで、支払はまだまだ長く厳しいでしょうが、生活再建のために、是非とも頑張って欲しいと願うところです。



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