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J.H.チャールスワース「偽典とモルモン書に見られる救世主(メシア)像」の和訳を終えて (一)

2015-10-06 10:19:38 | 聖書

[メシヤ待望を思わせる画像]

1978年、偽典の分野で第一人者と目される専門家が、救世主像について偽典とモルモン書を比較する講演をBYUで行ない、同大学の宗教学センターに記事を寄せている。容易にはあり得ないことである。その専門性から日本語への翻訳は大変難しく、改善の余地を残していると思う。それを補うために、あるいは判りやすくするために、ノートに書き直すような形で要点を記しておきたい。

内容は大きく分けて次の六つの部分からなっている。
  1 資料の増加
  2 旧新約間のユダヤ教
  3 方法論
  4 偽典における救世主像
  5 偽典とモルモン書の救世主像、その比較
  6 結語
長い註を含めて邦訳34頁に及ぶ長文で、最後の5,6に到るまでに記事の8割を割いている。以下、順を追って要点を記していきたい。

 1「資料の増加」 偽典と呼ばれる文書は紀元前200年から紀元200年の間に書かれており、これらの文書や同様の他の文書を含む大きな文書群から、まず旧約聖書、次いで新約聖書を構成する文書が集められ、正典化された。なお、偽典文書はアブラハム、エリヤなどのような人物から刺激を受けて書かれており、著者の多くは実際アブラハムやエリヤなどの人物になりきって書いている。その主な思想の一つは、神が通常の歴史、そして時の流れに終止符を打ち、約束された時代が来て時満ちたる世を始められるというものである。従って「現在」についての認識は、しばしば悲観的で当時の読者に未来を待望させる。20世紀の初めに偽典が米で編纂された時、15篇が収録されたが、現在その数は飛躍的に50篇に増加している。(日本語では教文館から全9巻、外典を含み68篇が「聖書外典偽典」として刊行されている。)

 2「旧新約間のユダヤ教」 今日、旧新約間のユダヤ教はギリシャやローマの世界から孤立した存在ではなく、大きな影響を受けていたことが認められている。それでパレスチナのユダヤ教と区別して、離散(ディアスポラ)のユダヤ教と言う風に語ることはない。むしろ驚くほど多彩な、ヘレニズム化したユダヤ教について語るようになっている。
 以前、旧新約間のユダヤ教を理解するのにラビ文書を重要視していたが、E.シューラーの著作に見られる考え方に戻って、そうではなくなっている。すなわち、ラビ文書が重要な資料であることに変わりはないが、諸文書の活用に当たっては文書の最古層を探し出すため、ふるい分け、比較考慮し、編集史(Redaction Criticism) の手法を適用するべきである。その結果、偽典が旧新約間期を理解するための最大の資料であることが理解されるに至っている。これらの文書は、もはやユダヤ人周縁異端グループが産出したものとして捨て去ることはできない。

 3「方法論」 偽典50篇全てについて救世主に関連する部分を万遍なく調べるため、著者は三つの術語に絞っている。それは、「救世主(メシヤ)」「油注がれた者」「キリスト」の三語である。他にも救済者(小文字のmessiah)に関連すると考えられるものに、「人の子」「義なる者」「牧者」「僕(しもべ)」「預言者」などがあるが、著者によって託す意味に差があり、あいまいさが残るので厳密さを求めて、それらの言葉をもとに検討することは行っていない。

- - (ニ)に続く - -  

* 日本語訳のpdfファイルを http://www.translatedmaterials-for-jpselds.com 「翻訳文献」2に置いています。



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