榊原康夫著「聖書読解術」1970年が今でも手に入るかネットを見ていて、彼が今年1月6日81歳で亡くなったことを知った。私は20代半ばの頃、彼の分かりやすい聖書関連の啓発書に魅かれ、彼の神学の深さに厚い信頼を寄せるようになった。そしてその後、続けて彼の本を読んだ。榊原康夫は日本キリスト改革派の牧師であった。
私が神戸で改革派のカベナンター書店に時折り立ち寄っていた頃から間接的に御縁があったわけで、70年代に首都圏に1年引っ越したときに、榊原師が牧会しておられた東京恩寵教会に私は二度訪ねている。一度は個人的に訪問し、面談に応じていただいた。厚顔にも「教義と聖約」を一冊差し上げたところ丁寧に受け取り、末日聖徒の正典について少し質問された。私なりに懸命に返答したが、彼のレベルで問答ができたか自信がなかったのを覚えている。短い交換に応じていただいた後、親切に礼拝堂を案内していただいた。彼は、JR恵比寿の駅などでモルモンの宣教師が伝道しているのを見て、都会で改宗する若者たちの牧会(指導、世話)ができているのだろうかと他宗ながら心配する言葉を口にされた。
もう一度は、上記恩寵教会で首都圏聖書研究会を主宰されていたのを聞きに行った時のことであった。首都圏内外から大勢のクリスチャンが聞きに来ていた。講演のレベルの高さと聴衆の熱意に深い感銘を受けたのを覚えている。後に榊原康夫の名は啓発書に留まらず、専門の領域でも重きをなす神学者であることを知った。例、「モーセ五書緒論」(新聖書注解 旧約I いのちのことば社 1976年 pp. 9-53)など。
榊原氏は食後の寛いでいる時や気分転換にタルムードを開いてみるほどの博学であると伝え聞いたことがある。ひとりの戦後日本キリスト教界を教化し導いた、優れた神学者、牧師が去って行かれた。個人的に親しみと敬意を覚えていたので、衷心より逝去を悼む。
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