宗教学者、「信仰なき宗教」について述べる

  [岡本亮輔北海道大学(院)准教授、1979生まれ]

北海道大学准教授岡本亮輔が、「中央公論」１月号で「広がりを見せる『信仰なき宗教』」という文を載せている。

それによると、欧米で「教会離れ」が進んでいて、英仏では毎週教会に行く人は一割に満たず、その多くは高齢者である。教会での結婚、聖職者、洗礼を受ける者の数が軒並み激減して、西欧のキリスト教は危機的な状況にある。

米国は先進国の中では例外的に宗教が活発な社会と言われるが、2014~17年の調査（教会出席率）でカトリック39%, プロテスタント45%とやはり大幅に減っている。

教会（特にカトリック）では、体系化された教えが本（カテキズム*）にまとめられて、幼少時から説かれる。そこには中絶や同性愛、自殺などについて保守的な教えが示され、受け入れることが求められる。教会の教えの全てをワンセットで受容することになる。イエスを神の子と受け入れるなら、同性愛など全て否定するよう、信徒はいわば命令される。

*カテキズム- -教理問答（集）。語源はギリシャ語 κατηχισμός で、復唱する(echo)意が含まれる。

こうした組織的命令方式が、社会の多様化とともに受け入れられなくなるのは当然で、それが教会離れとして現れている、と見る。出席率は下がっても、自分はキリスト教徒であると思っている人はいて、「所属なき信仰」と社会学者グレース・デヴィは呼んでいる。

そのような人は、教会が示すモデルとは異なる仕方で信仰を持ちたいと思う。別の宗教学者トーマス・ルックマンは「見えない宗教」と呼び、多様化した社会では教会の教えをワンセットで受け入れることはなく、一部の要素だけが取り出されたり、さらには他の宗教の要素と結びつけられたりする、と見る。

[ルックマンの「見えざる宗教」]

つまり、宗教は個人の心の中で自由に組み上げられるようになり、カテキズムとは対照的にその人の信じていることが社会的に見えづらくなる、と説明する。ルックマンの議論は宗教の私事化論と呼ばれる。

以上、岡本亮輔の記事を要約して紹介したが、ニュージーランドにそっくり当てはまるようなldsの事例が生じている。また、神殿長がどこそこのステーキ部長は全く来ない、となかば責めるような口調で語るのを以前聞いたが、日本でも前からどの教えをどのように守るか、選んでいる会員がいたことが窺える。