2021年度に寄附者数・寄附額ともに史上最高を記録したふるさと納税。全国1位となった北海道紋別市は約153億円もの寄附額にのぼりました。
一方、草加市はふるさと納税による他自治体への流出額が、寄附受け入れ額を大幅に上回る”流出超過”が続いています。草加市のふるさと納税の深刻な現状をまとめました。
■ふるさと納税の経費割合48%に増加
2021年度に草加市へふるさと納税していただいた寄附件数は3427件で、前年度の4倍近くに増加しました。寄附金額は約5785万円で、前年度の3倍近い増加となりました。(資料1)
ふるさと納税の募集に要した返礼品などの経費も増えています。2021年度の寄附金額5785万円に対して、返礼品などを含めた経費は約2787万円で、寄附金額に占める経費割合は48%に達しました。前年度の44%から4ポイントの上昇です。(資料3)
結果、寄附金額から経費を差し引いた額は約2998万円になります。
なお、近年の動向として、草加市へのふるさと納税の返礼品は、トイレットペーパーやティッシュなど日用品の人気が高いようです。
【資料1】ふるさと納税の寄附件数と額の推移
■収支は4億5千万円もの赤字
一方、草加市民が市外自治体へふるさと納税を行ったことによる市民税の減収額はどうなっているでしょうか?
2021年度、草加市民が市外自治体へふるさと納税を行ったことによる市民税の減収額は約4億7925万円でした。先ほどの寄附金額から経費を差し引いた額2998万円から、市民税の減収額を差し引くと約4億4928万円もの赤字となります。(資料2、資料3)
草加市の場合、市民が市外自治体へふるさと納税をする額が、受け入れ額を大幅に上回り、流出超過の一途をたどっています。
【資料2】ふるさと納税の赤字額推移
■国の減収補填と地方交付税の謎
ただし、市民が市外自治体へふるさと納税したことによる市民税の減収を国が補うルールがあります。ざっくりですが、市民税の減収額の75%を、国が自治体へ地方交付税として払ってくれるルールです。つまり、理論上の減収分は市民税が減収した分の25%に収まります。これを踏まえると、草加市の理論上の赤字額は4億4928万円から、8984万円に減ることになります。(資料3)
ですが、この地方交付税が非常に厄介です。国が払ってくれるはずの金額を、額面通り交付税として自治体に払ってくれているかが、自治体には分からないんです。地方交付税は、国がいろいろなメニューを一つの器にのせて、しかも、そこに様々な係数をかけて「総額いくらです」と自治体に払う仕組みです。そのため、ひとつ一つの交付金が実際いくらもらえたかが分からないんです。(ここでは地方交付税の課題は省略します)
【資料3】ふるさと納税の収支額の推移
■まずは現状認識の共有から
結論として、ふるさと納税が草加市内経済の活性化につながっている側面もある一方、草加市のふるさと納税の収支は4億5千万円規模の赤字(2021年度)となっています。国として赤字分を補う制度があり、試算すると理論上の赤字額は最低でも8984万円(実際の額は不明)です。いずれにしても流失超過の深刻な状況が拡大の一途をたどっています。議会内外でのこれら現状認識の共有から、今後の取り組みの議論を目指します。