草加市議・佐藤のりかず公式ブログ

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【草加市財政】経常収支の硬直化と50年

2023年11月29日 | 市政・議会・活動など

自治体の財政構造の弾力性を測るものさしである経常収支比率。1969年以降の草加市の推移をまとめました。

■はじめに…経常収支比率とは

2022年度における草加市の経常収支比率は前年度比8.4ポイント上昇(悪化)の96.3%に達しています。

この経常収支比率をお家で例えると…毎月の給料と比べて、食費や家賃、水光熱費などの生活費(経常的な経費)の割合が大きくなると、家計に余裕がなくなってしまいます。急な出費が必要な時などに対応できなくなってしまいます。同じように、草加市の財政も、災害時などの突発的な対応や自由な財政運営ができる弾力性を確保しておく必要があります。それを測る指標が経常収支比率です。

草加市の場合、家計の生活費にあたる経常経費が、地方税や交付税などの経常的な収入の96.3%も占めています。経常収支比率が高い=財源に余裕がない状況で、財政構造の弾力性が低い「硬直化」していると言えます。

【グラフ】草加市の経常収支比率の推移

■県内平均を上回り上昇傾向続く

グラフを見ると、経常収支比率は昨年度だけグッと下がっています。その主な理由は、国の決算見通しに伴う地方交付税の追加交付(※)により、自治体が自由に使える地方交付税が増えたことで、経常収支比率の分母も大きくなったからです。全国的に生じた状況です。

そのため、昨年度の一時的な低下を除けば、年々、経常収支比率は上昇傾向が続いています。財政が一層硬直化しています。

また、埼玉県が公表した「県内市町村の令和4年度普通会計決算概要(速報)」によると、経常収支比率の埼玉県内市平均は93.6%で前年度より4.1ポイント上昇したとのことです。草加市は96.3%で、県内平均を2.7%上回っています。

(※)臨時財政対策債の上限引き上げにより実施

■1975年の埼玉県財政非常事態宣言を超える水準

1969年以降の経常収支比率の推移を見ると、1975年(昭和50年)に草加市の経常収支比率が90.9%まで上昇しています。

草加市史によると、1974年(昭和49年)に超過負担が歳出決算額の5.3%、市税の10.3%を占める状況まで悪化しました。翌1975年、経常収支比率が90.9%まで上昇。1977年(昭和52年)には、経常収支比率85.6%で県3位に悪化したと記されています。その主な要因は、義務的経費のうち公債費・人件費の伸びとされました。

当時、埼玉県においても1975年7月に畑知事(当時)が県財政非常事態宣言を出すなど、財政悪化が全体的な課題となっていました。

現在の草加市の財政状況は、県財政非常事態宣言の当時をさらに超える財政構造の硬直化(経常収支比率の上昇)に直面しています。

■財政再建と市民サービスの両立へ

財政収支比率=財政構造の硬直化の改善が喫緊の課題となっています。

ただし、経常経費は市民サービスの維持に必要な経費であり、財政構造を弾力化させるために市民生活に直結する経常経費をただ削減させれば良いという訳でもありません。また、経常収支比率が高いことは、その自治体がそれだけ市民のための経常的な独自施策をおこなっているという側面もあります。

市民の暮らしや命に直結する施策を守りながら、財政再建を目指していく。そのためには、どこに軸足をおき、どう財政のバランスをとるか、みんなで考えていくことが重要です。

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草加市の財政状況【2022年度決算】

2023年11月28日 | 市政・議会・活動など

■黒字決算と基金取り崩し

草加市の 2022 年度一般会計決算は、歳入総額が 1017 億円、歳出総額が 945 億円で単純な収支(形式収支)は 71 億円の黒字となりました。そこから翌年度へ繰り越すべき財源を差し引いた実質収支は57億円の黒字でした。

しかし、そこから前年度の実質収支を控除し、基金の取り崩しを差し引くなどした最終的な収支(実質単年度収支)は約7 億円の赤字でした。前年度の黒字 50 億円から大幅に悪化しています。実質単年度収支が赤字であることから、基金など貯蓄の取り崩しなどにより財政をやりくりしている状況にあります。

税収の根幹である市税収入が前年度比 11 億円増の 386 億円になるなど、コロナ禍で落ち込んだ税収が回復しているような側面(市税収入の詳細はコチラ)も見られます。しかし、収支全体では前年度の余ったお金(繰越金)やこれまでの積立(基金)を取り崩してのり越えた決算状況が伺えます。 

 

■歳出項目ごとの増減

一般会計の歳出項目を前年度比較で一覧にまとめました。

民生費や衛生費の増減は、新型コロナワクチン接種の関連費用など国の施策の影響が主要因となりました。また、ここ数年は総務費の市役所本庁舎建設や、土木費の新田駅東口土地区画整理事業などが歳出額の増加要因となっています。それら事業により借金(市債)も増加したため、返済する公債費も増加しています。

 

 

【参考】2022 年度の主要事業 ※千円以下は切り捨て

  • 新庁舎建設工事・備品購入:32 億 3641 万円
  • 獨協大学前<草加松原>駅のホームドア設置補助:1 億 500 万円
  • 記念体育館エアコン設置に向けた設計業務:1164 万円(設置工事は 2023~24 年度実施)
  • 市民温水プール建て替えに向けた解体工事:4547 万円
  • 松原児童青少年交流センターミラトン建設工事:3 億 7374 万円
  • 児童発達支援センターあおば学園建設工事:9638 万円
  • 新型コロナワクチン接種関連費:8 億 780 万円
  • プレミアム付商品券事業:3 億 8788 万円
  • 新田駅東西口区画整理事業:17 億 3521 万円
  • 小中学校体育館のエアコン等設置事業:8 億 6759 万円 

 

■貯金減少

2022 年度末時点における草加市の基金残高は合計 155 億円で、前年度より 26 億円減少しました。そのうち、使い道が自由である財政調整基金は 74 億円で、前年度より 8 億円減少しました。また、市役所新庁舎建設に向けて、2019年度末に45億円まで積み立てた庁舎建設基金が、建設工事の進捗により1億円まで減りました。

 

■借金増加

草加市の市債残高(借金)は、全会計の合計額が前年度比15億円増の1029億円でした。2020年度まで削減が進んでいましたが、2年連続で増加に転じています。

 

 

■財政の硬直化

2022年度の経常収支比率は96.3%でした。

お家で例えると…毎月の給料と比べて、食費や家賃、水光熱費などの生活費(経常的な経費)の割合が大きくなると、家計に余裕がなくなってしまいます。急な出費が必要な時などに対応できなくなってしまいます。同じように、草加市の財政も、災害時などの突発的な対応や自由な財政運営ができる弾力性を確保しておく必要があります。それを測る指標が「経常収支比率」です。

草加市の場合、家計の生活費にあたる経常経費が、地方税や交付税などの経常的な収入の96.3%も占めています。経常収支比率が高い=財源に余裕がない状況で、財政構造の弾力性が低い「硬直化」していると言えます。ただし、経常経費は市民サービスの維持に必要な経費であり、財政構造を弾力化させるために市民生活に直結する経常経費をただ削減させれば良いという訳でもありません。どこに軸足をおき、どう財政のバランスをとるか、みんなで考えていくことが重要です。

 

※単位はすべて単位未満切り捨て。

 

[関連記事]

佐藤のりかず公式ブログ「【草加市財政】経常収支の硬直化と50年(2023年11月29日付)」

佐藤のりかず公式ブログ「市民税収と市民の給与所得からみえてくる草加市の現在地(2023年11月6日付)」

 

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草加市立病院2022決算 ②新型コロナや電気代高騰の影響などなど

2023年11月16日 | 市政・議会・活動など

草加市立病院2022年度決算の概要を二部にまとめました。2回目は新型コロナやエネルギー価格高騰の影響、働き方改革、産婦人科問題の返還金など各項目についてです。

 

■新型コロナによる病床への影響

草加市立病院では、新型コロナウイルス感染症重点医療機関として埼玉県内の入院患者さんを受け入れています。各年度における入院受け入れの延べ病床数、感染拡大による最大時の病床数と最大配置看護師数を下表にまとめました。

また、草加市立病院における全体の病床利用率は64.6%で、前年度より4.1ポイント減少しました。そのうち、コロナ病床の影響を除いた病床利用率は76.7%でした。新型コロナ拡大前の2019年度の75.3%を上回っています。

 

【表2】新型コロナ感染者受け入れのために用意した延べ病床数

 

 

■診療報酬改定の影響

2020年度の診療報酬改定により診療報酬本体は0.43%の引き上げ、薬価などは1.37%引き下げられ、全体では0.94%の引き下げとなりました。草加市立病院への影響は、地域と連携した感染防止対策への取り組みを評価する感染対策向上加算の見直しなどにより入院収益が約1682万円増加しました。

 

■医師の働き方改革と看護師の処遇改善

医師の働き方改革の取り組みとして2022年度は、多職種の職員により構成された役割分担推進会議で医師の負担軽減に向けた取り組み事項の協議や、労働基準監督署への宿日直許可申請に向けた準備などがおこなわれたとのことです。

看護師の処遇改善の取り組みは、2021年2月から月額4千円支払っていた職務調整手当について、診療報酬改定による手当が開始された2022年10月から月額12000円に増額されました。

 

■エネルギー価格高騰の影響

燃料価格の高騰により、市立病院の電気料金は前年度比7494万円増の約1億9294万円でした。また、ガス料金も前年度より3425万円増加して約9950万円となりました。光熱費全体では前年度より1億円を超す負担増です。

 

■産婦人科問題の返還金

以前、草加市立病院でおきた婦人科腹腔鏡手術等の保険請求上の過誤について、監査結果にともなう返還金が生じています。これまでに、各保険者へ1億2754万円が返還されました。2022年度決算時の未返還額(概算)は、保険者分が約2500万円、患者分が約1500万円と算出されています。なお、対象となる患者への返金状況については、一部の保険者から請求書類が届いていない状況により、患者への返金額が確定しないため、患者への返還は依然としておこなわれていません。市立病院は、金額が確定次第、対象となる患者へ通知を送付し、速やかに返金を進めるとしています。

 

草加市立病院の2022年度決算は見かけ上、資金量が回復し経営が良好な状況のように見えます。しかし、黒字化の要因であった新型コロナ関連補助金は、新型コロナが2類から5類に移行されたことで今後は削減されていく見通しです。材料費やエネルギー価格の高騰なども病院財政に影響を及ぼしています。現状のままでは積みあがった資金があっという間になくなり、コロナ前の自転車操業に戻ってしまいかねません。

一方、長期にわたり財政悪化で重要な機能強化が実施できずにいましたが、実に6年ぶりの投資となる手術支援ロボット「ダビンチ」の導入など、コロナ禍後の病院運営を見据えた取り組みも進められています。地域病院の中核を担う基幹病院としてどう存続・発展させていけるか、重要な岐路に立たされています。

 

前へ→草加市立病院2022決算 ①黒字決算の中身は?

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草加市立病院2022決算 ①黒字決算の中身は?

2023年11月15日 | 市政・議会・活動など

草加市立病院2022年度決算の概要を二部にまとめました。1回目は全体の収支状況と診療科の状況についてです。

 

■純利益11億円の黒字決算

草加市立病院の財政状況は、国・県から多額のコロナ対応補助金などが支給されたことで、本業の医業収支が改善しないもとでの黒字決算が続いています。2022年度も、医業収益111億円に対する医業費用は125億円で、医業収支は13億円超の赤字(前年とほぼ変わらず)です。しかし、それを上回る新型コロナ関連補助金(※)約19億円などが支給された結果、最終決算は約11億円もの純利益(黒字)となりました。

※埼玉県新型コロナウイルス感染症医療提供体制支援事業費補助金

  • 事業収益145億6024万円(前年度比+0.8%)
  • 事業費用134億2668万円(前年度比+5.1%)

 

【表1】草加市立病院のコロナ補助金と純損益の推移

※金額は単位未満切捨て。コロナ補助金は埼玉県新型コロナウイルス感染症医療提供体制支援事業費補助金。2020年度に交付された新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金は除く。

 

 

■保有資金も31億円に改善

2022年度末における市立病院の資金残高も、年度当初より6億円以上積み上がり31億円に達しています。

新型コロナが拡大する以前、草加市立病院が保有する資金残高は一年間でおおむね約3から6億円程度減少していました。赤字が続くなかで2019年度末には資金残高が1億円を割る水準まで減ってしまいました。草加市立病院として確保しておきたい現金規模は、一か月の支払い額の2倍である約20億円が必要な水準としており、自転車操業も限界にありました。

 

 

■1日入院平均診療収益は増加

2022年度の入院延べ患者数は8万9541人で、前年度より5746人減少しました。

一方、患者1人当たりの1日入院平均診療収益は、7万4692円で、前年度より6136円増加しました。市立病院によると、化学療法に係る薬剤の使用量が増加したことや、2022年度は院内感染防止のためすべての入院患者さんに入院前の新型コロナ検査を実施したことなどが増加の理由としています。

【参考】入院・外来で増減が大きかった診療科

入院

  • 皮膚科:常勤医が増えたことで前年度比86.0%増の811人。
  • 血液内科:近隣病院休止の影響等により前年度比43.1%増の3808人。
  • 脳神経外科:前年度比31.7%減の3217人。近隣病院でコロナ感染の救急患者の受け入れ制限が緩和されたことや受け入れ態勢の整備が進んだことから、これまで市立病院で引き受けていた患者が減少したこと。コロナ禍で病床確保が困難だった際に、一時的に受入れを草加市民に限定せざるを得なかったことなどが要因。

外来(いずれもコロナ感染の患者数増加などが影響)

  • 内科:前年度比29.3%増の8753人。
  • 小児科:前年度比19.4%増の1万6863人。

 

次へ→草加市立病院2022決算 ②新型コロナや電気代高騰の影響などなど

 

 

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小学校の不登校10年で4.2倍、中学は1校分の生徒数上回る-草加市

2023年11月09日 | 子育て・教育

毎年、過去最多を更新している草加市内小中学校の不登校児童・生徒数について、その推移をまとめました。

 

■中学不登校人数が花栗中の全生徒数を上回る

小中学校32校における児童・生徒の不登校人数の推移をグラフにしました。

  • 草加市内小学生21校における不登校人数は139人で、10年前と比べて4.2倍に増えています。
  • 中学校11校における不登校人数は399人で、10年前と比べて2.3倍に増えています。花栗中学校の生徒数366人(2022年5月1日)を上回っています。校長や教諭、事務職員など中学校11校に配置されている県費教職員数358人をも上回っています。
  • 特に、新型コロナウイルス感染症拡大による臨時休校などがあった翌年度の2021年度から、不登校人数が急激に増えています。

 

■中学生の不登校人数の割合6.7%に

草加市内小中学校32校における児童・生徒数の推移と、児童・生徒数に対する不登校人数の割合の推移をグラフにしました。

  • 草加市の小中学校の児童・生徒数は、2013年5月1日が1万9965人でしたが、2022年5月1日は1万7640人と年々減少しています。直近10年間で2325人減少(-11.6%)しています。
  • 一方、上記グラフの通り不登校人数は増加傾向が続いているため、児童・生徒数に対する不登校人数の割合は、2013年度の1.04%から、2022年度は3.05%に上昇しています。
  • 中学生に至っては、2013年度の2.65%から、2022年度は6.70%に達しています。

 

周囲を見渡せば不登校は珍しいものではありませんし、他人事でもありません。

どの子も不登校になる可能性はありますし、必ずしも学校への登校を最終的なゴールに設定すべきでもありません。

子どもたち一人ひとりが自ら主体性をもてることや、一人ひとりにあった自立できる居場所や学びたい気持ちを育んでいける環境をどう保障していけるか、私たち大人に突きつけられています。

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