<講座幕開け>出口治明さん、意表をつくトーク
日本の閉塞…少子化の根本は男女差別にこそ
「フロ・メシ・ネル」から「人・本・旅」へ
「フロ・メシ・ネル」から「人・本・旅」へ
第21回信州岩波講座が8月17日に始まり、トップに登場した立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんが「本の世界 読書のすすめ」のテーマで話しました。関西弁のやわらか口調のトークながら、内容は私たちの常識を次々にひっくり返す意外性に満ち、ユーモアと緊張感こもごもの展開となりました。
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「本を読めば仕事に役立つなんてトンデモナイ」「親のいうとおりに育ったと思うひとはここにいますか」「フランスでは働く女性が専業主婦よりも出産率が高いのが常識」。随所にファクトを基にした、意表をつく刺激的な問いかけが散りばめられました。
そして「労働時間が長いのになぜ低成長か」「少子化の元凶は男女差別」「GAFA(巨大IT4企業)が育たない」と日本の閉塞を指摘し「土地・資本・労働力」による製造業や「フロ・メシ・ネル」の男優位の社会はもう限界………、ターゲットが一挙にしぼられました。
ではどうすれば?これからは市民みんなで育む「公共の知の力」が重要と強調。考えるプロセスを大事に、アイデアを生みだし、産業に結びつけていく。個人としてはまず「人・本・旅」がカギと、講演テーマ「本の世界 読書のすすめ」へと一気呵成にみちびく鮮やかな展開でした。実は出口さんの提案で急きょ、講演時間を短縮し質疑応答の場を設けました。会場には想定外の熱気がこもる“出口ワールド”が出現しました。
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今回は講師を囲む<トークセッション>の趣向を盛り込みました。岩波書店の馬場公彦さん(編集部長)の発想と須坂市図書館長の文平玲子さんのおぜん立てにより、市内の子ども読書支援、読み聞かせ、読書会、紙芝居の4団体代表に登壇していただきました。<読書>と<こども>を結ぶ図書館の役割、地域づくりがみえてくる交流の場となりました。
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出口さんはこの日、名古屋からの特急しなので単身、バックパッカーのいでたちで長野駅に現れました。見ると、鼻穴の片方に鼻血止めのティッシュペーパーの栓が。「長野に着いたとたんに………、でもよくあることです」と心配を受け流し、メセナホールまでの車中では、学長を務める大分・別府にある新設大学(2000年開学)の理念、アジアから集まる学生の動向を、愛情と熱意にあふれる口調で語り続けました。