NPO・999ブログ    本を読んで 考える力を養おう

「自分のできることを できる時に できる処で」
市民的知性の地平を拓くNPOふおらむ集団999

第20回記念信州岩波講座2018Ⅲ 9/23 前川喜平氏・小島慶子氏

2018年10月22日 | 信州岩波講座
教育は「個人の尊厳」と「多様性の広がり」こそ
前川さんと小島さん 共鳴する思い


マイノリティーに寄り添う多文化共生社会へ

 2018信州岩波講座の締めくくりとなる本講座Ⅲは9月23日、須坂市メセナホールで元文部科学省事務次官の前川喜平さん(63)と、エッセイストの小島慶子さん(46)が「学ぶ」を共通テーマに講演しました。異なる人生体験を重ねあわせ、ひと味ちがう<明日の教育>を語り合い、詰めかけた約1000人の聴講者を鼓舞して盛り上がりました。

 講演テーマは、前川さんが「生きることと学ぶこと-個人の尊厳から考える」。小島さんは学びが世界を変えていく-日豪往復で見えたこと」。明治150年と戦後73年の歴史を「くにのかたち」「憲法」の視点から、パラレルに検証した前2回の講座の総括として「教育」のあり方を問うねらいです。


 前川さんは冒頭「教育は両刃の剣」として戦前の国家本位から、戦後の個人主体に転換した歴史の反省をたどり「日本国憲法による“生きる権利”と“学ぶ自由”は密接不可分のかかわり」と強調しました。


 小島さんは生まれ育ったオーストラリアに移住し、自分が日本に出稼ぎするライフスタイルを披露。現地での立場は“ことばが不自由な経済弱者のマイノリティー”としながら「居場所が変われば自分が変わる…これって自由だなと実感できた」と、ユニークな視点を示しました。


 前川さんは40年近くにわたり国家行政の中枢に身を置き、戦後教育を主導してきた立場。他方、小島さんは放送界に携わり、子育ての拠点を海外に転じた実体験をメディアから発信。対照的な半生の歩みです。
 しかし、講演のなかで前川さんは「子ども時代は引っ込み思案で不登校も」。小島さんも「軽度の注意欠陥多動性障害(ADHD)だとわかった」。必ずしも<フツー>ではなかった学校生活を明かしました。
 対談は<個人の尊重>から<多様性の広がり>へと、教育に託す思いが共鳴し合う場面となりました。不登校や夜間中学、障害を抱える子どもたち、増える“移民”などのマイノリティーにどう寄り添うか…<多文化共生社会>の問いかけが会場の問題関心をかきたてました。
 話し終えて、二人がもらしたのは信州岩波講座にかかわる深い思いです。前川さんは「お役所では幹部が好きな雑誌を自由に買って読めました。私は一貫して岩波の『世界』でした」。小島さんは「オーストラリアに移住する前、国内で子育てするなら長野(軽井沢)かな、と考えたことがありました」。