
「改札は一つだった。コンベアーも一つだった。しかし中に入るとゲートはたくさんあって、しかもそれぞれが遠く離れている。こんな状態でどうして荷物が各ゲートに届けられるのだろう。
しかも荷物を渡すとき、これが私の荷物であり、この私が25番ゲートに向う乗客だというような確認は一切なかった。そもそもこの私が誰であるかさえわかっていないはずではないか。
するとどうして私の荷物が25番ゲートに届くのだろう。改札を抜けると人々は思い思いのゲートに向って散っていく。その旅客の一人ひとりにその人の荷物を確実にその人に行くゲートに届けられるなど不可能ではないのか。空港には私のまだ知らない高度なシステムが働いているのだろうか。」
私は気味の悪い不安を抱きながら様々に思い巡らせはしたが、コンベアーから直感的につながった到着ロビーの光景から来る思い込みに対しては一抹の疑問も持たないのだった。そしてただ辻褄の合わない思考の切れ端をつなぎ合わせようと躍起になっていた。



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