浮かんでくる思いを様々に詮索しながら長い25番ゲートへの通路を歩いた。すると前から、紺色の制服を着た女性が片手に書類を抱えて初々しさを漂わせながら闊歩してやってきた。私達は自然にすれ違ったのだが、そのとき彼女は私を見て奇妙な顔をしたのだ。私は怪訝に思った。
彼女は何か滑稽なものでも見るような眼差しで私を見、その視線が一瞬私の下半身に向けられたように思えた。誘われるように私は自分の下半身に目をやった。
その瞬間私は自分の頬が炭火のようにほてるのを感じた。私のズボンは、前のチャックが大きく開かれて、そこからシャツの裾がはみ出しているのだ。
あのトイレからだ、そう思い至ると、改札を通り抜けたときもボディチェックを受けたときもズボンのチャックが開いたままだったことに気付かされる。
全身がカーッとなって恥ずかしさが押し寄せてきた。私は咄嗟に自分をごまかすように笑い、憐れな格好をしてチャックを上げた。
女性は一瞬笑ったように見えたが、うろたえる私に無関心を装い振り返りもせず歩み去った。
それでも私は、自分の憐れな姿を見てどうすることも出来ずに、うわの空になって歩くしかなかった。それから先25番ゲートにどのようにして着いたのか思い出すことさえ出来ないのだ。
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