溶け始めた北国の雪の
身を切る水をなみなみとのせ
千歳川は女のように身をくねらせる。
白と黒の激しい対比が心にしみては
暗緑の川面の
丸く突き出た対岸から
うすい夕日を受けて白々と波が息づくようだ。
絶えず囁き 絶えず静まり
ああ 私の心をあやしくとらえ
とらえては立ち去って行くけがれなき水たちよ
お前は黙々と
どこに行こうとするのだろう。
その胎内には力強い魚影がかすめて
凛凛と引き締まっているというのに
私はオロオロとふやけ 限りなくほどけて
消え入ろうとしている。
夕暮れが覆いかぶさって冷たい風が服をはためかせると
風はお前に
いかにもふさわしいというのに
私は身を縮めてお前を羨望する。
ああ 千歳川よ
清らかで美しく
峻厳として優しい千歳川よ
この澄み通った春先の水を
かたくななまでに取り澄まして運ぶ千歳川よ
思い余ってお前に
入水すれば
その不浄が一瞬にしてお前を汚してしまうだろうか。
それとも
屍を澄んだ流れに乗せて私を冷やし
静かに海へ運んでくれるだろうか。
私の生涯の誇りであったふるさとの川が
お前を見て
こうも厳しく色あせてしまった今。
HPのしてんてん
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