☆原案・設定関係について
「この子は私と同じで○○が好きなはず」
最初に降臨したネタの種(ヒントとなるキーワード)。うろ覚えで大体こんな意味の言葉だった気がする1行の台詞。
それは幼い頃読んだ児童文学「にんじん」(1894年・ルナアル作)の中に出てきた言葉ではないかと思われます。
「にんじん」は映画化もされた作品で赤髪・そばかすの「にんじん」とあだ名をつけられた少年が家族から不当な扱いを受けながらシニカルな目で日々の暮らしを綴った物語だと資料にはあります。
自作の物語化に当たり、「にんじん」では兄と姉を溺愛し主人公を虐待・折檻する母を逆に主人公だけを溺愛・偏愛する母に、主人公には冷たい兄とギリギリ最低限の情だけは持つ姉を3人兄弟は一緒でないとという優しい双生児の兄たちに置き換え、内心愛情はあるのだが不器用でそれを表現できず子供には無関心でネグレクトする父をほぼその方向のままで、原案の「にんじん」とは全く別の物語に設定を変えました。
強いて言えば最初のヒントになった台詞がヒロインと主人公にとってのキーワードになっただけといっても過言ではありません。
☆主要登場人物設定について
主人公・雷電(ライデン)は最終章で無意識に発動させた魔法が雷属性であることと見事な金髪の持ち主であるというところから命名しました。
アサシン(暗殺者)としたのは某人気ロールプレイングゲームの同名のキャラクターからの連想です。
一卵性双生児と同時に生まれた卵違いの二卵性の末弟という設定は某人気乙女ゲームの三つ子のキャラクターからヒントを得たためで、髪色を銀・黒・金としたのもその元ネタのキャラクターと同じです。
双生児の方では3人全員仲良しと信じていますが雷電としては三つ子として生まれても双生児は一心同体で自分だけは余分だと思っていたため自己価値が極端に低く、母に認められることによってしか自分の存在価値を見いだせない強い母子密着状態にあります。
体は大人になっても精神的にはほぼ赤子のままと言っても良いかも知れません。
母に良い子と思われたい一心で無理をして母に合わせたりやたらに物分かりの良いいわゆるAC(アダルトチルドレン)です。
長兄・紅蓮(グレン)は「瞳の色が燃えるような紅(あか)」で最終章で使用する魔導兵器(疑似魔法が使える武器)が炎属性の太刀ということでゲームの必殺技とかの名前になりそうな「紅蓮の炎」からの連想です。
戦隊ヒーローものでいうところの「レッド」系のイメージでリーダーで体育会系で正義感に溢れ、直感的、考えるより先に口や手が出るちょっと天然な愛すべきキャラです。
当初はシニカルなツンデレで口は悪いが根は情深くて不器用なキャラという設定でしたが書き始めてみるとシニカルツンデレが外れて熱血キャラになりました。
次兄・紫紺(シコン)は「瞳の色が深い紫」で最終章で使用する魔導兵器が氷属性の長剣であることから。
某人気アニメキャラクターのコスチュームの「紫紺のプラグスーツ」という言葉の響きが好きで、魔女と言えば黒・赤・紫のイメージなのでその次男は黒髪・紫眼にしようと思っていたからです。
戦隊ヒーローものでいうと「ブルー」系のイメージで冷静沈着、知識量も多く大人びていてカンが鋭く洞察力や分析力に長けた参謀的な存在で少々皮肉屋でもあるかも知れません。
紅蓮と紫紺は言ってみればボケとツッコミの関係。
自由奔放で猪突猛進の紅蓮の手綱をしっかり握って暴走しないようにしているのは紫紺です。
双生児が可愛くないとはっきり口にする母にとっては紅蓮の暑苦しさもさることながら「お前のようなカンのいいガキは嫌いだよ」とでも言いたくなるような紫紺は更に疎ましく思えたに違いありません。
当初は口下手な紅蓮の代弁者という設定でしたが紅蓮のキャラが変わるのに伴い、紫紺の方も変わりました。
冷静沈着で頭がいいというのは当初の設定通りですが「クールで熱い」という部分はあまりはっきり描写されていないように見えます。
何しろ紅蓮がすぐかっかする方なので本当は紫紺も熱くなるべき場面でも逆に覚めてしまわざるを得ないのかも知れません。
母・綺羅(キラ)はヒロインでありタイトルの「Killer Queen」(殺人女王)の「Killer」の当て字です。
一卵性でありながら髪と瞳の色が違う双生児の母ということで髪は銀と黒のツートン、瞳は紅と紫のオッドアイにしました。
魔女であるということでビジュアル的には少女時代と全く変わっていません。
炎と氷をイメージした赤と青のTATOOと金の炎と銀色の氷をイメージしたピアスをしていますがティアラは着けていません。
女王とはいえ人間たちの国の中で唯一の魔女であるということで、敢えて女王よりも魔女としての外見を前面に押し出した形です。
虐待の形態の一つ「支配」により、母親に依存しようとする雷電を意のままにコントロールします。
某人気アニメの帝国の女帝や海賊の女首領のように当初は悪い意味での母性の象徴として目的のためには手段を選ばぬ強欲な野心家で我が子を所有物としか見ない利己主義者という設定だったのですが、雷電に依存されることによって母である自分もまた存在できるという共依存の形に変えました。
雷電を自分の思い通りにならない夫の身代わりにしてしまうという母であるよりも寧ろ女性の部分を捨てきれない性(さが)とか冷徹な母殺しの魔女という業(ごう)とかを背負っていて、魔導の力を以て人間に非ざる魔女の身でありながら人間の国の女王の座に固執することでしか自分の存在を支えられない弱さをひた隠しにして虚勢を張っているのかも知れません。
父・ヘルト=ハイラントの名は独語でHeld(ヘルト)は「勇者」、Heiland(ハイラント)は「救世主」の意味です。
建国の父で人間の王である人ということからつけました。
金髪と碧色の瞳は雷電と同じです。
青年期のヘルトの二つ名「美しき雷(いかずち)」は電光石火の攻撃と雷光のような見事な金髪からついたとされていますがこれが雷電に繋がる伏線となっています。
ちなみに後に仮面の男として名乗る別名の『狐(ルナアル)』は原案の「にんじん」の作者の名前の『ルナアル(Renard)』が仏語で『狐』という意味だそうで、これは全くの偶然なのですが、資料検索中に発見したのでこれも何かの縁かもと思い、使わせて頂くことにしました。
余談ですが最終章に登場するサブキャラでヘルトの元部下の男・カニンは動物繋がりでつけた独語の「兎」という意味です。
当初の設定では父母共に自分が一番の利己的な人間で、ヘルトは責任上双生児を引き取ったものの子供には無関心なため放任、ネグレクトするキレやすい子供っぽい勝手な男となっていましたが、あまりにも不器用で一途な性格から我が子には申し訳ないと思いつつも大義の前では身内の世話など後回しになってしまい、寧ろ子供たちの未来のために必要なことをしたのだといつかは理解してくれるだろうし自分の血を引く息子ならきっと二人でも自分たちだけで何とか生き抜けるはずだと信じている(信じたいと思っている)という設定に変えました。
勿論雷電のことも決して忘れた訳ではなく、彼を溺愛する母の下に一人残してきたことで彼のことをいつも案じていたと思います。
☆舞台・背景について
物語の過去編ではロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)を思わせるような多種多彩な種族が混在する乱世が描かれます。
一人ぼっちのはぐれ魔女が人間の勇者の同志となり他種族を駆逐して作った人間の王国が現在編の舞台となります。
未だ中世の香り漂う市井とは裏腹に、某有名ロールプレイングゲームシリーズに出て来そうな魔導研究所だけは近未来的です。
研修医のように白衣を着てネームタグを付けた紅蓮と紫紺は大学の講義や実習のような研修を受けているようですし、研究員用の寮の部屋は盗撮・盗聴されてさえいます。
素人でも訓練なしに使えて簡単に疑似魔法を発動できる兵器が開発され、国を支えるエネルギーを供給する魔導エネルギーシステムも構築されていますし、その安定供給のための研究も行われている高度な科学技術も発達しています。
16章の最後には生体認証キーロック付きの脱出路まで存在していることがわかります。
今回は創作のきっかけから初期設定についての解説でした。
次回からは挿絵のラフ→線画→彩色画の対比を見ながら挿絵に関する解説をしていきたいと思います。
作画上の工夫点や書かれたレタリングの言葉の意味などの解説と共に本文の内容にも簡単にコメントできたらと思います。
よろしければ引き続きメイキングギャラリーもお楽しみください。