きつねの戯言

銀狐です。不定期で趣味の小説・楽描きイラストなど描いています。日常垢「次郎丸かなみの有味湿潤な日常生活」ではエッセイも。

Other World 15

2012-07-05 18:51:37 | 日記
[傷心]

深夜のカフェで狐原妖雅と葛野葉月はテーブルを挟んで向き合って座っていた。テーブルの上には二人のコーヒー。狐原は物憂げに目を伏せ
『葛野さん、私は龍造寺総合病院を辞めようと思っています。クリニックのシフトを増やして貰うことはできないか、院長に相談してみるつもりです。』
「突然どうなさったのですか?何か問題でも?失礼ですけど、先生はあちらの病院では…」
院長令嬢である恋人と結婚して後継者になるという噂があることを思わず口走りそうになり、慌てて口をつぐんだ。
『女性医長との噂でしょう?そんなことができるはずはありません。彼女とは住む世界が違います。でも、そのことで彼女に迷惑がかかるのなら、私はもうそこにはいられません。』
どうやらその噂が原因で何事かトラブルがあったのだろうと察しはついた。そして狐原がその女性のことをとても愛しているに違いないことも彼の言動から十分に伝わってきた。
「先生…」
『もうすぐ彼女の婚約者が海外から戻ってきて結婚するそうです。彼は私の旧友です。いつかそんな日が来ることはわかっていました。今日院長から身を慎むようにと直々に釘を刺されました。目障りだから消えろ、ということです。』
いつもは穏やかな口調の狐原が今日は自嘲的だ。自分の気持ちをコントロールする余裕がないのだろう。葉月は自分の前で他の人には決して見せない本音を晒す狐原を愛おしく思い、同時に切なくなった。
(狐原先生はそれほどまでに彼女のことを愛しているんだ…。狐原先生にそんなに愛されている彼女が羨ましい。私はこんなに狐原先生のことを思っているのに。でも、一番自分が辛い時に私を頼ってくれた。誰も知らない本当の自分を見せてくれた。狐原先生のお役に立てるのなら私はそれだけでいい…)
苦悩の表情で沈黙する狐原の頬は青ざめていた。
他に何を望む訳でもない。ただ側にいてずっと好きな人を見つめていたい。それ以外何の望みもない。そんな狐原の思いが痛いほどわかった。それは葉月が狐原に対して抱く感情と同じだったから。そしてその葉月の気持ちを知りながら、救いや癒しを求めて自分を頼る狐原を全身全霊をもって受け止めたいと思った。彼女への愛を抱いたままの彼の心を抱き締めたい。それで彼が癒されるなら私は傷ついていい。彼が安らぐなら私は何でもする。葉月は心の底からそう思った。狐原の愛は彼女のもので、自分に対しては微塵もないことは十分承知していた。愛されなくてもいい。私が愛していればそれでいい。この人を大切にしたい。この人を幸せにしたい。そのためになら何を失っても構わない。全てを彼のために捧げる覚悟はできている。葉月はそう考えていた。
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Other World 14

2012-07-05 17:54:50 | 日記
[着信]

出勤前身支度を整えようとした時、葛野葉月の携帯に着信があった。知らない携帯番号が表示されている。
間違い電話かしら?
とりあえず携帯電話を取り上げた。
「もしもし…?」
『葛野葉月さんの携帯電話でしょうか?』
柔らかくて温かい男性の声には聞き覚えがあった。
「あの…はい…そうですが…もしかして…狐原先生ですか?」
なぜ狐原から自分の携帯電話にかかってきたのかわからず葉月は混乱していた。
『はい。突然失礼しました。驚かせてしまいましたね。もしご迷惑でなければ少し時間を頂けませんか?お茶でもご一緒して頂けないかと思いまして…。突然あなたに会いたくなりました。失礼は十分承知しています。まだ出勤まで少し時間があります。今からでも、退勤後でも、あなたのご都合がよければ。強引ですみません。』
いつになく余裕のない狐原の声。何かあったのかも知れない。そんな時に自分を頼ってくれたことが死ぬほど嬉しかった。
「今からでも大丈夫ですが、込み入ったお話なら後の方が」ゆっくり伺えるかと思いますが。」
『わかりました。では今日の退勤後にこの前のカフェで。』
葉月は通話を終えた後も胸の高鳴りがなかなか収まらなかった。夢ではないかと思った。
その日の夜。葉月は狐原と先週のカフェにいた。いつもは鉄壁の笑顔の狐原の表情が珍しく暗かった。微笑を浮かべてはいるがどこか哀しげだった。
『申し訳ありません。私のわがままにつきあわせてしまって。でも、どうしてもあなたと話がしたかった。何の話という訳ではないんです。あなたといると安らげる気がした。ただそれだけです。甘えてしまってすみません。』
こんな弱気な狐原は見たことがなかった。それだけ素の自分を私にだけは晒してくれる。それが嬉しかった。
「正直、驚きました。どうして私の携帯番号をご存知なのですか?」
『クリニックのスタッフに今日の予約患者のことで至急確認したいことがあるから教えて下さいと嘘をついて訊き出しました。最初は渋っていましたが、どうしても必要だからとお願いしたら聞き入れてくれましてね…』
若い受付の女性は狐原の魔法の微笑にまんまとしてやられたということか。彼にかかれば断れる女性はまずいないだろう。
「一体どうされたのですか?いつもの狐原先生らしくありません。」
『詳細についてお耳に入れるには及びません。私事ですから。ただ少し動揺し、混乱しています。私らしくない、とおっしゃいますか?』
「先生も生身の人間ですからね。そんなこともあるでしょう。私でよければ何でも伺えいます。」
葉月は心をこめて微笑んだ。
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Other World 13

2012-07-05 17:07:16 | 日記
[婚約者]

龍造寺明里は先程院長室に呼ばれて父に告げられた話で受けたショックから俄には立ち直れないでいた。
「お父様、いえ、院長。お呼びでしょうか?」
「いや、プライベートな話で呼んだのだ。お父様で結構。まぁ、掛けなさい。」
「はい?」
「早速だが、明里。狐原君とはどうなっているのかな?」
「は?どう、と言われると?」
明里は動揺した。幼少時より自分のことなど全く関心のなかった父が、プライベートなことに言及するのは初めてと言ってもよかった。
「いや、院内で妙な噂を耳にしてね。彼とはずいぶん親しいそうじゃないか。しかし、自分の立場をわきまえなくてはな。わかっているとは思うが、自分が龍造寺総合病院の後継者であり、婚約者もいる身だということを自覚して貰わねば。海外出向中の司(つかさ)君が今秋帰国するそうだ。彼が戻ったらすぐ結婚の予定だ。もう既に話は進めつつある。そのつもりでいるように。」
「そ…そんなこと聞いていません!」
「急に決まった話なので、伝えてはいなかったが、そういうことだ。狐原君とは少し距離を置いた方が良いだろう。そのうち噂も消える。後で彼にもそのように伝えるつもりだ。話はそれだけだ。仕事に戻りなさい。」
明里は真っ青になった。
狐原くんに伝える?…何を?交際を止めろということか?それとも婚約者の小早川 司(こばやかわ つかさ)が帰国したら結婚するということか?
マグカップのコーヒーが冷めるのも忘れ、仕事など手につくはずもなかった。
小早川司は帝都大学病院で実力№1と言われる小早川教授の次男である。
外科医としての頭脳も腕も悪くはないが、奔放な性格は日本国内では受け入れられ難く、親のコネでずっと海外出向している。今回帰国するのは明里が社会人になって初めてだ。小早川は狐原の同級生だが、性格が正反対であまり親しいとは言えなかった。狐原も小早川と明里が幼い頃に親同士が決めた婚約者であることは勿論知っている。しかし明里自身は小早川のことは何とも思っていなかったし、婚約者と言われても何の実感もなかった。常に人を見下しているような態度の小早川と、むしろいつまでもかしこまった態度を崩さない狐原のどちらを選ぶかと言われたら結果は火を見るより明らかであろう。結婚自体早すぎるし、まして相手が小早川であることは全く承服し難い。しかし明里にはそれを覆して狐原を選ぶことはできなかった。
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Other World 12

2012-07-05 16:16:58 | 日記
[院長室]

時刻は午前診の受付終了から2時間近く経った午後2時頃。1診ではまだ最後の患者が診察を終えたばかりだった。医療秘書の女性が奥のカーテンから顔を覗かせて医師に声をかけた。
「狐原先生、院長がお呼びです。」
青年医師は疲れた様子も見せず微笑んで答えた。
『承知しました。すぐに伺います。』
龍造寺総合病院の院長室。院長はゆったりとした肘掛け椅子に深々と腰をかけ、医師を迎えた。
『院長先生、お呼びでしょうか?』
丁寧に礼をして心療内科医・狐原妖雅は院長室に足を踏み入れた。
「あぁ、狐原君。お疲れ様。午前診が終わったばかりなのにすまないね。まあ掛けたまえ。」
院長はソファーセットに移動し、狐原に向かいの席へ座るように促した。
『はい。失礼致します。』
と狐原は腰を下ろした。
「早速だが、単刀直入に言おう。君は明里のことをどう思っているのかね?」
『!?』
いつも冷静な狐原が珍しく驚いた顔になった。
「どうも最近院内で君と明里の良からぬ噂が広まっているようだが、君も知っての通り明里には婚約者がいる。妙な噂が広まっては困るのだよ。君のことだ。わきまえているとは思うが。」
院長は鋭い目付きで狐原を威嚇するように見据えていた。
『龍造寺先生は医師としても女性としても、いいえ、人間としても素晴らしい方だと尊敬しております。学生時代より親しくさせて頂いていますが、勿論ご婚約者のことは存知ておりますし、自分の分際はわきまえているつもりです。院長先生がご懸念されているようなことは決して…』
「それならいいのだがね。まあ君が医師として大変優秀でとてもよくやってくれているのは私も買っている。だが、それとこれとは別の話だ。くれぐれも本人や周囲の誤解を招くような行動は慎んでくれたまえ。先程本人にも伝えたが、実は既に結婚話も進んでいる。根も葉もないと言えど、妙な噂が立っては先方も面白くはないだろう。君ならわかってくれると思うが?」
『はい、承知致しました。以後肝に銘じておきます。』
狐原はうなだれて言った。院長は勝ち誇ったように笑うと
「話はそれだけだ。下がりたまえ。」
と言った。狐原は力なく立ち上がるとうつむいたまま深々と一礼して
『失礼致します。』
と辞して院長室を後にした。心の中で
『娘には近寄るな、ということか…』
と吐き捨てるように呟いた。
昼食もまだだったが何も喉に通りそうになかった。
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7月4日(水)のつぶやき その5

2012-07-05 01:25:37 | 日記
16:24 from yubitter
10分切った

16:25 from yubitter
熱い紅茶ラテ一気飲み

16:28 from yubitter
「甘すぎずなかなか悪くない味とでも言っておこうか?」『あっさりとした味わいで美味しいとおっしゃっているのですね』(笑)

16:28 from yubitter
さ、時間だ。出勤しよ

16:33 from yubitter
家から一歩出た途端に雨降り出すって何なん?

16:36 from yubitter
また遅れてるわ

16:37 from yubitter
天気なのか、時間帯なのか

16:38 from yubitter
5分遅れ

16:44 from yubitter
FBはお知らせ見てしか動かないから最近ほとんど動きがない。特定の仲良しグループ内だけの話は知る由もないから、結果シェアしてないウォールでの話は見えないから、特変なしで帰る。

16:52 from yubitter
最近化粧品&洋服欲…高くなくていい、自分的にときめくものなら。

16:54 from yubitter
バカ・デブ・ブス幻想に苦しめられた過去の反動?全部普通だったのだよ。実は

19:12 from yubitter
自分に興味を持ち出したなんて転生してから(?)だな(笑)

19:14 from yubitter
久々に妄想ラブレター書いた。今の彼に対しては初めてだ。前の彼には毎日書いてたけど。むしろ今の彼が好きかも。愛してます。そうし☆

19:21 from yubitter
ねぇねにいつ六甲山登るん?て訊かれた。植物研究部で毎週登ってた山ガールやってんけどな。完全に登る登る詐偽やわ。

19:54 from yubitter
退勤中。石橋北口でバス乗りました。

19:57 RT from yubitter  [ 193 RT ]
ハハッ!男一人でディズニーランドに来て楽しいかい?
ミッ●ーマウスさんのツイート

23:56 from yubitter
FBにいぬぼく2章の袖引き狢のくだりを題材にしたポエム書いてきた。

23:59 from yubitter
わお、日付変わっちゃう

by NonChromatic on Twitter
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