日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 水心子正秀 Masahide Wakizashi

2016-02-13 | 脇差
脇差 水心子正秀

 
脇差 水心子正秀文化三年八月日

 江戸時代の相州伝を紹介している。水心子正秀が新々刀の初祖であるとの評価は、多くの著書を以て自らの研究を開示し、以降の多くの門人を育て、多くの刀工の指標となったからに他ならない。自らも、奥州國包に学び、下原鍛冶に学び、相州鍛冶に学ぶなど研究熱心であった。晩年は備前伝を追求したが、若い頃は相州刀に強く惹かれていたのであろう、江戸前期の大坂刀工越前守助廣を手本とした濤瀾乱や大互の目乱刃を焼き、前回紹介した相州古作写しもやっている。この脇差が大互の目出来。文化三年は正秀が五十七歳。文政八年に七十六歳で没している。この脇差は一尺五寸半ほどだから、元来は式正の大小揃いであったと思われる。バランスの良い造り込み。地鉄は密に詰んだ小板目肌が地沸で覆われ、焼刃から飛び散ったような沸が所々に広がって飛焼となっている。もちろん見どころは明るい沸による出入りの激し互の目乱刃。二つ三つ並んだ互の目の頭が左右に開いて耳形になるのも相州物にみられる特徴。刃境から地中に湯走り状に沸が広がり、あるいは飛焼となり、沸を強く意識した刃文構成とされている。濤瀾乱刃ではこれが丸い玉と呼ばれる刃文だが、ここでは自然味のある焼刃としている。沸の迫力が魅力の作である。



 


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