日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 加藤國秀 Kunihide Wakizashi

2016-02-15 | 脇差
脇差 加藤國秀


脇差 於東都加藤國秀造之文化九年二月日

 江戸時代における相州伝は、鎌倉時代に創案された相州本国物とはだいぶ異なる方向を目指すこととなったようだ。沸の美しさを極め、沸の美しさを如何に表現するかという点で刃文構成に独創性が求められた。三品吉道は沸筋を進化させた。異なる方向で沸筋を強く意識したのが薩摩刀工群。互の目の形状をより創造的な文様美としたのが助廣であり、その濤瀾乱刃が発表されたことによる世の刀工群の驚きや感動は計り知れない。それ故にその後の多くの刀工が助廣を手本とした。水心子正秀もその一人であった。この加藤國秀も正秀に学んで大互の目乱や濤瀾乱を得意とした。
 刃長一尺六寸強のこの脇差は、元来が式正の大小揃いであった。身幅たっぷりとし、重ねはごくごく普通の仕立てで、大小を腰に帯びても重すぎない、扱い易さに重点が置かれている。地鉄は均質に詰んだ小板目肌に細かな地沸が付いてしっとりとした潤い感がある。良く潤い感があるなどと表現するが、決して湿っていたり濡れているわけではないのだが、なんとなく鉄ではないような質感があるところからの表現。刃文は濤瀾乱を想わせる大互の目で、波が押し合うような構成。波飛沫を想わせる玉刃が、刃文を離れて刃中に点在すると共に、焼頭の丸みも所々刃中の玉となり、図柄構成としてはそれらが連続しているようにも感じられる。この沸の粒子は綺麗に揃っており、白く冴え、地鉄の上に浮かび上がっているように見える。刃中に広がる沸の粒子は、絵筆で描いたようなくっきりとしたものではなく、刃先に近づくに従って刃中に溶け込んでいるかのように淡い。もちろん沸出来とは言え、匂を伴っていることから鮮やかさも際立っている。





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