象使いが、最初に象に教え込むのは、逃げ出すという気持ちをなくすことだそうです。
象が赤ん坊のときに、足を鎖で太い丸太につないでおく。
子象が逃げようと思っても逃げられなくすることで、あきらめの気持ちを植え付ける。
こうしておくと、象が大人になって、簡単に鎖を引きちぎれるようになっても、象は逃げ出さなくなる。
ちょっと、気分の悪くなる話ですが、こういうのを、学習性無気力感といいます。
簡単にいうと、何をやっても無駄と思うことです。
こういうふうになった時の、考え方には大きく2つあります。
自分には能力や才能がないから、現状は変えられないと考える。
もう一つは、努力が足りないだけで努力すれば変えられると考えることです。
能力や才能は先天的なものなので、変えることはできません。これを固定思考といいます。
努力は、いつでも出来ます。やれば変われます。これを成長思考といいます。
誰でも、自分はもうダメだって思うことがありますよね。
自分には絶対これはできない、と思うこともある。
アメリカ海軍のウイリアム・マクレイヴンの「世界を変える10の教訓」という有名なスピーチがあります。
その中で「シュガークッキー」という話があるので、それを紹介しましょう。
週に数回、指導教官による制服チェックがあるそうです。検査は徹底していて、OKが出ません。
必ず、どこかにイチャモンをつけられ、不合格になり、海岸の波打ち際を走らされます。
すると、濡れた状態で走ったり転げ回ったりするので、砂まみれになるわけです。
この状態をシュガークッキーと呼ぶそうです。
いくらやっても合格が出ないので、多くの訓練生が不満を持ちます。そして、正当な評価を求める。
彼らは、不満から訓練を続けることが出来ず、やめてしまう。
でも、制服検査について、正当な評価を求めてはいけないんです。
なぜなら、絶対合格の出ない制服検査だからです。それが目的です。
どんなに頑張っても、「シュガークッキー」になるしかない訓練だからです。
何かにチャレンジして、それが成し遂げられないときがある。人生ってそういうものですよね。
それでも、君はどうするんだ、と問いかけられているんです。
もう一つ「サーカス」という話です。
訓練の長距離走や水泳などは、すべてタイムが測られています。
そして、基準タイムに達しないものは、その日の終りに「サーカス」というのに呼び出される。
サーカスとは、さらに2時間、体操させられることです。
ただでさえ疲れ果ているのに、そこから2時間体操させられる。
サーカスすると、次の日に疲れが残るので、その次の日もサーカスさせられる羽目になる。
この悪循環に陥る。地獄です。
しかし、サーカスの常連に面白いことが起こり始めます。
サーカスを受ける者が、どんどん強靭になっていくのです。
一度失敗すると、また失敗を繰り返し、悪循環の地獄にはまる。
しかし、その中で、諦めずに、立ち上がる者は、失敗しない者より、強靭になっていく。
失敗は問題ではない。むしろ、したほうがいい。その後に、再度挑戦していくことが、人を強くするんです。
もう一度話を戻しましょう。
人生に必要なのは、才能や能力なのでしょうか?
それとも、絶対絶命の困難でも、自分が変わることを信じて、努力することなのでしょうか?
まあ、答えは分かりますよね。