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フリードリヒの日記

日常の出来事を、やさしい気持ちで書いていきたい

ノルウェイの森 村上春樹著

2025年04月10日 21時27分03秒 | 読書・書籍



  さくら館にて

ノルウェイの森を読了。

この小説は1987年に刊行されているから、世に出ておおよそ40年くらい経つ。

もう恋愛小説の古典と言ってもいいだろう。

私は最初20代のときに読んだ。それから5,6回読んでいると思う。

そして、一貫して、村上春樹の小説の中では、個人的に評価が低かった。

自殺が多く、暗いトーンで、登場人物のほとんどは良い人なのに救いがない。

私は基本ポジティブな人間なので、気の滅入る小説は嫌いなのだ。

しかし、今回はその認識を改めようと思う。

私の読み込みが甘かったのだ。決して暗いだけの小説ではない。

本を読んでいる最中、激しく心が揺さぶられ、最後は切なく感動した。

本当に素晴らしい小説だと思った。歳を取るのも悪くない。

歳を取ったからこそ、若者たちの微妙な心の動きが手に取るように分かったのだと思う。

村上春樹は心理描写を言葉巧みに書いている。天才の仕事だ。

この小説が、長い間、読み継がれる理由が分かったような気がする。

歳を取ったからこそ、見えることもあるんだなと思った。

小説の中の主要な登場人物の恋愛関係を簡単に表すと、

緑→ワタナベ→直子(自殺する)⇔キスギ(自殺)

緑はワタナベが好きで、ワタナベは直子が好きで、

直子とキスギは幼少期から愛し合っている。

しかし、キスギは17歳のときに自殺した。直子も後で自殺する。

どの恋愛もうまくいかない。

ただ、ワタナベと緑が最後に結ばれる可能性を残して小説は終わる。

私がノルウェイの森をそれほど良い小説ではないと思いつつ、

何回も繰り返し読んだのには理由がある。

それは作中に出てくる小林緑がすごく好きだったからだ。

今まで何百冊もの小説を読んできたが、その中に登場する女性の中で、緑が一番好きだ。

村上春樹はキャラクター造形が非常にうまいが、緑は特にすごいと思う。

とにかく魅力的でかわいい。

私は、20代のときに読み、50代になって再度読んで、

それでもまだ緑とワタナベの会話のところに差し掛かると、かなりウキウキする。

二人がイチャイチャするところは、これぞ青春って感じがする。

女性の読者の中にも、緑に感情移入している人が多いと思う。

女性にも嫌われないタイプじゃないかな。

というのも、緑の人生は苦労の連続で、全然報われない。

しかし、苦労を見せずに、明るく健気に生きている。

なので、彼女の心の奥にある打ちのめされた惨めな気持ちが見えにくい。

しかし、よく読めば、彼女の心はすごく傷ついているのが分かる。

ところで、男というものは(笑)、わんわん泣いている女には興ざめするが、

辛くて泣きそうなのに必死にそれを堪えている女の子を見ると、スイッチが入るのだ。

スイッチとは、この子を守ってあげなくてはいけないという感情だ。

ワタナベくんが、直子のことを考えて無神経になっているときに、

緑が見せる傷ついた心に触れるたび、彼女を守ってあげたくなる。

あともう一つ、村上春樹の小説の主人公は、「なぜモテるのか問題」がある。

別に努力して口説いているわけではないのに、

勝手に女が寄ってくるのはおかしいという主張だ。

たしか、10年くらい前に、有名な女性エッセイスト兼フェミニストみたいな人が言っていた。

その当時は、たしかにそうかも知れないと思っていたが、

今回この小説を読んで思ったことは、

主人公のワタナベくんは顔はそれほど良くないが(緑が言っていた)

落ち着いているし、女性の話をよく聞くし、ユーモアのセンスはあるし、やさしい。

だから、モテない理由はないよなと思った。

イケメン・金持ちだけど傲慢。狩猟民族のようにガツガツいく男。

スペックは高いが女を物のように扱い、ほとんど話を聞かない男。

こんな奴らより、ワタナベくんのような優男のほうが実際モテると思う。

この歳になってから気づいても遅いけどね。

話は逸れたが、ノルウェイの森は、当時のキャッチフレーズのように、

ほんと100%恋愛小説でした。

もし、この小説を読んでいない人がいたらラッキーだと思う。

最初は暗くてつまらないが、緑が出てくるまで読んでください。

急にラブコメみたいになるから。

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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 村上春樹著

2025年04月03日 11時00分00秒 | 読書・書籍

今日も読書感想文です(笑)。

まずは簡単なあらすじから。

主人公の多崎つくるは、東京在住の36歳の男性。

現在、沙羅という恋人がいる。一回セックスをした。結婚を考えている。

多崎つくるは名古屋生まれだ。

高校のときに、親しい友人が四人いた。

赤松、青海、白根、黒埜

四人の名前には「色」があるが、つくるの名前にはない。

高校を卒業すると、つくるだけが東京に行き、他の四人は名古屋に残る。

そして、大学2年生のときに、突然、四人に絶縁される。

理由は謎だ。

つくるは、その絶縁により精神的に追い込まれ、死ぬ一歩手前まで行く。

しかし、立ち直る。

16年後、つくるは恋人の沙羅に「過去と向き合え」と助言され、

四人に会いに行く決意をする。

彼らから話を聞き、絶縁された理由を聞く。

この絶縁の謎を解明することが、この物語の中心だ。

あなたも少し考えてもらいたい。

もし、最も親しい友人から、「明日からもう連絡をよこさないでくれ」と

突然言われたときのことを。

この謎はすぐに分かる。しかし、新たな謎が生まれる。

物語は、そういうふうに進んでいく。

そして、結局、謎は解決されず、物語はそのまま放り出される。

ただ、つくるは人生を取り戻す。

過去のことは過去のこととして、現在を生きていこうとする。

しかし、話は単純ではない。

つくるは、恋人の沙羅が、中年の男性と手を繋いで楽しそうにしているのを目撃する。

沙羅はつくると一緒にいるときには見せない満面の笑みで、

心から嬉しそうな顔をしていた。

「彼女はつくると一緒にいるとき、それほど開けっぴろげな表情を顔に浮かべたことはなかった。ただの一度も。彼女がつくるに見せる表情はそのような場合であれ、いつも涼しげにコントロールされていた。そのことが何より厳しく切なくつくるの胸を裂いた」
(P243 引用)

身を焦がすような嫉妬だ。

わかるよね。人を好きになったことがあるなら。

今後、沙羅との関係がどうなるのか、小説の中では書かれていない。

そのことが、この小説の一つの批判にもなっている。

ちゃんと結末までしっかり書いてくれよと。

私もちょっとだけ、そう思う。

沙羅とこの先どうなったのか知りたい。まあ、いいけど。

ところで、私は嫉妬したら負けだと思っている(他人ではなく自分自身に)。

だから、しない(ように頑張る)。

でも、嫉妬するときは、もちろん、ある。

そんなとき、この恋は本気なんだなと思う。

そして、それなりに歳をとって、

女性の心理がちょっとは理解できる者として、

女の人って、本気で好きな男の前だとクールに振る舞ったり、

興味のない感じの態度を取るんだよね。

アホみたいと思うけどね。

だから、

「頑張れ、つくる」

そう思いながら、小説を読了した。

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