旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

地球岬とホッキカレーと冬花火と 室蘭本線を完乗!

2017-10-20 | 呑み鉄放浪記

苫小牧からもうひとつの工業都市・室蘭をめざす。12:29発の室蘭行きも単行気動車だ。

始発の岩見沢は幌内炭鉱などの炭鉱群と港湾都市の苫小牧や室蘭を結んだ鉄道の町だ。 
今回はそんな石炭の輸送ルートを辿って、岩見沢から苫小牧そして室蘭をめざして往く。

3・4番線ホームには「ばんばの像」がある。
かつて岩見沢では「ばんえい競馬」が開催されていたそうだ。
嘶くばんえい馬に見送られて、室蘭本線の単行気動車は身震いひとつ1番線から発車する。

単行気動車が岩見沢を発つと、4kmほど函館本線と並走した後、やがて東へと離れる。
とっ早速 "サッポロCLASSIC" のプルリングを引く。肴は名物駅弁 "ホタテ釜飯" だ。

やがて右手から千歳線、左から日高線が合流してくると苫小牧の町。
正面に王子製紙の高い煙突が白い煙を吐きかけている。 

苫小牧はホッキ貝の水揚げ量が日本一だそうだ。そして "ホッキカレー" はご当地グルメ。
漁協の「マルトマ食堂」が有名だけど土曜日でもあり、50人以上の行列ができている。
然らば海の駅の「リトルアンジェラ」へ。
ホッキ貝の柔らかくコリコリとした食感と甘みがカレーと妙にマッチして美味しい。 

甘酸っぱいハスカップジャムに包まれたロールカステラ「よいとまけ」も苫小牧の名物。
その名は製紙工場の木場で丸太を上げ下ろしする時のかけ声に由来している。
あの「ヨイトマケの唄」と一緒だね。

東室蘭から室蘭までの4駅は室蘭本線の支線を行く。と云っても全線立派な複線区間だ。 

ひとつ手前の母恋駅から南東に3キロ弱歩くと、地球岬が太平洋に突き出す。
100メートルの断崖絶壁が連なる地球岬、アイヌ語で断崖を意味する「チケプ」に由来する。

東室蘭に戻って長万部行きに乗車、2両編成の気動車は高校生たちを乗せて噴火湾を往く。 

ホーム下まで波が寄せる北舟岡駅、対岸に見えるのは駒ケ岳そして恵山だ。
それにしても 秋の北海道は夕暮れが早い。

賑やかにしていた高校生たちも洞爺駅までに皆下車して車両は空っぽになる。
豊浦ではとうとう後ろ1両を切り離す。乗客はわずかに2人。
豊浦から長万部間を走る普通列車は、朝と夕方以降に5往復しかない難関線区だ。 

とっぷり陽が暮れた長万部駅に単行気動車が終着、紅いテールランプが寂しげに見える。
室蘭本線は、小樽、倶知安を廻って来た函館本線と合流してその旅を終えるのだ。 

 2時間半かけて苫小牧にもどって、駅にちかい「炉ばた焼居酒屋 のんきや」へ。
賑やかなのは30代前半と思しきの男性グループ20名ほど、プチ同窓会といったところか。
聞き耳を立てた訳ではないけれど、ひとり酒だから否応なく彼らの話が耳にとどく。
女房子どものこと、離婚のこと、転職のこと、都会のこと、様々な人生がそこにある。 

"純米吟醸 冬花火" は昨晩も飲んだ栗山は小林酒造の酒。香ほのかでキレ味よい酒だ。
刺身の7点盛は、お約束のホッキ貝ものってひとりでは食べきれないほど。
炉端焼きの店ですからなにか焼いてもらわないとね。豚串をお願いする。
道産米で仕込んだ "大雪乃蔵 辛々麗" が室蘭本線の旅を〆る酒なのだ。

室蘭本線 岩見沢~長万部 211.0km
      東室蘭~室蘭 7.0km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
走れ風のように / 木之内みどり 1977