旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

青春18きっぷ 鶴ヶ城のさくら

2023-04-29 | 日記・エッセイ・コラム

 赤瓦の天守閣を背景にソメイヨシノが美しい。降りからの北風に花吹雪が舞い、濠には花筏が浮かぶ。 

青春18きっぷが利用できる最後の日曜日、tenki.jp を睨みながら、どうやら北を目指した方が良さそうだ。
東北本線(宇都宮線)の始発列車に飛び乗ると、09:30には郡山、ここから会津へ向かう快速電車に乗り換える。

30分もすると、車窓右手には「宝の山よ」と謳われる磐梯山が見えてきた。残雪は少ない。
鶴ヶ城、日中線しだれ桜並木、ちょうど満開の桜の名所を目指して、快速あいづ1号の車内は満員なのだ。
だから駅ビル・エスパル郡山で仕込んだ二本松の蔵のワンカップは肩掛けのバックに眠ったままだ。

会津若松で連絡する喜多方方面への列車が車両故障で遅延しているらしい。
ここは日中線しだれ桜並木を諦めて鶴ヶ城観桜に切り替える。日帰り普通列車の旅は滞在時間に制約がある。
駅から大町通りを南下すること10分、昔ながらの「若松食堂」は会津ソースカツ丼発祥店と言われている。

厨房はお婆ちゃんお一人だから、ボクはピーナッツを抓みながら瓶ビール。まだストーブが燃えている。
ゆったり時間は流れて、ご飯にたっぷりと敷いたキャベツの上にソースに浸したトンカツをのせて真打ち登場。
柔らかいトンカツが甘いソースに塗れて “ソースカツ丼” が美味しい。

曇りがちな空模様だけど、厚い雲は桜の枝を揺する北風に流されて、つかのま青空を覗かせる。
約1,000本のソメイヨシノを従えた鶴ヶ城の桜の季節も、青春18きっぷの旅も終わりを迎える週末だ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
恋人時代 / 長渕剛 1983


Biz-Lunch 洋食GOTOO@大塚「煮込みハンバーグ」

2023-04-26 | Biz-Lunch60分1本勝負

 デミグラスソースをたっぷりと “煮込みハンバーグ”、箸で割った大きめを口に運ぶ。ジュワッと美味しい。
二つ目は半熟目玉焼きの黄身を絡めて、これまたマイルドで美味。
つけ合わせの “カニクリームコロッケ” もなかなかの逸品。とろぉ~りとまさにクリーム、良い仕事している。

週一ペースで東池袋のオフィスに通う機会を得て、馴染みのない街でランチの店を探すのは楽しい。
下町風情の大塚駅南口、オレンジの庇を伸ばして南欧料理の店のような外観、町の洋食屋さんを見つけた。
満腹を抱え、次なる店を物色しながら午後の仕事へと戻る。唸りを上げて電車が追い越していった。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
時をかける少女 / 原田知世 1983


青春18きっぷ 人生のそばから

2023-04-22 | 日記・エッセイ・コラム

青春18きっぷに四つ目の入鋏印を受け、この日も高崎線・上越線を乗り継いで、ここは新潟県の小出駅。
昨秋、豪雨災害による不通から11年を経て復旧した全国有数の秘境路線・只見線を旅したいと思っている。
会津若松まで抜ければ、延長7,270キロ、JR東日本全路線の呑み潰しを晴れて達成することになるのだ。

430Dの出発まではちょうど2時間、雪解け水溢れる魚野川を渡って、こじんまりとした小出の市街地へ。
ふらりと寄ったそば処は、広々とした石のカウンターが流れて、なかなかどうして良い感じのお店だ。

椅子ひとつ開けてご常連がお銚子を傾けている。ならば遠慮なくとここ小出の酒 “緑川” をガラスの酒器で。
突き出しは “こごみおひたし”、春の苦味を淡麗辛口の純米酒と愉しむ。ちょっと贅沢な時間になりそうだ。 

蕎麦前の “栃尾あぶらげ” は納豆を挟んだ一品、中味はジューシー食感はサクサク、これは美味しいね。
足りなくなっちゃったね、お酒。こんどは六日町の酒 “八海山” 、これもまた新潟らしい淡麗辛口なのだ。

頃合いで “へぎ蕎麦” を注文、五合(二人前)からだけど、布海苔つなぎにした魚沼の蕎麦をいただきたい。
先ずは蕎麦ちょこを揚げ玉を浮かべて、手繰りの四つ五つをマイルドに楽しむ。なかなかいいぞ。
蕎麦つゆを入れ替えたら、わさびを溶いて布海苔のツルツルとした喉越しを楽しむ。こっれ美味しい。

足早に小雨降る小出駅に戻ったら、4番線の会津若松行きは2両編成に乗客を満たして発車5分前。
なんだか面倒になってきたね。雨は降ってるしほろ酔いだし。東京方面に戻ろう。奥只見の旅はまたいずれ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
感度は良好 / 門あさ美 1983


駅そば日記 湯沢庵「山菜そば」

2023-04-19 | 旅のアクセント

 大掴みした太麺をズズッと啜る。甘塩っぱい汁が絡んで美味。染み渡るとはこのことだなぁ。
それにしても、黒味がかった太さが不揃いな田舎そばは、もしかして生麺?手打ち?と思わせるくらいだ。
今採れたものではないことは分かっていても、麺をおおう山菜たちには春を感じずにはいられない。

賑わうCoCoLo湯沢の「がんぎどおり」には、越後の味を堪能できる飲食店が軒を並べているのだけれど、
中々どうして、コンコースの中ほどにある立ち喰いスタンドの蕎麦は、まったく引けを取らないと思うのだ。
高田城址公園観桜からの帰り道、ホッとする午後の一杯なのだ。

越後湯沢駅コンコース「湯沢庵」: 山菜そば 500円

<40年前に街で流れたJ-POP>
夏色のダイアリー / 堀ちえみ 1983


青春18きっぷ 高田城址公園のさくら

2023-04-15 | 日記・エッセイ・コラム

 青春18きっぷに三つ目の入鋏印を受けたら、高崎線の始発821Mに飛び乗る。まだ少し眠たい。
目的地はえちごトキめき鉄道の高田、満開を迎えた高田城址公園の4,000本の桜を観たい。

在来線で高田まで行くのは、かつては高崎線から信越本線に入って碓氷峠を登り、長野を経由した。
旧くは「妙高」とか「白山」って急行に乗ったはずだ。今では分断されたこのルートの代わりに、
高崎線から上越線に入って長岡から信越本線を逆走するしかない。(途中、ほくほく線でショートカットも)

昨年の桜の頃は、魚沼の田圃には厚く雪が残っていた気がするが、今年はもう代掻きができそうだ。
それでも越後三山(八海山・越後駒ヶ岳・中ノ岳)は残雪をたっぷり抱いて、越後路の旅情を掻き立てる。
ボクはと言えば、越後湯沢で求めた “風味爽快ニシテ” を飲みながら、この山々を飽かず眺めるのだ。

11:04、高田駅に上り下りの電車が停まると、普段から比べると信じられない位の乗客を吐き出す。
降車客は一人の例外もなく?、ソメイヨシノで着飾った駅舎を背に、高田城址公園に向かって列をつくる。

高田城址公園へ向かう途中で青田川を渡る。ボクが寧ろ推奨したい桜の情景がここだ。
かつて武家屋敷が並んだという閑静な住宅地、水面を覆うかのように桜枝を伸ばすソメイヨシノが美しい。

外濠を巡るようにどこまでもソメイヨシノの並木が続く。約4,000本の桜が爛漫に咲き誇っているのだ。
高田城は家康の六男、松平忠輝(越後少将)公の居城として天下普請によって造られた。
忠輝公は七十五万石の大封であったが、その改易後は徐々に小藩になっていく。
越後少将家が続いていたらこの町はまた別の発展があったかも知れないが、歴史にタラレバはあまり意味が無い。

話は逸れたが、高田城址公園は約3,000のぼんぼりに照らされる夜桜が美しい。
弘前公園、上野恩賜公園とともに日本三大夜桜といわれ、内濠に映る桜と三重櫓の姿はいい絵になるね。

呑み人のお奨めは真っ白な妙高山(2,454m)を背景にした外濠の桜たち。これってとびきり美しいと思うのだ。
さてこの情景を焼き付けたら駅への道を急ぎ戻る。片道5時間半、滞在1時間半、過酷な青春18きっぷの旅だ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
君に、胸キュン。/ YMO 1983


小雨降る土曜日には

2023-04-12 | 日記・エッセイ・コラム

 さして予定のない小雨降る土曜日は、少しゆっくり布団を這い出して、朝と昼を兼ねて近所の蕎麦屋へ。
蕎麦屋とはいってもメニュー豊富な大衆食堂的な店には、辺りの邸やマンションから常連さんがやってくる。
折よく四人掛けが空いた。女将さんにラガーの栓を抜いてもらったら、“カツ煮” と “餃子” を突っつく。

2本目のビールが終わるタイミングで、麺の上を賑やかせて “五目中華” が着丼。優しい塩味が美味しい。
「青春18きっぷ」の季節が終わって、ほんと久しぶりに怠惰な週末を楽しんでいる。ごちそうさまです。
さてっと、一息ついたら記事を書くか、試験の準備でもしようか。このまま呑んで終わる訳にもいかないね。

<40年前に街で流れたJ-POP>
夏色のナンシー / 早見優 1983


久遠寺の桜と信玄の隠し湯と七賢と 身延線を完乗!

2023-04-08 | 呑み鉄放浪記

 青春18きっぷで、東海道本線の始発321Mに乗って、製紙工場の煙突を眺めて富士までやって来た。
身延線を呑み潰すのは3度目だろうか。08:06、西富士宮止まりの3529Gで富士川を遡る旅は始まる。

富士山本宮浅間大社は駿河國一宮、御祭神は木花之佐久夜毘売(このはなのさくやびめ)、女神様が富士山を鎮める。
桜が御神木とされ、奉納された500本の満開の桜は、朝の春時雨にピンクの花びらを散らし始めている。

ちらほら開き始めたお宮横丁で、かつてB-1グランプリで名を上げた “富士宮焼きそば” を食べておく。
“静岡麦酒” をグッと呷ってからの、イワシの削り粉をたっぷり振りかけた塩焼きそばが美味い。

特急ふじかわ3号を先行させて、10:39、2番手の3629G甲府行きのセミクロスシートに収まる。
大きく円を描くように電車は標高を稼いで行く。眼下に富士宮の町が広がっても富士山は雲の中だ。

車窓に富士川が見えてきたら、さっき富士高砂酒造で仕込んでおいた “高砂からくち” のスクリューを切る。
富士山を描いた蛇の目のお猪口で呑むと、フレッシュな辛口の酒が一層美味しくいただけるね。

次の目的地身延までは1時間ほど、飽かず流れる車窓を眺めながら、300mlを愉しむにはちょうど良い時間だ。
身延駅に着いたら、山梨交通の路線バスに揺られて10分少々、身延山久遠寺を訪ねてみたい。

薄紅色に満開の桜に見送られて三門を潜ると、目の前に本堂へと続く287段の石段「菩提梯」が立ちはだかる。
まるで昭和な部活動のトレーニングメニュー「腿上げ」の苦痛を経なければ、涅槃に達することはできない。

辿り着いた本堂、樹齢400年の巨木が淡いピンクに枝垂れる情景は、なるほどここは涅槃かと思わないでもない。

明治の大火から130年余ぶりに再建された美しい宝塔も、淡いピンクの簾の向こうで恥ずかしそうに見える。

旅の続きは13:44発の3631Gで、富士川に添いつつこのまま甲府への予定だったけど、3度目の途中下車。

下部温泉駅の構内踏切を渡ったら、老舗旅館下部ホテルを訪ねて、柔らかなお湯に浸かろう。
春とはいえ、まだ冷たい狭い谷間の風を頬に感じながら露天風呂に浸かる。涅槃の次は極楽浄土か。

風呂あがりのラウンジ、この時間に生ビールの提供なない。最近の呑み人は果敢に甘味にもチェレンジする。
アップルパイにアイスクリームをのせて球状にペーストで包んで、“真っ赤な林檎ケーキ” が美味しい。

アンカーの3633Gは30分遅れでやって来た。ひとりぼっちの駅待合室は旅情を通り越してうら寂しい。

車窓は鰍沢口から突然に開けて電車は甲府盆地に入る。どんよりした空からはとうとう雨粒が落ちてきて、
南アルプスの山々が見えない。やるせ無い気持ちを引きずって、電車は甲府駅5番ホームに終着する。

川中島の戦いの武田信玄公像に一礼して、駅前ロータリーから1本路地に入ると「酒蔵七賢」がある。
先ず “生ビール” で始めるのはいつものお約束。季節を感じて “菜の花からし和え” を抓まもう。

白州台ヶ原にある「七賢」の直営店だろうか?限定酒を含めて蔵のラインナップが並んでいる。
一杯目は春らしい桜色のラベルの “春しぼり” を択んだ。爽やかな香りを楽しみつつ、辛口の純米生酒が美味い。

大ぶりなジャガイモがほろりと崩れて、出汁が染み込んだ “肉じゃが” が美味しい。七味を振ってね。
黒塗りの盆に朱い塗り箸、ちょっとした料理屋を訪ねた気になる。いい気分で二杯目の選択に悩んでみる。
っで、滑らかなのど越しの “一番しぼり”、初冬に蔵出しされる新米新酒は緑色のラベル。これって酒林のか。

竹林の七賢人から名前をいただく “阮籍” は本醸造生酒、酸味とコクがある旨酒って感じか。
行く冬を惜しんで?、レモンを絞って抹茶塩を塗して “わかさぎ天ぷら” が美味い。コクある酒に合うね。
酒蔵七賢で七賢に酔いながら暮れていく小雨の甲府。身延線の旅を終えて、そろそろ上りの中央線に乗らないと。

身延線 富士〜甲府 88.4km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
Friday Magic / 中原めいこ 1983


Biz-Lunch きょうの登龍@旧東海道・品川宿「チャーハン」

2023-04-05 | Biz-Lunch60分1本勝負

 4月に異動してきた同僚を伴って北品川までランチ遠征、いつもの大盛ワンダーランドにやってきた。
「この店はチャーハンが絶品」とだけ情報を入れながら約10分歩いてきた。

たぶん40代の彼が「大盛り」を注文することを密かに期待していたのだけれど、そこは思慮深い彼、
辺りを注意深く観察して「チャーハン」をオーダー。悔しいからボクが注文したよ「チャーハン大盛り」を。

『これって何合あるの?』と奥さんに訊ねたら、『分からない、でもちょうど1kgになります』だって。
新潟だか秋田だか、冬の風物詩「かまくら」を少しずつ崩していくように「大盛り」と格闘する。

ほんと美味い一皿だけど、食べ終えて大きく息をつく。さぁ頬に微かに黄砂を感じてオフィスへ戻ろう。
ご馳走さまでした。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
Hey!ミスター・ポリスマン / 石川秀美 1983


鉄人28号と港町神戸と地魚屋台と 海岸線を完乗!

2023-04-01 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 グリーンとマリンブルーの帯を纏った5000形電車、三宮・花時計前行きが入線してきた。
リニアモーターカーを利用した小断面トンネル・小型車体と省力化した車両は大江戸線のそれに似ている。

久しぶりのプライベートな神戸2泊3日の旅、ラストは神戸市営地下鉄・海岸線で港町神戸を巡る。
海岸線の起点新長田駅近く若松公園には、震災復興のシンボルとして「鉄人28号」が雄々しく立っていた。

三つ目の御崎公園駅に降りる。運河で囲まれた街はちょっと風が強い。
ノエビアスタジアムでイエニスタが胸を張る。この日はアウェイの札幌でまもなくKICK OFFを迎える。

公園の片隅には「神戸市電1103号車」が展示されている。この電車は昭和29年生まれの神戸市電の末っ子。
市電廃止後、広島に嫁いだと聞いていたけれど、今は里帰りをしてこの地で暮らしている。

小柄なマリンブルーの4両編成をハーバーランド駅で見送って、ここらで海を見に行きたい。

神戸ハーバーランドのウッドデッキから神戸港を眺める。広がるマリンブルーに観光船が滑っている。

六甲山を背景にして埠頭には「帆船みらいへ」が停泊、タイミングが合えばセイルを広げた姿を見ることができる。

8キロに満たない海岸線の旅は、神戸市役所にほど近い三宮・花時計前で車止めに行手を塞がれた。
JR、阪神電車、阪急電車とは地下街で繋がって、地上に出たらいい感じで暮れているだろうか。

赤々とした “本まぐろ刺” を肴に生ビールを呷る。街に吹く風が冷たくとも先ずはビールに限る。
「とっつぁん」という店名に油断していた。店の中は案外若やいでお嬢さんも多い。とっつぁんはボクだけ?

残念ながらラインナップに灘の酒はない。それでは近いところで和歌山は “雑賀” の新酒をいただく。
海苔に巻いた “かに味噌” を肴に、フレッシュでキリッとした口当たりの辛口しぼりたてが美味い。

大ぶりな “ほたて” をバターで焼いてもらったら、レモンをたっぷり絞って醤油を一滴、香ばしいね。
二杯目、今度は広島へ旅して “寳劔” を択ぶ。旨味ありキレありの純米超辛口が料理を引き立てる。

先客に倣って “きす” だの “貝柱” だの天ぷらを盛り合わせてもらったら、すごいボリュームになってしまった。
この量には辛口の酒だけでは足りず、“角ハイボール” を追加して美味しく流すのだ。
まるで漁港の市場のような活気ある酒場でほろ酔って神戸の旅を〆る。外はネオン煌めく19:00の街だ。

神戸市交通局 海岸線 新長田〜三宮・花時計前   7.9km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
19:00の街 / 野口五郎 1983