水揚げが終わって、静けさを取り戻した漁港には、釣り人が糸を垂れている。
少しだけ早起きをした連休のある日、美味いモノを食べようと遠出をする気になった。
っで、東金九十九里有料道路を海に向かっている。もう少し走れば潮の香りがして来そうだ。
zの丸みのあるタンクに、秋の深い青空と、夏の名残りの強い日差しが映り込んでいる。
海に出る前に、成東の浪切不動院に寄ろうと、台方ICで車体を左に倒し込んだ。
山門と本堂、緑に映えるその鮮やかな朱色にzが溶け込んで見える。
聖武天皇の御代、行基が難破船の海難除けとして、波を切る巌の上に不動尊像を刻んだものだと云う。
海岸線はかなり後退したけれど、不動明王は成東の町並みを一望し、その先の大海原を見つめている。
浪切不動院から海岸線までは約8キロ、はるかに太平洋が広がる。
片貝海岸では波に戯れる恋人たちがシルエットになって、ボクにはずいぶん前の想い出だけが残る。
振り返ると、いわし料理やらだんご汁の幟がはためいて、呑み人を誘う。
「まるに」は九十九里浜を一望して、浜焼きが楽しめる食事処だ。
鮮やかな赤身、舌の上で中トロがとろけて “まぐろ刺し” が美味しい。
なんとなく注文してしまうのがノンアル、まぁ気分の問題なのだ。
大ぶりな6尾を盛り付けて “いわしフライ” が登場、茶碗蒸しと2つの小鉢を従えて、食べ切れるだろうか。
小鉢の煮豆とイワシの酢漬けは泣かせる。この際冷えた酒を升に溢してもらいたくなる。
それにしても特製ソースと和辛子を少々付けて、揚げたてのイワシが美味しい。
午後は潮風を浴びながら、九十九里有料道路で緩やかな弧を描く。爽快そのものなのだ。
どこまでも走りたい海岸線だけど、とりあえず九十九里の南端、太東岬まで行ってみよう。
R128を左に折れて、リアス式の海岸崖を駆け上ると、突然、白亜の太東埼灯台が屹立する。
海抜58mから望む太平洋は、水平線に向かって「青」がグラデーションするオーシャンブルー。キレイだ。
遥かに弧を描いている九十九里を目に焼き付けたら、街に向かって北へ走ろう。
ようやくzと走るいい季節がやってきた。次の週末、風を感じてどこまで行こうか。
<40年前に街で流れたJ-POP>
オーシャン・ブルー / 稲垣潤一 1984