旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

酒と肴と男と女 おでん処 大酉茶屋@金沢

2024-04-24 | 日記・エッセイ・コラム

ひと頃二人は何度か金沢を訪れた。
それぞれの拠点からちょうど良い距離だったこともあるけれど、
訳ありの二人を包み込んでしまうには、この街は手頃な大きさだと思うのだ。

スナップえんどう白和え
ホタルイカ酢味噌

9年前に新幹線が延伸してからこっち、この街は今までに増して多くの観光客を迎えるようになった。
共通の知り合いにばったりという事も無いとは限らない。
くぐる暖簾は、人気の割烹や居酒屋から、渋い小料理屋とか地味めな酒場へと変わった。

先一杯(まずいっぱい)
イイダコ煮

駅前の喧騒を逃れた路地裏の店で提供される酒は、冷も燗も “菊姫” の一択。
鶴来町は白山比咩神社への参道にある蔵へは、ローカル私鉄に揺られて訪ねたことがある。
“先一杯(まずいっぱい)” は旨口だけど軽やかな口あたりの純米酒だ。

金劔
あじたたき

袖振り合うような狭いカウンター、蛇の目のお猪口で差しつ差されつするのが嬉しい。
“金劔” は鶴来町にある金劔宮(きんけんぐう)からあやかった、米の甘味・旨味を感じる優しい女酒。

山廃純米
もも串、せせり串、ささみ串
くるまふ、梅貝、竹の子 etc

焼き物は塩で、レモンを絞る。でも柚子胡椒かワサビか分かれるのが二人の好みだ。
濃醇で飲み応えがある “山廃純米” は、酸味と濃さのある剛健な男酒。
加賀麩やら梅貝やら、金沢おでんらしく盛り合わせてもらう。香り立つ深みのある出汁が美味しい。

次々に暖簾をくぐってくる常連客に席を譲るように店を出る。
街はちょうどいい感じに黄昏れて、二人が肩を並べて歩くのを許してくれる。
えんじに浮かび上がった鼓門を見上げたら、一緒に居られる時間もあと僅かだ。

Hello, My Friend / 稲垣潤一&高橋洋子


氷川神社と石神井川の桜と超辛口ばくれんと 埼京線・赤羽線を完乗!

2024-04-13 | 呑み鉄放浪記

林立する高層マンションを縫うように、軽エメラルドグリーンの10両編成が疾走する。
大宮から赤羽そして池袋、呑む旅にはぴったりの街を繋ぐのが埼京線・赤羽線の旅だ。

13路線が乗り入れる首都圏の北の玄関口だけど、街の顔であるはずの駅舎はなんだか懐かしい佇まい。
溢れる人と、古臭くて狭い駅前広場のアンバランス、これもなかなか味がある。

埼京線は新幹線下の地下ホームから出発する。川越発の快速をやり過ごして、19番線の当駅始発に乗車する。
僅かな距離の旅だから、ロングシートでうららかな春の日を浴びながら、ゆるりと行きたい。

大宮は「鉄道のまち」だ。大宮駅、大宮工場、大宮操車場の設置が人を呼び、賑わいを創った。
そして大宮の歴史は武蔵一之宮 氷川神社の歴史とともにある。旅の始めにここを詣でておきたい。

大宮駅から氷川参道そして神社まで参詣者の列が途切れることはない。
初詣の様と言ったら大袈裟だけど、春の陽に誘われて、大宮公園の花見がてら氷川神社に向かう人は多い。

さて埼京線は新幹線と並走して高架線路が都心に向かって延びている。
健脚自慢のエメラルドグリーンは、時折E5系やE7系にバトルを挑むが、たいていは返り討ちに遭っている。

ふたたび東京上野ライン、湘南新宿ラインと出会う赤羽駅に途中下車。結構な乗降客の入れ替わりがある。
一番街のセンベロ酒場で昼呑みを、っと思ったけど、それでは余りに読めた展開と思い直して旅を続ける。

エメラルドグリーンの電車が走る赤羽線の区間は古くからの住宅街、埼京線区間とは雰囲気が違う。
車窓の桜花に見惚れて途中下車、この線路沿いの並木は東京家政大学のキャンパス。

続けてエメラルドグリーンは石神井川を渡る。この狭い谷の両岸に900本の桜が咲き誇って美しい。
この季節には、旧中山道板橋宿から王子の飛鳥公園まで、桜の下を歩きたい。

多くの乗客を吐き出して池袋駅の1番ホーム。埼京線・赤羽線は乗り通してしまえば僅かに30分少々の旅だ。
さてっと、池袋で呑むのもやはり芸がないから、2駅ほど戻ろうと思う。

十条駅から北へ、赤羽線と並行するように延びるアーケードは、200店舗がひしめく十条銀座商店街。
昭和風情のアーケードを漂って、やがてボクは一軒の立ち呑み屋に吸い込まれるのだ。

そして昭和の親父たちを真似て、ボクは “赤星” をグラスに注ぐ。この苦味が泣かせる。
先ずはお手軽に “サバ缶キュウリ” を突っついて、やがて “ミートボールのトマト煮” にクラッカーを散らす。

花冷えの “ばくれん” をお嬢さんが注いでくれる。山形は亀の井酒造の超辛の吟醸酒だ。
アテはホワイトボードに見つけた “ネギトロ”、これには目がない。わさび醤油を垂らして美味しい。

こだわってラインナップした地酒は一杯がワンコイン、かなり優れたパフォーマンスだ。
二杯目の “AKABU” は盛岡の酒。“バラ肉と厚揚げのニンニク炒め” をつまみに、清涼感溢れるやや辛いがいい。

食べ歩きが人気の昭和な商店街、立ち呑み屋のアテも逸品揃いで、きっとまた寄ってしまいそうな十条。
アーケードを這い出る頃には、いい感じで暗くなっている埼京線・赤羽線の旅だ。

埼京線 大宮~赤羽 18.0km 完乗
赤羽線 赤羽~池袋   5.5km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
孤独なハート / 長渕剛 1984


Holiday-lunch RESTAURANT SALT@浦和

2024-04-03 | 日記・エッセイ・コラム

信州上田の “亀齢ひとごこち” が注がれるカウンターはフレンチレストラン。
ペアリングコースをお願いすると5種のお酒を Lunch Course の料理に合わせてくれる。
爽やかな香りの純米吟醸が合わせるのは、旬が訪れた “ほたるいか×菜の花のリゾット” だ。

蕗のソースを絡めた “さわら” は蕪蒸しを添えて、このほろ苦い春の味が美味しい。
白ワインはブルゴーニュの “エジェルテ” のシャルドネ、この辛口がいい。

本日のお肉は “鴨”、ソースは鴨のレバーと八角にマデイラ酒、濃厚だね。
合わせるカベルネ・ソーヴィニヨン “パスカル・トソ” は辛口のミディアムボディ、ベリー系の果実味?
いつもは勝手気ままに択ぶお酒も、たまにはお店のコーディネートに委ねるのも楽しいですね。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Rock'n Rouge / 松田聖子 1984