旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

Kyoto メトロに乗って 上賀茂神社と枝垂れ梅と玉乃光と 烏丸線を完乗!

2024-03-09 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

国際会館行きの10系電車と近鉄線から乗り入れる3200系電車がツーショットで竹田駅。
満開の知らせが届いて、城南宮の「しだれ梅と椿まつり」を訪ねた。

城南宮を訪ねる烏丸線の旅は国際会館駅から始まる。
八瀬の山々を背景にして、静かな朝の宝ヶ池と京都国際会館はまだ冬の装いだね。

始発の時点ではまだガラガラの竹田行き、席が温まるまもなく2つ目の北山に途中下車。
カフェやブティックが並ぶ北山通りは、なかなかモダンでおしゃれな街並みだ。

開店時間を狙った洋食カフェ「和蘭芹(パセリ)」に、幸運にも空席があった。
せっかくの京都だから、美味しいブランチを楽しみたい。っと地元の人気店を訪ねる。

“ベーコンとモッツァレラチーズのトマトソース オムライス” ってちょっと長い。
とろりとチーズがのびてトマトソースが美味しい。

賀茂別雷神社(上賀茂神社)は山城国一ノ宮、平安京以前から栄えている京都で最も古い神社らしい。
一礼をして二の鳥居をくぐると、細殿の前に二杯の立砂が美しい。立砂は神様が降り立つ際の目印だ。

結構な列に並んで朱塗りの楼門を抜けると、流造りの本殿と権殿が現れる。
厳かに二礼二拍手一礼、今宵も美味しいお酒が呑めますように。

北山駅に戻って烏丸線の旅を続ける。10系電車の先頭車両には伝統産業素材の展示をしている。
 呑み人が乗った編成には京扇子の展示が。紅葉に流水、寒牡丹と秋冬の繊細優美な飾扇子が美しい。

3つ進めて今出川で途中下車。御所の北側に境内を広げる相国寺は京都五山第二位に列せられる名刹。
この日、承天閣美術館では「若冲と応挙」が会期延長中で、とても幸運な訪問になった。

美しいレンガ造の建物「有終館」は1887年に竣工した国の重要文化財。
今出川のランドマークは同志社大学であることに異論はないでしょう。

烏丸線は北大路駅から先、文字通り烏丸通の下を真っ直ぐに南下していく。
御池、三条、四条と頭の上を繁華街が流れていくけれど、この界隈を訪ねるのは暗くなってから。

冬の澄んだ青空を突く京都タワー(131m)、町家の瓦葺きを波に見立て、街を照らす灯台のイメージだそうだ。
烏丸線は京都駅でごっそり乗客を入れ替えて、今しばらく南下を続ける。

京都から駅を3つ数えると、突然に右手から西陽に射られて、3200系は終点の竹田駅に滑り込む。
多分2本に1本はこのまま近鉄京都線に乗り入れてさらに南へと走るのだ。

方除けの大社 城南宮は、雅やかな平安時代の歌会「曲水の宴」を再現することで知られる。
今頃は「梅が枝神楽」の季節、梅の花を冠にさした巫女が梅の枝を手に神楽を舞う。

「しだれ梅と椿まつり」を迎えた春の山で、150本の薄紅や紅や白が枝垂れて春の訪れを告げる。
今回のボクは、枝垂れた梅より苔むした庭に注目、真紅の “落ち椿” や薄紅を散らした梅の花弁がキレイだ。

夜の帳が下りる頃に四条駅を降りて高辻東入ルると酒粕レストランがある。
箪笥製造卸を営んだ京町家をリノベーションした店は、伏見の玉乃光酒造が営む酒粕おでんと一品料理の店だ。

結論から言うと、どの料理も美味しいご機嫌な店だった。次の機会にも必ず訪ねたい。
一杯目は “CLASSIC” と名付けた生酛系の純米吟醸酒、酸味と旨味がいい。
“酒粕ポテトサラダ” と “トマトとツナの丸ごとサラダ” を並べてご機嫌なのだ。

金継ぎを施した洒落た片口にフレッシュな “なまざけ” を注いでもらう。
“プルーンと酒粕クリームチーズの生ハム巻き” に、ワインの様なフルーティーな味わいを合わせる。
一転して “鯛の酒粕なめろう”、これは次の一杯に合わせようか。これは旨い肴だ。

“鰤の酒粕味噌柚庵焼き” に “京都ポークの酒粕味噌柚庵焼き” と柚で攻める。これ酒粕に合うね。
“杜氏しか飲めない•••” と謳った雄町の純米吟醸酒は、賞味期限1週間の搾りたての無濾過生原酒。
つまり、ここに来ないと飲めないってことね。これは飲んでおかないと。

最後に “酒粕おでん” を盛り合わせてもらう。味噌と酒粕を合わせた出汁がとろりと美味しい。
この華やかなラベルは京都産の酒米「祝」で醸した純米吟醸、酸味と旨みがバランスした優しい酒だ。

そしてボクはこの “純米吟醸 祝” を土産に抱えて三条烏丸辺りのホテルへほろ酔いで戻る。
さすがは京都、烏丸線の旅は美味しい旅なのだ。

京都市交通局 烏丸線 国際会館〜竹田 13.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
くちびるヌード / 高見千佳 1984


Osaka メトロに乗って 東成しんみちロードの串揚げ居酒屋で 今里筋線を完乗!

2024-03-02 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

今里筋線の路線図を見ると興味深い。大阪市街の東端を舐めるように南下し都心部に向かうことはない。
さてと今宵の一杯はどこでやるのか考えものだけど、まずは考えるより先に旅に出たい。

市営住宅が立ち並ぶ雨上がりの井高野に、ど派手な柑子色のゲートが口を開けている。
革靴をコツコツ鳴らして長い階段を降りていくと、これまた柑子色のラインを引いた80系が待っている。

なんと可愛らしい。15m×4両のミニ地下鉄は、まるで遊園地の乗り物か?と言ったら言い過ぎか。
たぶん都営大江戸線や仙台市地下鉄東西線と同じようなサイズだと思う。

都心に入らない今里筋線の沿線いは観るべきランドマークは少ない。
関目成育駅から徒歩10分、訪ねた野江水神社は水火除難の守護神、淀川の氾濫に悩まされた土地柄か?
旧京街道に絡む太子橋今市から関目成育の間は、じっくり歩いてみると楽しいかも知れない。

柑子色の4両編成は23分かけて今里駅に終着し、ここで千日前線と接続する。
今里筋線は都心に乗り入れない代わりに「いまざとライナー」というBRTシステムが阿部野橋へと走る。

そして呑み人は、東成しんみちロードへと紛れ込む。
訪れたのは午後8時過ぎだから、果たしてこの商店街が賑やかなのか廃れているのか分からない。
ふらふらとシャッターが降りた狭いアーケードを進むと、串揚げと描かれた白い提灯が揺れている。

髭の大将と笑顔の素敵なお嬢さんに迎えられて、「のすけ」は15〜16席のコの字カウンター。
ご常連で埋まるこのローカルな居酒屋の暖簾を潜るには、少なからず勇気を振り絞る。
先ずは生ビールと “刺身盛り合わせ” で。ワサビたっぷりに “水たこ” が美味しかったなぁ。

ご自慢の串揚げも “おまかせ五本盛り”、タラ白子から始まって、黒毛和牛ハネシタ、豚肉ヘレ、
下仁田ネギ、それに燻製合鴨ロース粒マスタード。どれも美味しい。
大将が勧めてくれたのは “日日 山田錦”、優しく甘い香りの伏見の生酛が串揚げにも相性がいいね。

“浪の音” は大津の酒、これも大将に勧められた超辛口の生原酒、旨味とキレがいい感じだ。
“おでん” は、これは珍しい春菊、それに厚揚げとこんにゃく。冷たい雨の夜に温まるね。

はじめましての街角のローカルな居酒屋で、ひとり旅情に浸る呑み人なのです。

大阪市高速電気軌道 今里筋線 井高野〜今里 11.9km 完乗

ふたり大阪 / 松浦亜弥


Osaka メトロに乗って 法善寺横丁と道頓堀となんばの立ち呑み処と 千日前線を完乗!

2024-01-20 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

南巽駅に到着した25系電車はチェリーローズのライン、ちょっと可愛らしい4両編成で走っている。
今回は千日前線に乗って、なんば界隈で昼呑みをしようと思っている。

終着駅の近くには応神天皇を祀る巽神社、大阪の巽(辰巳)の地を守る氏神様だ。
そのお名前から、今年の初詣は例年以上の参詣客が訪れたのではないだろうか。

交差点の標識に「南巽駅前」となければ、見過ごしてしまうほどメトロの入り口はひっそりと口を開ける。
人気の少ない階段をコツンコツンと降り切ると、ちょうどチェリーローズが入線したところだ。

前照灯が消え尾灯が赤く点った運転室に車掌の姿はない。
どうやら短い4両編成の千日前線はワンマン運転をしているらしい。

南巽から15分ほどで日本橋そしてなんば、日本最大級の繁華街「ミナミ」を歩いてみる。

先ずは繁華街にありながら情緒たっぷりの法善寺横丁、お線香の香りが漂ってくる。
石畳を鳴らして歩く横丁には割烹やバーが並ぶ。ほんとは日が暮れてから「月の法善寺横丁」を訪ねたい。

戎橋を中心とした道頓堀は、まんまテーマパークというかワンダーランドの様相だ。
ここを訪ねたのは2年ぶりだろうか、たこ焼きや串カツの大看板は前は無かったような。進化しているね。

それでも「カールおじさん」や「かに道楽」を見上げるとホッとする。
どこからか聞こえてくるトントコトンの音、太鼓をたたく人もお元気そうだね。

とにかく凄まじい人の波、そしてやはり半数は外国人と云っても大袈裟ではない。
とりあえずこの界隈から離脱しよう。人波に酔ってしまったら、この旅のテーマとは違ってしまう。

最寄りの入口から地下街なんばウォークに逃げ込む。ここも賑やかだけれどいくらかマシなのだ。
なんばから先、チェリーローズの4編成は、ひと駅先の桜川で転針して新なにわ筋を北上する。

っとその前にアーケードの難波センター街商店街に紛れ込んで、ご同輩ひしめき合う赤垣屋の暖簾をくぐった。
入口で立ち尽くすボクにカウンターの中のお兄さんが手招きでわずかなスペースに誘導してくれる。
右肩をズイっと捻って斜め45°にカウンターに立つ。先ずはジョッキーで生ビールを呷るのはいつものとおり

今日のおすすめは “うに” なんだと、お兄さん、半ば強引にオーダーを通す。まあ悪くはない。
漂ってくる紫煙を躱わしながら、ホッピーを注いだジョッキーを軽くステアする。
奥の調理場から冷蔵ショーケースに運ばれてきた小鉢を呼び止めて、次なるアテは “マグロぶつ”。

店の名物から “スーパーなんばビーフカツ”、ミルフィーユ風の豚バラにチーズを挟んで美味しい。
ナカをお代わりして濃いめの三杯めを楽しむ。これで小2枚でお釣りが出るから良いパフォーマンスだね。

昼呑みの余韻をマスクで隠してチェリーローズに飛び乗ると、終点の野田阪神までは凡そ10分の乗車。
千日前線は一度も地上を走らずにその旅を終える。エスカレーターで這い出るとまだ早い午後の陽が眩しい。
出張後の週末居残りで Osaka Metro を3路線、ミッションコンプリートまで先は長そうだ。

大阪市高速電気軌道 千日前線 南巽〜野田阪神 13.1km 完乗

大阪エレジー / シャ乱Q


Osaka メトロに乗って 太陽の塔と通天閣と堺筋本町の立喰酒場と 千里線・堺筋線を完乗!

2024-01-13 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

千里ニュータウンの北の玄関口には、阪急の電車とOsaka Metroの電車が交互に登ってくる。
上品なマルーンが阪急の車両、オールステンレスにマルーンのラインがOsaka Metroの車両だ。

千里ニュータウンの開発は多摩や港北よりも早い、日本で最初の大規模ニュータウンなのだ。

急な勾配を転がり始めたマルーンの8両編成は、万博記念公園の西の端を舐めるように南下する。
1970年の大阪万国博覧会の時には、臨時の万国博西口駅が開設され、たくさんの来場者を運んだ。

急勾配(最大35‰)と急曲線が連続する千里線は、案外とゆっくり走っていく。
関大前駅でたくさんの中学生高校生が乗り込んできて、静かだった車内はとたんに賑やかになる。

淡路駅では京都本線路X字に平面交差するので、電車は駅構内に進入する前に一時停車する。
きっとダイヤグラムのボトルネックになっているから、現在大規模な連続立体交差事業が進んでいる。

マルーンの8両編成がガタガタと淀川を渡る。橋りょうの上流側に見える大きな構造物は淀川大堰だ。
やがて鉄路は地下に吸い込まれて天神橋筋六丁目駅は千里線の起点であり、堺筋線の起点でもある。

北浜駅を降りて地上に這い出る。振り返ると大阪取引所を見上げる。ここは大阪の金融街なのだ。

土佐堀川を渡る。水の都にすてた恋 泣いて別れた淀屋橋、ここが大阪中の島だ。
赤れんがのネオルネッサンス建築は大阪市中央公会堂、近代的な高層ビル群を従えて美しい。

北浜駅に滑り込んできた8両編成は66系電車、パンタグラフを載せた車両はOsaka Metroの中では珍しい。

サイコロの目は4と出て今度は恵美須町で途中下車、逆光の中通天閣を見上げる。

新世界を漫ろ歩く。間違いなく日本人より訪日外国人観光客の方が多い。それも圧倒的に。
飲食店が並ぶジャンジャン横丁、ド派手な看板広告も前に訪れた時からずいぶん様変わりしていた。

残り2区間を乗車すると終点の天下茶屋、電車はすでに折り返しの表示に変わっている。
京都河原町って、阪急線に乗り入れて、ずいぶん遠くまで旅をするんですね。

この終着駅はホームこそ地下だけど、改札や駅長室は地上にある。さらに高架は南海本線のホームになる。
さてここは西成、ディープでウマい店を探したいところだけれど、それはスーツではない時にしよう。

堺筋本町に降り立って、板屋橋筋と南本町通の角にある立喰酒場を訪ねる。
立ち呑みではなくて立喰とうたう位だからアテには期待して良い。
この店、19:00をまわると “おばんざい3種盛り” が嬉しい、先ずは “ごぼう唐揚げ” を齧ってみる。

日本酒のラインナップに大阪の酒を見つけることができず、それでもメニューから西の酒を拾ってみる。
朱色ラベルの “七本鎗” は吟吹雪の純米、キレの良い辛口が旨い。

“稜線” は但馬の酒、山田錦を醸したやや辛口で酸味がある純米吟醸だ。
アテの “中落ちマグロ” はちょっぴりレモンを絞って、濃口の醤油で美味しい。

“クリームチーズ豆腐” にわさびをつけて、旨味と酸味のある特別純米に合う。“而今” は名張の酒だね。
あたりはすっかり暗くなって、いつしか立喰酒場も立席を譲り合う時間帯になっている。
それではっと、粋に後からの客人に場所を譲ったら「きつねうどん」でも啜って部屋に戻ろうか。

阪急電鉄 千里線 北千里〜天神橋筋六丁目 13.6km 完乗
大阪市高速電気軌道 堺筋線 天神橋筋六丁目〜天下茶屋 8.5km 完乗

大阪LOVER / DREAMS COME TRUE


Osaka メトロに乗って 天神さんとハルカスと鎗屋町の居酒屋と 谷町線を完乗!

2024-01-06 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

折り返し八尾南ゆきとなる22系電車6両編成が、交代の乗務員氏が待つ大日駅1番線に入ってきた。
 路線カラーは京紫(ロイヤルパープル)、雰囲気は半蔵門線に似ている。

大型ショッピングセンターの背景にニョキニョキとタワーマンションが突き出してる大日駅前。
Osaka Metro 谷町線は、大日から野江内代まで旧東海道を延長する京街道に沿っている。
守口宿の古い家並みや秀吉が築いた文禄堤を訪ねたいけど、それはまた別の機会だ。

梅田にアクセスするために大きな<字を描いて、ロイヤルパープルの6両編成は南森駅に滑り込む。
ちょっと途中下車して日本一長いアーケード商店街、天神橋筋商店街の雰囲気を見てみたい。

二丁目商店街には、恵比寿様と宝船のイルミネーションが煌めく。天満天神えびす祭を祝ってのものだ。

“天満のてんじんさん” と親しまれる大阪天満宮を訪ねる。
孝徳天皇が難波宮を造営した際、守護神として大将軍社を創建(650年)された。
その後、太宰府へ向かう途中、菅原道真公がここに旅の無事を祈願したのを縁に、没後この地に祀られた。

南森駅を出たロイヤルパープルの6両編成は右90°のカーブを切って谷町筋を南へ下る。
駅を6つ数えてひときわ乗降客が多いのが天王寺、御堂筋線やJR線それに近鉄線と連絡するターミナルだ。

昼呑みを誘う地下飲食街を振り切って6番出口から這い出ると、あべのハルカス(300m)が屹立している。

谷町筋をひと駅分戻るように歩いてみる。っと夕陽を浴びた五重塔が見えてくる。
救世観音を本尊とした四天王寺は、聖徳太子が建立した、日本最古の本格的な仏教寺院の一つだ。

ロイヤルパープルの6両編成が天王寺から20分走ると、暗闇の先に薄明かりが広がって、八尾南駅に終着する。
いつの間にか市境を越えたこの駅は谷町線唯一の地上駅、ホームからは住宅街と畑を眺める。

夕闇に沈みつつある駅舎に隣接して大日検車場がある。11本ある留置線にはたった2編成が停まっている。
夕方のラッシュアワーが終わったら、ロイヤルパープルの電車は、一つまた一つこの塒(ねぐら)に戻るだろう。

中央線と交わる谷町四丁目駅まで戻ったら、賑わう交差点から鎗屋町通りに紛れ込む。
たった1ブロック入っただけだけど、嘘のように静寂な雰囲気の中、古民家風に飾った居酒屋がある。

木枠のガラス戸、裸電球風の照明、温かみのある店には「ただいま」の雰囲気で訪ねたい。
とりあえずはビール。アテに択んだ “茄子と万願寺の煮浸し” が絶品、早く日本酒に行かないと。

今宵はもちろん西日本の酒で酔いたい。一杯めは北近江の “七本鎗” を。
豊かな旨みのある “純米 玉栄” は甘辛い味付けの料理に合いそうだ。万願寺の煮浸しを傍に杯を重ねる。
“豚の角煮パイ包み” は和辛子をつけて、これはオシャレで美味しい逸品だ。

“寶剱” は呉の酒、このレトロなラベルは八反錦ベースの純米酒、旨みのある酒は冷でも燗でもいけそうだ。
お品書きを眺めて、こんな酒に合いそうなのは “鯖の燻製” か。
マヨネーズに七味を少々振って香りを感じながら齧る、これって酒呑みの択びそうな肴だなぁ。

“久米桜” は鳥取大山の酒、“軽妙酒脱” の名のとおり、飲み心地は軽やかで、ラベルは洒落ている。
どうやら平成になってからの蔵のようで、インディーズ的な酒、ここで出会ったのはご縁ですね。
土鍋で炊いた “じゃこめし” を味わったら、猪口に残った軽妙酒脱をキュッと呑んで〆る。

引き戸を閉めたらコートの襟を立てる。大阪の冬は思ってたよりも寒い。この街ではまだまだ呑みたい。

大阪市高速電気軌道 谷町線 大日〜八尾南 28.1km 完乗

大阪で生まれた女 / BORO


Osaka メトロに乗って 悲しい色やね 中央線を完乗!

2022-12-24 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

底冷えがする学研奈良登美ヶ丘駅、夕陽に照らされるようにオレンジに染まった近鉄7020系電車が並んだ。

行政区域は奈良市になるんだね。でもこの街に住む人や機能は奈良中心部ではなくて大阪を向いている。
冬の低気圧が張り出した日、近鉄けいはんな線〜Osaka Metro中央線を呑み潰して、大阪の海を見に行こう。

大阪・奈良の府県境に立ちはだかる生駒山地(生駒山=642m)を穿つのは、4.7kmと長大な生駒トンネルだ。
その長い急勾配を駆け下りて、Osaka Metroの24系電車が、麓の新石切駅に滑り込んできた。

第三軌条方式の複線が地下に潜って長田駅で乗務員が交代する。ここが近鉄とOsaka Metroの結節点なのだ。
さらに4つ目、JR大阪環状線との乗換駅森ノ宮で2度目の途中下車、大阪に来たら太閤はんにご挨拶したい。

弱々しい冬の陽に照らされて、さしもの5層8階の大天守も、なんだか黄昏ているようにも見える。

豊國神社前に立つ豊臣秀吉公像、軍配を手に陣羽織、具足を身に着け、彼方を見据える。何を思うのだろうか。

森ノ宮駅にスペクトリウムグリーンの20系電車が滑り込んできた。すでに車齢40年に近いベテランなのだ。

葉が落ちたイチョウ並木にパープルのイルミネーションが煌めく御堂筋、今宵の大阪は粉雪が待っている。

堺筋本町で3度目の途中下車、箒屋町筋は「本町ぼんてん」の縄のれんをくぐる。以前から気になっていた店だ。
縦長のコの字カウンターを10席ほどが囲む。炉端焼きになっているんだね。客層はむしろお嬢さんが多い。

能勢の酒 “秋鹿” を択ぶ。超辛口の純米吟醸は、香り爽やか、口当たり瑞々しく、ふくよかな旨味が楽しい。
小ぶりな焼き物に “お刺身盛合せ”、先ずはモンゴイカとタコにレモンを絞っていただく。美味しい。

“宇和島のじゃこ天” を焼いてもらった。おろしポン酢でいただく。ちょっぴり七味も振ってね。
冷えた生原酒がグラスを曇らせる。二杯目は交野の “片野桜”、深いコクとふくらみある味わいの雄町がいい。

新酒の季節、“大治郎” は大阪を飛び出して東近江の酒、フレッシュなうすにごり生原酒が美味い。
凍えるこんな日は “播磨産カキ入り湯豆腐” を。さっぱりした出汁に柚子を散らして温かいアテがいい。

マスクの中に新酒の余韻を残して、帰宅ラッシュが始まった堺筋本町から大阪市街を横切り海をめざす。

終点手前の大阪港駅、降車客のほとんどは外国人だ。欧米の方と中国系の方と半々って感じだろうか。
もちろん目的地は海遊館、なんだかその情景が寂しいと思ったら、激しい季節風に観覧車が止まっているのだ。

新鋭の30000A系にやっと当たった。最後の1区間、大阪港咲洲トンネルを潜ると終点のコスモスクエア駅だ。
Hold me tight 大阪ベイブルース ♪、恋や夢のかけらを流した冬の海が悲しい色をしている。

近畿日本鉄道 けいはんな線 学研奈良登美ヶ丘駅〜長田 18.8km 完乗
Osaka Metro 中央線 長田〜コスモスクエア 17.9km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
悲しい色やね / 上田正樹 1982


Nagoya メトロに乗って 深紅に染まるテレビ塔 東部丘陵線・東山線を完乗!

2020-08-22 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

2005年、愛知万博(愛・地球博)への会場アクセスのために建設されたLinimo。
日本で最初のリニアモーターカーが名古屋市の東部丘陵を走っている。

夕暮れの八草駅、愛知環状鉄道と東部丘陵線が連絡している。
山裾と云っていい静かな駅前広場には、工業大学のスクールバスだけが停まっている。

白いボディーの3両編成は無人運転、S字を描きながら高度を稼ぐように勾配を登る。
巡航すると100km/hで走るから、さながらジェットコースターの様でもある。

左手のこんもりとした森が愛・地球博記念公園、サツキとメイの家が人気だ。
沈みゆく日の方向には名駅の摩天楼が霞んでいる。
はなみずき通駅を出たLinimoは地下へと潜りこみ、藤が丘で17分の旅を終える。

夕闇迫る藤が丘駅に、隣接する車両基地からイエローのラインの6両編成が入線する。

地下鉄の東山線が高架ホームで新交通システムのLinimoが地下ホーム?
納得はいかないけれど東山線に乗車する。でないと今宵の酒場には辿りつかない。

名古屋最大の繁華街 栄で下車、今時SKEと3レターにした方が通りが良いだろうか。
名城線、名鉄・瀬戸線の乗換駅でもあり、車両の乗客がそっくり入替るかのようだ。

深紅にライトアップしたテレビ塔、実はこの日まで愛知県は緊急事態宣言が発出中。
ちょっと申し訳ない気持ちになる。1日早かった様だ。

狙っていた居酒屋「海の日」はたった今、営業時間短縮で看板の灯を落としたところ。
遠慮がちに覗くと、大将曰く、板場お任せの "おつまみセット" ならば提供してくれると。
それで十分です!それではラストオーダーが終わったご常連に交じって一寸だけ。

伊賀の銘酒 "瀧自慢"、伊勢志摩サミット晩餐会に供された "辛口純米 滝水流(はやせ)" は
すっきりとしたキレの良い味わいの食中酒。刺身は "鯖の昆布締め" が美味しかったな。

二杯目は白山(石川県)の吉田酒造店の "吉田蔵" を択ぶ。この蔵のメインブランド "手取川" に対して、
地元の米に拘ったのが "吉田蔵" ブランド。純米酒の旨みとコク、そしてのど越しが愉しい。

普段よりずいぶん静かであろう栄で一杯やったら、再びイエローラインの6両編成で。
東山線は名駅を横断せず、包み込むように北に迂回、最後は豊国通りを北から南に貫く。

今池~栄~名古屋とあれほど混雑した6両編成も、閑散として高畑に終着する。
地上に出るとコンビニだけが妙に明るい、都会にしては寂しげな旅の終わりなのだ。

愛知高速交通・東部丘陵線 八草~藤が丘 8.9km 完乗
名古屋市交通局・東山線 藤が丘~高畑  20.6km 完乗

I'm In the Mood for Dancing / The Nolans 1980


Nagoya メトロに乗って 森の地下街の大衆酒場で 桜通線を完乗!

2020-08-01 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

シルバーに赤のラインをひいた5両編成が中村区役所駅を始発する。
青春18きっぷで日帰り名古屋遠征、名古屋市営地下鉄はあと2路線を残している。

尾張國愛知郡中村とは太閤・秀吉の出生地、中村区役所駅の上は太閤通りが東西に貫き、
西に2キロほど行くと、豊國神社の高さ24m「中村の大鳥居」がある。

2つ目の名古屋から今池までは往復8車線の目抜き通り「桜通り」を往く。故に桜通線だ。
4つ目の久屋大通駅は名古屋テレビ塔の真下になる。

昼吞みできる店を探してサカエチカを彷徨い、森の地下街「酒津屋 中店」に辿りつく。
名古屋めしで飲める大衆酒場は、朝7時には暖簾がかかる。朝っぱらから飲めるのだ。
店内はご同輩ばかりかと思えば、20代の男女もジョッキを手にして結構ごきげんな様子。
どうも披露宴からの流れのようだ。

この日の名古屋は36℃、当然に先ずは生ビールを呷る。
アテはキムチと食べるラー油をトッピングした "キムラー奴"、酸っぱ辛くて美味しい。

使い込んだメニューを眺めて、二杯目は角ハイボールを注文。
店の名物 "えびカツ" をタルタルソースで、これも名古屋めし?まぁ雰囲気はあるね。

お代は千円札2枚でお釣りがくる位、せんべろとは云えないまでも趣き深い店に満足。
さて旅の続き、赤いラインの5両編成は今池駅で南へ転進すると環状線の地下を往く。
桜本町駅を出るとさらに東へ転進、東海通りを往く。なんだか忙しない。

地下を走りながらも、明らかに登り勾配を感じるようになったころ、徳重駅に終着する。
地上に這い出ると、そこは区役所(支所)+バスターミナル+ショッピングセンター。地方都市の地下鉄にあって、
郊外側の終点は大抵こんな感じだ。人工的な丘に植樹された濃緑が目に染みて、桜通線の短い旅は終わるのだ。

名古屋市交通局・桜通線 中村区役所~徳重 19.1km 完乗

漂泊者(アウトロー) / 甲斐バンド 1980


メトロに乗って 雷鳴轟く午後に 副都心線を完乗!

2020-07-25 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

鉄道5事業者が相互乗り入れする副都心線には多彩な顔ぶれが集まる。
始発の和光市駅3番線で出発を待つのは BAYSTARS TRAIN、横浜高速鉄道の車両だ。

今日も35度を超える東京、発雷予報も出ているし、なんとか夕立ち前に呑み潰したい。

Fライナーっていうのが優れもの、和光市を発つと小竹向原、池袋、新宿三丁目、
明治神宮前だけに停車して渋谷に急ぐ、地下鉄線内の速達運転て希少じゃないだろうか。
副都心線の起点小竹向原で見送った元町・中華街行きは東急電鉄の車両だね。

副都心線の池袋駅は少し西にずれていて、地上に出ると立教通りの入口辺り。

池袋の街を彷徨ううちに、空は俄かに暗くなり、遠くで雷鳴が轟きはじめた。
然らば今日は早めの一杯、降り出した大粒の雨を避けて蔵元居酒屋「清龍」に転がり込む。

この店、蓮田市の清龍酒造の直営店、でも先ずは生ビールを。汗が吹いているからね。
アテは本日のおすすめから "マグロ刺身" を注文する。
盆の故郷で親戚が集まったら、こんな刺身を抓んで一杯やるんだろうな。今夏はNG。

純米辛口 "伝" は旨味のある辛口の酒、涼冷えくらいでいただくのが良い食中酒。
二皿目は "旨辛とうふサラダ"、さっぱりとトマトと奴を抓む。窓の外は滝のような雨だ。 

"油揚げ厚焼き" の上でおかかが踊っている。生姜と刻みネギをたっぷりのせて美味しい。
繊細でフルーティーな "大吟醸" は雪冷えくらいが良い、すっと喉を通り過ぎていく酒だ。
清龍と云えば歌舞伎町店が閉まるそうだ。学生の頃、あの店ではずいぶん過ぎた酒を
強いられた気がする。まぁ時代だったからね。今では微笑ましい記憶ではある。

池袋の一つ先は雑司ヶ谷まで各駅停車に乗る。
今度の8両編成はブラウンのライン、これぞ営団の車両は有楽町線からの転線組だそうだ。

長いエスカレーターを乗り継ぎ、雨上がりのサンシャイン60を見上げる地上に這い出る。
都電荒川線(さくらトラム)がモーターの唸りを上げてのぞき坂を登って来た。

羽衣をつけ、吉祥果を持ち幼児を抱いた美しい鬼子母神を祀る雑司が谷鬼子母神堂、
安産と子育の神様として広く信仰を集める。当然にカップルや女性、子連れの参詣が多い。

雑司が谷から北参道まで乗車した東急電鉄の新型車両はグリーンのフェイス、
東横線開業90周年を記念した「青ガエル」塗装車両と思われる。沿線の方には懐かしい?

明治通りの地中深く走る副都心線、どの駅も地上に這い出るのに時間がかかる。
北参道の鳥居を潜る、さすがに杜の中の参道はいくぶんの涼しさが期待できる。

深い杜、世の中の雑音が届かない静けさの中に明治神宮はある。夫婦楠が見事だ。

明治神宮前から渋谷までのアンカーは、飯能から走って来た西武鉄道の10両編成。
渋谷は終点とは云え、ほぼ全ての列車は乗客の大半を入替え、東横線に乗り込んでいく。
明治通りの地下深くから、長いエスカレーターを継いで、渋谷の谷底まで這い上がる。
副都心線の旅の終わりは、東京メトロ、総延長195.1kmの旅の終わりでもあるのだ。

東京地下鉄・副都心線 小竹向原~渋谷 11.9km 完乗

RYDEEN / YELLOW MAGIC ORCHESTRA 1980
     


メトロに乗って 約束の5秒前 半蔵門線を完乗!

2020-07-18 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

先週に続いて今日の目的地も渋谷、押上(スカイツリー前)から半蔵門線を旅する。
半蔵門線は北は東武日光線の南栗橋まで、西は東急田園都市線を中央林間まで、
長駆100kmを駆け抜けるなかなかタフなランナーなのだ。

北十間川から眺める下町の東京スカイツリー、川面に映る銀の尖塔が美しい。

押上の3番ホームから折り返しの急行中央林間行きが発車する。
営団時代からの8000系が健在、シルバーの車体にひくパープルの帯が妖艶だ。

3つ目の清澄白河で早速途中下車、江戸名物を求めて「深川釜匠」を訪ねる。
夕暮れを待てずに生ビール、"かにみそ豆腐" をアテに冷えた一杯を楽しむ。

こだわりの出汁で炊き込んだ "深川めし" が運ばれてきた。
あさりとしめじをがふっくらと、刻みネギと海苔を散らして美味しい。

江戸庶民の味を堪能して再び清澄白河、2番手の電車もパープルの10両編成だ。

日本橋三越を潜った電車は、大手町から永田町まで江戸城内堀を半周する。

九段下の駅を降りて 坂道を 人の流れ 追い越して行けば、

勢い余って、光る玉ねぎも追い越して、靖国の杜へ、

終戦の日も近いから、国を護ってくれた尊い先人たちの魂に手を合わせる。

歌舞伎の「てんつつ」が流れるのは半蔵門、国立劇場の最寄り駅だからね。
その国立劇場とR20を挟んで桜田濠が霞ヶ関方面に続いて、江戸城の規模を実感する。

東武線から遠征してきたオレンジのフェイスを見送って表参道駅に降りる。

明治神宮へと続く歩道には、ケヤキ並木の濃緑が往く人にせめてもの日除けを差しかける。

最後のひと区間を走り抜け、パープルの10両編成が渋谷に滑り込んだのは約束の5分前?

ウェーブ通りに紛れ込むと、雑居ビルのロフト的フロアにひっそりと日本酒バーがある。
YATA、八咫?打ちっぱなしのコンクリート壁にスチールの立ち飲みカウンター、
今宵、若いバーテンダー氏のお勧めに素直にしたがってみる。

一杯目は "残草蓬莱"、華やかな香りの槽場直詰生原酒は、愛川町の大矢孝酒造の酒。
山北町、川西屋酒造店が美山錦で醸した辛口の旨酒 "隆" が二杯目のグラスに注がれる。

相模の酒が続いて、初めましての朱のラベルは "車坂 山廃純米"、和歌山の酒だって。
キレの良い酸の酒は、揚げ物や肉料理にも合いそうだな。
梅雨明けの真夏日に、生酒を愉しんだ谷底の街は夕暮て、半蔵門線の旅が終わるのだ。

東京地下鉄・半蔵門線 押上(スカイツリー前)~渋谷 16.8km 完乗 

MajiでKoiする5秒前 / 広末涼子


メトロに乗って 渋谷で5時 銀座線を完乗!

2020-07-11 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

1927年、浅草~上野間で営業開始した日本で最初の地下鉄はもちろん銀座線。
渋谷駅新駅舎完成、開通当初を再現したレトロ車両など、話題に事欠かない旧くて新しい路線ですね。
今回の吞み鉄はそんな銀座線で、東京の名だたる繁華街を巡ってみます。

久しぶりの吾妻橋西詰、スカイツリーと巨大なビールジョッキー、梅雨の晴れ間の「青」が眩しい。
橋の下にはTOKYO CRUISEの乗船場、夕暮れどき、日の出桟橋までの40分は親密になれる魔法の時間と空間、
若い頃にはずいぶんお世話になりました。

そして振り返ると雷門、何時見てもインパクトのある「朱」ではあります。
もはや浅草の風景?人力車を操る屈強な若い車夫たち。その手持無沙汰な様子が、近頃の状況を映します。

冷気に誘われて階段を降りると、そこは銀座線の起点・浅草駅、瑞々しいオレンジの6両編成が停まっていた。
ホームの支柱はことごとく「朱」に塗られ、ここが浅草だと意識させてくれます。

稲荷町で降りて台東区役所裏までぶらり、ここには東京メトロ・上野検車区がある。
ここは、一生の殆どを穴蔵で働き、暮らすオレンジの車両たちが、唯一日を浴びる場所なのです。

デパ地下(松坂屋)に直結する上野広小路を降る。この辺りは繁華街と下町が混在する魅惑のエリア。
上野3丁目交差点から路地を入ると「燕湯」が白い暖簾が提げています。

11:30の開店に合わせて、名店・井泉に飛び込む。とりあえず男は黙ってキリンラガーを呷る。
「お箸できれるやわらかいとんかつ」が、創業明治5年(1930年)のこの店のキャッチフレーズ。
やわらかくしたのは、一説には花柳界の芸者衆が小さな口でも食べ易すくするためだとか。

銀座線、丸ノ内線、日比谷線と東京オリンピックまでに開通した3路線が一堂に会す数寄屋橋から銀座四丁目。
銀座という街が他の追従を許さない東京、いや日本を代表する繁華街であったことの証左と云えるでしょう。

銀座駅1番ホームにやって来た一つ目の電車は、1927年の開通当初から40年ほど運行していた1000形の復刻版。
木目調の壁と扉、真鍮色の手すり、涙型の吊手、室内側面予備灯など、細部にまでこだわりが見えます。

予備灯は、集電用の第三軌条が途切れる無電区間で室内灯が消えると、代わりにバッテリーで点灯しました。
これ、なんとなく覚えがあるんだな。上京したばかりの学生時代には未だ走っていたはずです。

外苑前で降りると、青山2丁目交差点から聖徳記念絵画館に向かっていちょう並木が延びている。
野球やラグビー観戦の後、シャンパンゴールドの並木の下を歩いた覚えがあるな。

オレンジの6両編成は浅草から30分、チューブ型の渋谷駅に終着する。今では室内灯が消えることはない。
ちょうど渋谷で5時、チューブから見上げる空は明るいけれど、そろそろ気の利いた酒場が暖簾を提げる頃。

     

学生時代はあまり縁がなかった渋谷、道玄坂交差点からしぶや百軒店へと彷徨ってみます。
っと、路地が雑居ビルに塞がれる手前、青竹の生垣に囲まれて「立吞み なぎ」が現れた。

福島の地酒を揃えた店だから、今日は会津の夏限定酒を択んでみる。
一杯目の "天明中取り参号" は会津坂下の酒、微かに柑橘系、清々しいキレの無濾過生原酒。
アテは "九条ねぎとしめじと厚揚げ炒め" をポン酢風味で。
マスター氏は、三つ口とフライパンを操って、丁寧に素早く美味いひと皿を仕上げていく。

二杯目は "会津中将 夏限定吟醸酒" 、あさがおと金魚のラベルが爽やかでしょう。 
ほんのり甘く、さらっとした吞み口はきゅっと冷やして飲む酒、本当はアテは要らないかも。
カウンター越しに供された "天然本まぐろユッケ" が絶品、この店のアテはレベル高っ。
さてと、ちょっぴり気分が良くなる頃、谷間の街にも夜の帳が下りて銀座線の旅が終わるのです。

東京地下鉄・銀座線 浅草~銀座 14.3km 完乗

渋谷で5時 / 鈴木雅之 X 菊池桃子


メトロに乗って 荻窪辺りのせんべろで 丸ノ内線を完乗!

2020-01-02 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

 夜になると表情を一変する東京。浮かび上がる赤レンガに青い月が共演する。
東京駅のライトアップ、仲通のイルミネーション、やはり丸の内は美しい。

銀座線に遅れること27年、丸ノ内線が走り出したのは戦後なんですね。
荻窪、方南町へと全線開業するのは、オリンピックを控えた1962年のこと。
この辺りの情景は浅田次郎の小説に描かれている。

西口五差路からEchikaに潜る。普段利用しない者には、あまりにも広く複雑な空間だ。

辿りついた2番ホームから荻窪行きに乗車する。赤いラインをひいた6両編成だ。
東京の主要なポイントを繋ぐ路線にしては容量が小さいが、年長の路線なので仕方ない。

 深度の浅い丸ノ内線はところどころで地上に姿を見せる。
東京中心部が台地と谷の上に広がり、変化に富んだ地形であることを教えてくれる。
神田川を赤い丸ノ内線が渡る風景は、幼いころの東京のイメージだった。
きっと、絵本か何かの刷り込みだと思う。

東京メトロでも年長の3路線が交差する銀座駅、冬型の気圧配置の日、東京の空は青い。

新宿の喧騒の手前、ぽかんと緑の異空間が空いている。
初夏や初秋には、シートに本を何冊か、それに缶ビールを持って訪れたい新宿御苑。

 中野坂上に6両編成が滑り込むと、中線に方南町へと道草する3両編成が待っている。

方南町までは3駅6分の寄り道、途中の中野富士見町には電車たちの塒がある。
スカーレットに塗られた丸ノ内線の新型車両に混ざって銀座線のオレンジが見える。
この2色はなかなか相性がいいね。公園の花壇を眺めるような中野車両基地だ。

 中野坂上に戻って荻窪へのラストスパートは、先ほど見かけたスカーレットの6両編成。
善福寺川沿いに住んでいた学生時代、新宿で呑んだくれたら南阿佐ヶ谷まで乗ったっけ。

想い出に浸る間もなく次は終点の荻窪、青梅街道下の直線は電車も軽快に駆けてきた。
16時半を回ってすでに日は西に没して、いい塩梅に暮れてきた。

 南口仲通りを左に折れるとせんべろ界では有名と云う「魚正宗」に灯がともっている。
刺し盛り(orアジフライorハムカツ)+小鉢+ドリンク3杯が、ここのせんべろセット。
一見さんとしては、素直にこのシステムにのってみる。ただし日本酒はNGだ。

外は寒いけれど、やはり一杯目は生ビール。
刺身は、ヒラメ、〆サバ、タコの二切れ三種、少量だけどいいところを切っている。

とろけるチーズをのせてバーナーで炙った "ぽてさらチーズ焼き"、これなかなかの逸品。
井川遥がステアしてくれたと想像を巡らせ "角ハイボール"、レモンのちょいしぼは無い。

 

"赤エビを塩焼き" を剥きながら、三杯目を "男梅サワー" で〆る。
カウンターの兄さんが一寸つっけんどんだけど、丁寧な仕事ぶりでアテも美味しい。
こういう店はある程度通わないと愉しく飲ませてもらえないかな。いい経験になった。
レトロ調の赤い丸窓電車に乗って、再た飲みに行ってみようか。

東京地下鉄・丸ノ内線 池袋~荻窪 24.2km
      方南町線 中野坂上~方南町 3.2km 完乗

TOKIO / 沢田研二 1980


メトロに乗って 師も走る年の暮れ 日比谷線を完乗!

2019-12-29 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

 中目黒にメタリックシルバーの7両編成が入線してくる。なかなか渋いね。
おそらく今年最後の呑み鉄は、都心をふらふら彷徨って北千住に抜ける日比谷線の旅。

     

神谷町駅から国道1号を南下する。飯倉交差点を右に折れると見上げるような東京タワー。
永井坂からのタワーは冬の青空を突き、圧倒的な存在感で視界を覆っている。

神谷町から乗車したのは赤が基調の7両編成、相互乗り入れする東武の車両だ。

路線名になっている日比谷で途中下車、交差点から大手町方面を見通す。

日比谷公園をぶらり散歩して松本楼、ここに入るのも、カレーをいただくのも初めて。
"彩り野菜カレー" は、深みとコクとほんのり辛いカレーに野菜の甘さが絶妙に美味しい。

3つ進んで築地で途中下車、市場が移転した後の場外をぶらりと巡る。

築地本願寺は、古代インド仏教様式を模した特徴的な外観が存在感がある。
そのオリエンタルな雰囲気は、仏教がシルクロードを経て伝わったルーツを感じさせる。

入谷駅には「三富」の開店に併せて17:00前に途中下車。上野在勤時代の馴染みの店だ。

但馬の酒 "香住鶴" は旨みありコクありの生酛純米、どんな肴にも合う。
アテは "里いも揚出" をあわせる。熱々の餡とやわらかな里いもが冷えた身体に美味しい。

今宵は生酛純米に拘って、二杯目は二本松の "大七"、豊かなコクと旨味の酒。
コリコリと歯応え良い "軟骨入りつくね" は黄身を絡めてマイルドにいただきます。

ほろ酔いで入谷の店を出たら残るは3駅、4度メタリックシルバーの7両編成に乗る。
三ノ輪を出た車両は、暮れた地上に這い出て、さらに高架に上って5番線に滑り込んだ。
日比谷線の旅はここに終わる。北千住は芭蕉矢立初めの地、みちのくへの出立点である。
そして7両編成も乗務員を乗せ換え、さらに東武線を北上して往く。どうか素敵な旅を。

東京地下鉄・日比谷線 中目黒~北千住 20.3km 完乗

 

DESTINY / 松任谷由実 1979


メトロに乗って 秋から冬へ都心を移ろう 南北線を完乗!

2019-12-01 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

 降り注ぐようなシャンパンゴールドは、東京大学本郷キャンパス。
正門から安田講堂まで続くイチョウ並木が黄金に輝く美しさに見惚れてしまう。 

朱漆が若く華やかな「赤門」は旧加賀藩上屋敷の表御門、中山道にその豪壮な姿を見る。
地下鉄が通じて便は良くなったけど、受験生にとっては最も道程が遠く険しい学府だ。 

 全線開業は2000年、東京メトロ・南北線は比較的若い路線だ。
埼玉高速鉄道から直通するエメラルドグリーンの6両編成に赤羽岩淵から乗車する。 

 東大前に続いて後楽園に途中下車、地上に立派な駅舎が建っている。

東京に残る深山幽谷「小石川後楽園」は、水戸徳川家上屋敷の回遊式築山泉水庭園。
ビル群やDOMEを背景に、ハゼノキの「赤」やイロハモミジの「紅」が美しい。 

渡月橋から西に目を遣ると、紅葉が通天橋の「朱」を際立たせている。

 三度目の途中下車は溜池山王、首相官邸や議員会館を見上げる低地を外堀通りが貫く。
赤坂見附から虎ノ門に至る外堀を兼ねた上水源「溜池」が地名の起こりと云う。

駅から赤坂見附方面に戻ると、皇城の鎮「日枝神社」が小高い丘に鎮座している。
境内には巨大な碁盤が置かれ、晴れ着姿の子どもたちが祖父母の求めにポーズをとる。 

 溜池山王を出たエメラルドグリーンの6両編成は白金高輪で三田線と合流して目黒へ。
ここまで40分の南北線の旅だけど、電車はこのまま東急・目黒線を経て日吉まで走る。 

 

 目黒駅西口の横丁風雑居ビル、せんべろ的居酒屋「蔵」のちょうちんに「赤」が灯る。
14:00開店の有難いこの店、すでに隣りの青年はカウンターにうつ伏している。

 

こんな感じの酒場だから、基本に忠実に "ポテトサラダ" と "マグロ納豆" あたりを注文。
コの字カウンターで、一杯目は "サッポロ生" をぐびりとやる。  

 

二杯目からはご常連氏に倣ってホッピーを飲む。寒い季節になると "肉豆腐" が嬉しい。 
季節移ろう都心を縦断して、さまざまな「黄」や「赤」を感じた南北線の旅なのだ。

東京地下鉄・南北線 赤羽岩淵~目黒 21.3km 完乗 

ミス・ファイン / 石川ひとみ 1979


メトロに乗って 今宵、谷根千の日本酒バルで 千代田線を完乗!

2019-11-23 | 呑み鉄放浪記 地下鉄編

 綾瀬駅の中線からエメラルドグリーンの10両が滑り出す。今日は千代田線を彷徨う。
千代田線は日比谷線の混雑緩和を目的としたバイパス路線として建設されたらしい。
改めて路線図を眺めると、なるほど腑に落ちる。 

千代田線には通称北綾瀬線という支線がある。
綾瀬駅から車両基地までの回送線を短い3両編成がシャトルしているのだ。
この日は「メトロファミリーパーク in AYASE」が開催され、親子連れで賑わっていた。 

先ずは根津に途中下車。
谷中銀座をはじめ谷根千(やねせん)は、昔ながらの東京の下町風情が味わえる。
とにかく人・人・人で、オーバーツリズム気味だ。呑み人はお印に根津神社を訪ねた。 

 常磐線から乗り入れて来たJRの車両に乗って、今度は二重橋で途中下車する。 

先週は「祝賀御列の儀」に沸いた皇居前広場もすでに平静を取り戻して、
いりとりどりのランナーたちが、まるで熱帯魚のように回游していく。 

日比谷、霞が関を巡ったエメラルドグリーンの10両はゆっくりと国会議事堂前へ。
週末、この辺りの駅はと云うといたって静かなものだ。  

永田町の高台に、美しいみかげ石の「白亜の殿堂」が秋晴に映えている。 

赤坂、乃木坂、表参道と瀟洒な街並みを抜けて明治神宮前、久しぶりに神宮の杜を歩く。 

 

鳥居を潜ると右手に201個の菰樽が並ぶ。外国人観光客にはフォトジェニックな場所だ。
左手にはワイン樽、どれもブルゴーニュの醸造家から奉納されたものだ。 

本日は、お日柄もよく、本殿の前では巫女に導かれて神前へと進む列に遭遇。
朱傘を差掛けられた白無垢の花嫁が美しい。どうかお幸せに。 

明治神宮前を出ると、終点の代々木上原まではひと駅を挟んで4分の乗車。
小田急線の複線をこじ開ける様に這い出たエメラルドグリーンの10両編成。
背景に新宿のスカイスクレイパーが秋の青を突いている。 

 

日が傾いて根津に戻って来た。「坂ノ下ノオリゼ」 は呑み人に不釣り合いな日本酒バル。
一杯目は香芝の "大倉 山廃特別純米秋上がり"、今宵は奈良の酒でいくと決めた。
"和の三点盛り" は、鮪の生姜煮、白和え、ローストビーフと気が利いたラインナップ。  

 

二杯目の "みむろ杉 純米吟醸 山田錦" は瑞々しい味わい、三輪の酒だね。
ゆず七味を振って、"たぬき豆腐" が美味い。これは家でもできそうだ。
そして "風の森 愛山純米 真中採り"、果実味いっぱいのフレッシュな味わいで爽やに〆る。
まだまだいい店がありそうな谷根千、On the way home、また探検してみよう。

東京地下鉄・千代田線 北綾瀬~代々木上原 30.4km 完乗  

 

大都会 / クリスタルキング 1979