択んだのは佐久の酒 “千曲錦”、ふくよかでコクがあるやや甘の濃醇な酒は寒仕込純米酒。
15銘柄ほど並ぶ地酒のラインナップから、どうしても信州の銘柄が気になってしまう。
どれも550円だから、かなりコストパフォーマンスがいいでしょ。
アテは “青唐と納豆のオムレツ”、青唐辛子がピリリと効いてこれは日本酒に合うよね。
このブランドは蒲田や五反田といった激戦地で揉まれているから、けっこう洗練された大衆酒場と云える。
大衆酒場の実力は “ハムカツ” や “ポテトサラダ” に出るよね。
厚切りの “ハムカツ” は見事なほどに薄ぅくカラッと揚げた衣を纏って、和辛子とソースで美味しい。
昭和な少年時代を過ごしたボクとしては、この厚さは贈答用のハムを想起させて贅沢感がある。
“ポテサラ” はそこそこの出来だけど、散歩の仔犬の落し物のような焼き明太子を乗せるのはアイディアだ。
混ぜるのではなくて、お好みで齧りながらポテサラを抓むのは、味変ができて楽しいでしょう。
中山道を往くなら、佐久から和田峠、塩尻峠、鳥居峠と難所を越えて “木曽路” はお六櫛で有名な薮原の酒。
まろやかでコクのある特別純米はオヤジの晩酌酒、大抵の料理にはそつなく寄り添ってくれる。
それならばと、生姜が効いた出汁の “湯豆腐” に “塩むすび” をひとつ添えて締めにしよう。
昔ながらのテイストを残して、ちょっと気軽で洒落た空間に仕上げた大衆酒場、
「酒と飯」と抜いた白い提燈が、今宵もこの路地裏で仕事帰りの老若男女を誘っているのだ。
<40年前に街で流れたJ-POP>
ブルージン・ピエロ 稲垣潤一 1985