ガタゴトと1番ホームに2両編成が入ってきた。大きく「いい電」のヘッドマークを付けている。
フロントのカラーリングは葡萄色と桃色だろうか。
今日は車窓に果樹畑を眺めながら、東北の古湯をめざして福島交通飯坂線を旅する。
駅ビルの狭間で起点駅の風格もなければ旅情もない福島駅だけれど、
むしろ600m先の曽根田駅は開業当時の姿にお色直しをして風格がある。
駅舎には自家焙煎コーヒーと手作りケーキの瀟洒なカフェが入っていて、
地元のマダムたちがちょっと贅沢な時間を過ごしている。って雰囲気かな。
2両編成のいい電は、県道3号線に沿って北上していく。
この1000系電車は2017年以降東急東横線からやってきた。
面影が感じられないのは、全てが中間車両を改造をしたものであるかららしい。
路線延長半ばの桜水駅には車両基地が併設されている。
側線に並んでいる顔ぶれを見ると、すでに全てがこの1000系に置き換わっているようだ。
そしてありましたよ1編成、赤とアイボリーの伝統的なカラーに塗られた車両が。
都会的なシルバー基調もいいけれど、福島交通らしいこの電車がいいね。
運転席への入口には温泉暖簾がかかっている。若い車掌氏がのれんを潜って出入りする光景は微笑ましい。
2両編成のいい電が、ガーダーを鳴らして小川鉄橋を渡るころには温泉街が見えてくる。
終点の飯坂温泉駅、線路は1本で両側にホームがあって、降車ホームと乗車ホームを区別している。
東京モノレールの浜松町のような、都会的センスと効率的な運用を感じさせる。
ホームは半地下のようになっていて、階段を上がると駅舎がある。
「ようこそ!飯坂温泉へ」の広告柱はグルメ情報が満載だ。
そしてこの地にも寄っていたのは、日本史上最高の俳諧師のご一行様だ。
ところが苫屋のような宿に泊まったご一行、蚤と蚊に悩まされたようで、好意的な感想を記していない。
温泉街には8つの共同浴場がある。鯖湖湯(さばこゆ)は日本最古の木造建築共同浴場らしい。
平成の世になって、湯船は御影石に改築されたけど、ヒバ材の香りに包まれて至福の時を過ごせる。
だなんてとんでもない。何せ泉温は51.0度だから水遊び否熱湯遊びが精一杯。
意を決して肩まで浸かる。湯舟の中で動いたら熱くて耐えられそうもないので、じっと固まる。
いいところ30秒、オヤジの肌も福島の「はなもも」のように染まるのだ。
鯖湖湯の近く、小さな旅館の勝手口に「蕎麦」の暖簾が掛かっているから、つい吸い込まれる。
メディアにも取り上げられているらしい古民家風の内装の「二八更科蕎麦 そばひろ」なのだ。
火照った身体にキンキンに冷えた “一番搾り” を流し込んで、一息ついた気になる。
アテは “酒つまみ三種” を択んで、あれっ小鉢が四つ、まぁ良い。
そして “冷しラジ玉そば” が登場、薬味に任せてほどよいコシの二八をズズッと啜る。んっいいね。
半ばしたらラジウム温泉玉子を割ってマイルドに、最後のつゆまで愉しんで、美味しい。
いい電の「1日フリーきっぷ」は、共同浴場入浴券がついて1,000円のお得なきっぷ。
熱い湯に浸かって、冷たいビールを呷って、美味い蕎麦を啜って、いい休日になったね。
さてっ新幹線に乗車する前に “円盤餃子” でもう一杯やりましょうか。
福島交通 飯坂線 福島〜飯坂温泉 9.2km 完乗!
<40年前に街で流れたJ-POP>
夏ざかりほの字組 / Toshi & Naoko 1985