旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

円盤餃子と政宗公とMr. Summer Time 東北本線を往く!

2023-07-29 | 呑み鉄放浪記

ゴーっと音を立てて5両編成が那珂川鉄橋を渡ってやってきた。
青と白のツートン、常磐快速と同じ形式が走るのは、黒磯駅構内で直流から交流に電化方式が変わるからだ。

休日06:30の東京駅、もう日が高いのに閑散とした丸の内、夢を見ているかのようなギャップだ。
この朝もすでに30度近い、梅雨が明け、太平洋高気圧とともに「青春18きっぷ」のシーズンがやってきた。

06:51発の1522Eがこの旅のトップランナー、東京始発の宇都宮行きはこの列車が唯一。
東北へと旅立つ各駅停車の旅には相応しい列車だと思う。

轟音を立てて渡る利根川鉄橋を合図に、まずは1本目の “こだわりレモンサワー” を開ける。
JR東日本の呑み潰しも二周目に入ったから、今まで以上に呑んで喰らって、ゆるりと旅をしたいものだ。

10番線に2番手ランナーの641Mが待っている。2022年に投入されたE131系という車両だ。
快適性やバリアフリーに優れた車両だけど、ロングシートという一点が、呑む旅を愛するボクには不満だ。

乗り換え時間の30分、7・8番ホームの「野州そば」で “かき揚げ天玉” をズズッと啜る。
東北本線のホームにある駅そばとしては、早くもここが北限ではないかなぁと記憶を巡らす。
これぞ旅の醍醐味と思う反面、おばちゃんの好感度がね、旅情の演出には程遠い。
これではコンコースにあるファストフード店然とした店には敵わないよ。

3番手の4131Mは黒磯から新白河まで約20分少々の短距離ライナーだ。
どうも直流、交流の両方を走れる電車ってのはかなり高価なものらしい。
そこで交直切替のあるこの区間を、たぶん2編成程度が忙しなくシャトルしているのだと思う。

みちのくの玄関白河駅は、西洋がわらをのせた風格ある木造洋風建築だ。
2015年に東北を呑み鉄旅した時には、待合室で「行くぜ、東北」のポスター、木村文乃にやられた。

駅構内の地下道を潜ると白河小峰城、戊辰戦争白河口の戦いの舞台である。
奥州関門の名城には復元した三重櫓、関ヶ原の役以降の城は大天守を持たず、三重櫓がこれに代わった。

5番手の2133Mは郡山までを繋ぐ。ホーム上には188kmのポストが突き刺さっている。
さあここから「行くぜ、東北」の旅、どんな酒肴に巡り会えるだろうか。

13:27、福島着。駅構内の円盤餃子の名店には長蛇の列ができている。
でも構わない。ボクは暑い中を15分歩いて円盤餃子元祖の店へと向かう。

円盤の焼き上がりにはだいたい15分、冷たい生ビールと枝豆で待つ時間も楽しい。
福島稲荷神社近くで暖簾を掲げる「満腹」は、週末にはお昼から営業している。

一杯目のジョッキが空くころ、こんがりきつね色の円盤がボクの卓にも飛来する。
白菜ベースの餡は案外あっさりと美味しくて、苦戦すると思われた30個をぺろりといただいた。
もちろん二杯目のジョッキの助けは借りてなのだが、餃ビーは無敵ですね。

6番手の1183Mは白石行き、とにかく細かく繋がないと先に進めない東北本線の旅。
時間帯も関係するのかも知れないけど、とうとう2両編成、しかも旅情のないロングシートには残念。

県境を越えて30分の乗車で白石駅、市の玄関を1.5km離れた白石蔵王駅に譲ってちょっと寂しげ。
この駅に降り立ったら “白石温麺(うーめん)” をいただこうと思っていたけれど、まだお腹が空かない。

白石城は伊達藩の支城、一国一城令の例外として幕末まで至る。白河小峰城と同様に三重櫓が天守に代わる。
それにしても白石城を一枚収めるための往復2kmに汗が吹き出す夏の午後だ。

7番手の459Mは比較的新しいE721系の6両編成、さすがに仙台地区には主力の車両を投入している。
この車両、呑み鉄には嬉しいセミクロスシート、さらにドリンクテーブルまで付いている。

っで、クーラーから吹き出す冷気を全身に浴びながら、カポッとワンカップを開ける。先頭車両は貸切状態。
コクと旨みのこの本醸造は南会津の酒、沿線の酒ではない、さらにここはすでに宮城だけど、ご愛嬌だ。

459Mは駅毎に乗客を増やして約50分、貸切だった車両はいつしか満員になって仙台駅に終着した。
東北一の大都市・仙台のポテンシャルを十分に実感するところになる。

仙台城跡まで登って来た。いつものことながら街を見下ろす政宗公は逆光になる。
反り返る石垣越しの仙台市街地と瀬音を立てる広瀬川、なるほど杜の都は緑が豊かだ。

文化横丁に壱弐参(いろは)横丁、週末は案外休みの店が多い。名店「源氏」も閉まっている。
っで今宵は一番町南町通りの「横丁三七三(みなみ)」へ、居心地の良いお店でした。

お店の推し “肉厚のチーズハムカツ” に “枝豆” も並べて、たまにはホッピーではじめよう。
日本酒の品書には華やかに夏酒が並んで、これは楽しく呑めそうではある。

華やかな香りとほのかな酸味の “Mr. Summer Time” は、宮寒梅の夏限定純米吟醸。
懐かしいサーカスのハーモニーを聴きながら夏の想い出で呑みたい一杯、少し時期が早かったかなぁ。

これは美味い “クリームチーズのチンジャ和え” を突っつきながら、夏酒をちびりちびり。
カウンター越しの囲炉裏でボクの “大トロイワシ” がパチパチと音を立てて愉しい。

二杯目は港町石巻 “日高見” の夏限定酒、漁師の町の酒だから魚に合わない訳がない。
レモンをたっぷり絞って、脂がのったイワシを崩しながら、キレの良い爽やかな純米吟醸が美味しい。
〆には “仙台牛炙り寿司” 二貫を口に放り込んで、一番町の夜は更けゆくのだ。

東北本線 東京〜仙台 351.8km

Mr. サマータイム / サーカス 1978


大人の休日 銚子港で旬の刺身定食を

2023-07-26 | 日記・エッセイ・コラム

利根川河口を眺める席で銚子漁港に入ってくる漁船の連なりを眺めている。
この時間に戻ってくる船はどんな魚を水揚げするのだろうか。ほどなくランチの膳が運ばれてくる。
“ほうぼう”、“かれい”、“かわはぎ” と白身が美味しい。ほんとは純米吟醸が欲しいところだ。

ちょっと前の話し、大人の休日の初日、ターゲットにしていた東北地方は梅雨前線が停滞していた。
それではと、ゆっくり始動して、10時過ぎの特急で銚子までランチに出かけることにしよう。

さっきまで追い抜く黄色い電車を数えていた都会の景色は、千葉を過ぎるとあっという間に田園風景に。
空いた平日の車内に、プシュッと SUMMER PILS を開ける音が案外大きく響く。

今にも降り出しそうな空の下、銚子漁港まで歩いたら、おっとめざした店は臨時休業。
行き当たりばったりの呑み人には結構起こる小さな事件だ。もう少し歩くか。

ところで予定より先の店まで歩いたから、目論んでいた帰りの特急が出発してしまった。これが2つ目の事件。
甲子正宗のチーバカップを舐めながら、鈍行列車を乗り継いで帰りますか。

<40年前に街で流れたJ-POP>
そんなヒロシに騙されて / 高田みずえ 1983


風を感じて! 天空の湖とZとノゾリカンゾウと

2023-07-22 | 単車でGO!

連休最終日も猛暑日になると昨夜のニュースが伝えていた。
それならば一度訪ねてみたかった「天空の湖」をめざそうとZを起こす。
北へ向かう高速道路は渋滞もなく、インターチェンジを降りたらR353〜R145をひたすら西へと走らせる。

谷が急に狭まる吾妻峡、っと目の前に巨大な構造物が出現、政権交代した頃に有名になったアレだ。
ひんやりとした堤体の中のエレベーターで下に降りる。とにかく大きい。
放水口から勢いよく吐き出された水は狭隘なV字谷を落ちていく。まさにこの場所しかないなぁ。

ふんわりと涼しげに盛り上がった “氷” もベンチに運ぶまですっかり萎れてしまった。
ボクの世代ではまさに「水銀柱がうなぎのぼり」の朝なのだ。

長野原草津口から右に折れてR292、今度はこの道が果てるまで北へ北へと高度を上げていく。
途中、旧太子(おおし)駅でひと休み。ホームやホッパー跡を復元した産業遺構を見ることができる。
終戦の年に開通した国鉄長野原線太子支線(当時は日本鋼管専用線)は、鉄鉱石を京浜工業地帯へと運んだ。

国道番号を示す “おにぎり” が、いつの間にか405に代わっている。センターラインも無くなった。
“アナベル” というのかな?真っ白で玉のような紫陽花が咲いている最果てへの道が美しい。

スッと涼風が渡る。空気が高原のそれに変わった。っと視界は突然に開けるのだ。
2,000m級の山々はなだらかな裾を碧々とした水辺に浸し、その斜面には “ノゾリキスゲ” の橙が揺れている。
まさに「天空の湖」だね。都心からわずか3時間の別世界なのだ。

野反湖には周遊ハイキングコースが整備されている。
初心者〜中級者向けのコースだというから、上信越の山々と可憐な花々を眺めながら歩いたら楽しいだろう。

主演の “ノゾリキスゲ” が気高く美しく、
脇を固める “ハクサンフウロ” の薄紫、“オトギリソウ” の黄色も清々しくキレイだ。

左手に見え隠れする碧い水面を見ながら、Zはシラカバの林を北上する。どこまでも爽やかな高原の道だ。

野反ダムの堤頂でR405は突然に途切れる。ここまでくると天空の湖はさらに碧を深くしている。
ここから落ちる水は中津川となり、ほどなく長野県に入り秋山郷を経て信濃川へ注ぐ。
ここより先はクルマはもちろんZも進めない果てなのだ。

野反湖に上る途中で見つけた「六合 野のや」は山奥にただ一軒のそば処だ。
たいして美味しくないのは分かっていても、ぷはーとノンアルで喉を潤す。これはすでにお約束だ。

そして “きのこ三昧そば” 登場。
まるで小ぶりのキャベツのような “まいたけ天”、塩をふって肉厚でプリプリの食感を楽しむ。
舞茸やしめじがたっぷり入った熱々の汁(胡麻が利いている?) に、打ち立ての二八をつけてズズッと。
んっこれは美味い。辺りを気にせず音を立てて啜ってしまう。ここの蕎麦はお奨めです。

午前中に帰路につく理想的な展開の夏ツーリング、新調したメッシュのジャケットが快適なのだ。

<40年前に街で流れたjazz fusion>
君はハリケーン  / The Square 1983


Biz-Lunch せんや@大塚「あじフライ定食」

2023-07-19 | Biz-Lunch60分1本勝負

電車通りに二坪ばかりの小さな惣菜屋さんがある。店の前には小さな看板に昼の定食の品書きがある。
昼時に列ができているので気になっていた。小さな惣菜売り場の奥、もう一つの引き戸を開けてみる。
カウンター4席、2席と4席の卓が其々ひとつ。落ち着いた小料理屋っぽいお店が隠れていた。

5種類の定食は1,500円単価、おっと今日は散財かなぁと一瞬思ったけど、なになにその価値十分の定食だ。
択んだのは “あじフライ定食”、3つの小鉢と赤だしのシジミの味噌汁が嬉しい。

まずはあったかご飯を4種盛りのお刺身でいただく。プリッと “ホタテ” が美味しい。
二枚の “あじフライ” は、ふっくら肉厚がサクサクの衣に包まれてなかなかの逸品です。
“ナスの揚げ浸し” で箸を休めたら、ご飯を半分だけお代わりする。
たっぷり山葵を溶いた醤油を垂らして小さな “しらす丼” で〆る。

電車通りに美味しい手札を見つけて、今日も収穫の大塚ランチなのだ。

あいつの部屋には男がいる / 吉田拓郎 1983


大樹

2023-07-15 | 日記・エッセイ・コラム

会津若松駅で東武鉄道の「大樹」を見かけました。
まだニュースリリースはありませんが、いずれ会津盆地まで営業運転するのでしょうか。
東武鬼怒川線から野岩鉄道〜会津鉄道〜只見線を長駆会津若松までやってきたら、
ましてC11が牽引してきて「SLばんえつ物語」のC57と並んだら、
なんだか鉄道ファンならずともワクワクしますね。

只見線の5番ホームにやってきたら10名ほどのカメラを構えたファンがシャッターを切っています。
「試」のヘッドマーク(試運転の意味?)をつけたディーゼル機関車がターゲットのようです。
なんだか北斗星カラーの機関車と3両の客車ですが、鉄分の足りないボクにはわかりません。

連結部分に回ってみると、こちらには「大樹」のヘッドーマーク。
なるほど東武鉄道の車両ですね。

ほどなくディーゼル機関車は切り離されて、単機、喜多方方面に走り去ります。
取り残されたブルートレインっぽい客車には、やはり「大樹」の幕が誇らしげに掲げてあります。

そうこうしているうちにエンジンを唸らせて、一本奥の機回し線にDE10 1109号機が戻ってきます。
こうなると構内踏切は鳴りっぱなし、市道には車の列ができているね。

小走りに改札を出て踏切までやってくると、ちょうどDE10が3度目の方向転換をしてバックしてきました。
っで「大樹」のヘッドマークが先頭に収まって、パチりと一枚。これから下今市まで戻ります。
ニュースリリースが楽しみですね。会津で拾ったちょっぴり鉄ネタです。

ホワット・ア・フィーリング / アイリーン・キャラ 1983


旅の途中の酒場探訪 浦和「旬菜料理でんご」

2023-07-12 | 日記・エッセイ・コラム

旧中山道と埼玉県庁官舎の裏門をつなぐ道だから「裏門通り」ってこの街では親しみを込めて呼称される。
賑やかな商店と飲食店が並ぶタイル張りの通りは、西に向かうにつれ徐々に閑静な雰囲気に変わっていく。
酒場詩人も訪れた焼き鳥の名店「弁慶」を過ぎた辺りにその店はある。県庁まではあと僅かだ。

“枝豆” に塩で焼いてもらった “つくね串” と “鴨ネギ串” を並べて生ビールで始める。

盛り合わせは、イサキ、カツオ、アジ、平貝、金目鯛を並べて鮮やか。
日本酒は西の夏酒をテーマに、まずは愛媛の “石鎚 吟醸酒 夏吟”、香り高いシャープな酒だ。

瀬戸内海を渡って山口は美祢の “大嶺3粒 夏純かすみ生酒”、甘酸っぱい香りで爽やかな夏酒が、
刻み海苔をたっぷりのせて、水菜とカリカリの “じゃこサラダ” をアテに美味しい。

グラタン風の一皿はなんだか忘れてしまった。三杯目は福岡の “三井の寿 夏吟醸チカーラ” を。
セミのラベルが愛らしい夏酒は、リンゴ酸の爽やかな酸味と優しい甘みが同居した清涼感ある純米吟醸が旨い。

暖簾の外はようやく暗くなってきたね。夏酒に酔いしれて、浦和の街に夜の帳が下りるのだ。

<40年前に街で流れたAmerican-POPS>
Every Breath You Take / The Police 1983


鶴ヶ城とみそ田楽と会津中将と 只見線を完乗!

2023-07-08 | 呑み鉄放浪記

13:05発 小出行き427D、入線10分前に来たけれどすでに結構な人数が並んでいた。
満を持しての只見線で呑む旅に発つ。この旅を終えたら「祝・JR東日本を完乗!」なのだ。

鶴ヶ城を意識した会津若松駅は白壁に赤瓦を乗せた城郭風になっている。
車寄せには白虎隊の若き隊士と赤べこが訪れる旅人を出迎えて、会津の旅情を掻き立てる。

只見線の会津若松〜七日町〜西若松の区間は会津鉄道が乗り入れてくる。
レトロな七日町駅にちょうど鬼怒川温泉からのAIZUマウントエクスプレスが入ってきた。

会津若松観光の中心になる七日町通りを歩いてみる。
寛政六年創業の老舗、鶴乃江酒造の重厚な蔵が印象的、ここはお気に入りの “会津中将” を醸している。

もはやレポートの必要もない難攻不落の名城「鶴ヶ城」の層塔型五層天守が空を突く。
眩しいほどに白い城壁、夏の陽を照り返す赤瓦、青空に雄々しく映えている。

七日町通りに戻ったら、これまた天保五年創業の満田屋を訪ねる。この味噌蔵で “みそ田楽” をいただくのだ。
ぐい呑みに注がれた辛口の “会津中将” をお迎えにいって、目の前の囲炉裏で炙られる田楽を待つのが愉しい。

冷たい “ところてん” の喉越しを楽しむうちに、先ずは “こんにゃく” が2本、柚子みそ甘みそを纏って登場。
続いて、豆腐生揚げ、おもち、しんごろう餅、里いも、身欠にしん、って辛口の酒の肴が美味い。

キハE120形+キハ110系の混成2両編成は、会津盆地の西端を舐めるように会津坂下まで北上、
只見川と出会ったら針路を南西に一転、川を右に左に絡めながら、一緒になって蛇行してゆく。

寄り添う只見川は、ある時は渓谷となって、
ときには満々と湛えたダム湖となって、呑み人の目を楽しませてくれる。

混成2両のキハはやがて旅の折り返しとなる会津川口駅に辿り着く。ここでなんと30分の交換待ち。
ここから車で10分ほどの玉梨温泉にも浸かってみたいし、名物カツカレーラーメンも食べたい。
でも次の列車は3時間半後だからね、お楽しみはZで走ってきた時にしようか。

谷に覆い被さる濃い緑はすでに真夏のそれ、灼けた2本のレールがどこまでも延びている。

真夏日にもかかわらず、都会と違って心穏やかなのは、目に優しい緑とひんやりとした川風のせいだろうか。

ところで会津川口で幾らかの降車客があったので、呑み人はボックスシートに席をえた。
然らばっとショルダーからマイ猪口を取り出して、会津の酒 “末廣” のスクリューキャップを開ける。
酸味と甘味が相まった山廃純米をちびりちびり呑みながら、車窓に流れる雲を追いかけている。

只見駅では案山子の歓迎を受ける。フラガールと言いながらチャイナ服を纏って、いずれにせよ艶やかだね。
ところで只見は福島県側の最後の駅、ちょっと長めの停車で乗務員が交代した。
ここからは六十里越トンネル(6,359m)が貫いて、約20キロ所要30分、県境を越える旅となる。

トンネルの暗闇に少しばかりうとうとしていた様だ。
気がつくと車窓の川は渓流となり、流れは進行方向と一緒になっている。かなりの下り勾配を感じる。
ほどなく停車した大白川は新潟県の駅、たった1両の会津若松行きが行き違いを待っていた。

ここから終点の小出までは約40分、混成2両編成は西日を追いかけるように、田圃の中を滑り降りていく。

独り「はんばぎぬぎ」の店は決めてある。4月にふらりと立ち寄った粋なそば処なのだ。
大将にお借りした団扇を扇ぎながら冷たい生ビールを。こんな時に “たこの酢の物” が泣かせる。

地元小出の酒 “緑川” をいただく。新潟の酒らしい淡麗でキレのよい純米が美味しい。
蕎麦前は “じゃこ豆腐” を択ぶ。ラー油とニンニクでカリカリに揚げたじゃこ、食欲を唆る夏のアテだ。

建設会社の営業所長さん、確か介護士のお姉さん、ご常連おふたりに挟まれて今宵は愉快なカウンターだ。
二杯目はお隣小千谷の “長者盛 福壽千歳” を。地元オヤジの晩酌酒のアテに新潟の枝豆が美味しいのだ。

時間も押し迫ったところで “ざる” を一枚、越だけにコシのある田舎そばをズズッと啜って大満足。
所長さんと二人で6合を空けて酔い酔い、女将さんに小出駅まで送っていただき、ご迷惑をお掛けしました。

会津から魚沼へ。旨い酒と肴、よき出会いに恵まれて、記憶に残るJR東日本全路線完乗の宵なのだ。

只見線 会津若松〜小出 135.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
川景色 / 石川セリ 1983


ちまき

2023-07-05 | 日記・エッセイ・コラム

信州の妹から小さな冷蔵便が届いた。
いそいそと開くとふた房の “ちまき” が詰まっている。

北信濃から越後のそれはシンプルで素朴な味わいの “三角ちまき” できな粉をかけていただく。
一説には戦国武将の上杉謙信が戦の際の携行食として考案したとも言われる。

思いがけず手にしたお袋の味、もう10数年ぶりになるのかな。
あの頃は決して好んで食べたりしなかったけど、
今となっては、たっぷり “きな粉” を付けて美味しい。
懐かしい味と思い出を、どうもありがとう。

千曲川 / サム・テイラー


マジックタイムの商店街と一白水成と水芭蕉と いづみ野線・新横浜線を完乗!

2023-07-01 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

いずみ中央駅への勾配を駆け下りてくるのは東急電鉄の5000系電車。
2023.3.18のダイヤ改正で相鉄線⇔東急線が相互乗り入れを開始、相模鉄道は念願の都心乗り入れを実現した。
っで、いずみ野線は様々な鉄道会社の車両が入り乱れて賑やかなことになっている。

かなちゅうの黄色いボディーが存在感を示すのは湘南台駅、なんとも響きが良いね。
1990年代、慶應義塾の湘南キャンパス開設、いずみ野線とブルーラインの延伸で発展した町だ。
きょうは、相模鉄道いずみ野線、新横浜線に乗って呑みたい。

湘南台の地下から這い出た10両編成は、ブルーラインと袂を分かち、ゆめが丘駅へと上ってきた。
この10両編成、東横線からさらに副都心線に乗り入れて池袋をめざす。

チューブで覆われたような近未来的なゆめが丘駅、大型クレーンが何基も立って夢は育ちつつあるようだ。
反対側には広大な空き地が残っていて、昭和な少年達ならバットとグローブを抱えて集まってきそうである。

やがて池袋行きの10両編成は海老名からやってきた相鉄本線とここ二俣川駅で合流する。
本線といずみ野線が、特急と各駅停車が機能的に連絡をとって、日本の鉄道システムは素晴らしい。

本線といずみ野線を束ねて2区間走ると西谷駅。
進入してきた8両編成は、目黒線を経て南北線に直通する赤羽岩淵行き、これまた東急の車両だ。

横浜へ向かう本線と別れ、地下に潜っていく新たに開業した新横浜線を潰す。
ここを走る電車は東急線を介して、副都心線、南北線、三田線、東武東上線、埼玉高速鉄道へと繋がる。
なんだか頭の整理が追いついて行かないね。

「特急」のサイネージも誇らしげに、追いかけてきたのは目黒線を経て三田線に直通する高島平行き。
この8両編成も東急の車両、3000系かな。相模鉄道を走りながら、ここまで東急の電車にしか乗っていない。

羽沢横浜国大駅で埼京線へと乗り入れるJR線を地上に押し上げたら、
電車は東海道新幹線の真下あたりを走って新横浜駅に滑り込む。っとホームで乗務員交代のセレモニー。
新規開業した路線は、新横浜から北が東急新横浜線、南が相模鉄道新横浜線になる。

西陽が眩しい鶴見川沿いを流離うと、キラキラと日産スタジアムが見えてきた。
新横浜線の開通は間違いなくマリノスサポーターにも大きな恩恵を届けていると思う。
それにしても週末の新横浜はどこの飲み屋も満員御礼、そして圧倒的に若者が多い。

マジックタイムの淡いパープルの空に誘われて、呑み人が降り立ったのは鶴ヶ峰商店街。
カンカン、カンカン、踏切の警報音に追われて鮨居酒屋の引き戸を開ける。入口に提がった杉玉がいい。

「とりあえず生ビール」のアテは “赤いのにタヌキ冷奴” だって。揚げ玉を食べラーと和えている?美味いね。

たぶん初めましての “一白水成” は秋田五城目町の酒、八郎潟の辺りだね。華やかな香りの旨酒だ。
“サーモンハラスとアボガド泪ののっけ寿司”、ってちょっとネーミングが調子に乗りすぎ、でも美味い肴だ。

〆に “あさりと干し海老ボンゴレうどん” だけど、これ案外と日本酒に合いそう。
群馬県川場村の “水芭蕉” は、これまた心地よい吟醸香の純米吟醸は料理を選ばない旨酒なのだ。

見知らぬ商店街に紛れ込んで、思えば遠くへ来たもんだ的な感覚に陥る今宵の一杯でした。
新横浜から乗った最終ランナー、そう言えば今日初めて乗る相模鉄道の車両だ。
えっ浦和美園行き。なんだか 横浜F・マリノス vs 浦和レッズ な路線なんだね。

相模鉄道 いずみ野線 湘南台〜二俣川 11.3km 完乗
相模鉄道 新横浜線 西谷〜新横浜 6.3km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
素敵にシンデレラ・コンプレックス / 郷ひろみ 1983