休みなく働く車両だって暑いだろう。ホースの水を浴びてご機嫌...の様に見える。
ここは知多半島の河和(こうわ)、先週に続いて名古屋まで出張って来た。
愛知県東海市の太田川、名古屋圏以外の方には全く馴染みのない駅だろう。
かなり新しい街なのか、駅はマンションに囲まれている。大学のキャンパスもある様だ。
駅は3層構造になっていて、なんだか京急蒲田に似ている。
分岐する2線の一方が空港へ向かい、一方が半島を南下するところも共通している。
そんな余計なこと考えているところに特急が入線して来た。呑み人は河和線を旅する。
常滑線から分岐してしばらくは高架線、車窓にはびっしりと住宅街が続いている。
スマートな特急は気付かぬうちに半島を斜めにトラバースして三河湾側を南下していく。
車窓の風景が、コンビナートから鄙びた漁港の佇まいに変わるとほどなく終点の河和。
特急で30分、各駅停車で45分ってところだろうか。
特急が到着すると、漏れなく師崎港行きの路線バスが連絡する様だ。
師崎港からは日間賀島、篠島、そして伊良湖へとフェリーか高速船で渡れる。
篠島の名前は、吉田拓郎や長渕剛の名とともに記憶にひっかかる人もいるだろう。
炎天下、ふらふらと海まで歩いてみる。わずか5分の距離に汗が噴き出る。
小さな港があって、どうやら高速船には河和からも乗船できるようだ。
暖簾に染め抜かれたのは南天だろうか、駅へと戻る途中に「さいとう」が在る。
知多半島一と地元で人気の店は、4組10名が順番待ち、カウンターに座ったのは15分後。
中身ジューシーで外はサクサク、"あなご天" をアテに、半田の地酒 "國盛" をいただく。
適度に冷えた端麗辛口が美味い。地元のオヤジが飲む、なんてことはない本醸造だけどね。
さて、河和線を二つ戻ると富貴、小さいながらもなんとも縁起の良い駅名だね。
この小駅に全ての特急が停まるのは、知多新線が分岐するからだ。
知多新線、内海行きの特急が入線してきた。これから半島を横切って伊勢湾側に抜ける。
この線は1980年に、沿線の宅地・観光開発のために建設された新しい路線だ。
沿線の一大リゾート開発を企図した新線の現在は、利用者に比べてオーバースペック。
5駅17分かけて到着した終点内海は2面4線の立派な高架駅になっている。
想像してたより人出があった駅前、今宵ローカル局主催の花火大会があるらしい。
恋の駆け引きをする若いグループの後を歩くこと15分、眼の前にパラソルの花が咲いた。
パームツリーが南国風情を醸す海岸、軽快なMC、流れるラップ、ケバブの匂い。
このシチュエーションに襟付きシャツにカメラ片手のオジさんは浮く。否むしろ怪しい。
「おあとがよろしいようで」
早々に退散した呑み人は、特急のμシートに収まって、ラガーのプルトップを開けるのだ。
名古屋鉄道・河和線 太田川~河和 28.8km
名古屋鉄道・知多新線 富貴~内海 13.9km 完乗
モンロー・ウォーク / 南 佳孝 1979