旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

時の鐘と六軒町一丁目商店と去年の恋 西武新宿線を完乗!

2024-07-28 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

「急行」のLEDも誇らしく、副都心の高層ビル群を背負って、堂々10連の30000系が高田馬場に滑り込む。
4月に池袋線・秩父線で芝桜を観に行ってから3か月、二度目の西武鉄道呑み潰しを新宿線で締める。

新宿線の三叉の槍は、歌舞伎町の入り口で存在感のあるPePe新宿プリンスホテルに突き刺さっている。
青が散る一時期、この沿線で暮らすことがあった呑み人は、何度か初電でアパートに帰った覚えがある。

起点の西武新宿駅から10分、レモンイエローの各駅停車は緩いカーブの新井薬師駅に停車する。
あの頃、友人の下宿をよく訪ねたけれど、実は薬師さまに詣でたことはない。長年の不義理を解消したい。

緑の木漏れ日の中に赤い提燈が印象的な山門を潜って新井薬師梅照院に詣でる。
新田氏に縁ある御本尊は、薬師如来・如意輪観音の二仏一体の尊像と言われ、秘仏となっている。

四半世紀を超えてようやく薬師さまを詣でた後、門前そばならぬ門前の町中華に迷い込む。
玉ちゃんの声に誘われた気もするが、それはさすがに空耳か。

老夫婦が営む店は昼前なのに席が埋まった繁盛ぶり、料理にはどれも美味いに決まっている。っと思う。
シュポンと小母ちゃんが “クラシックラガー” を抜いてくれた。先ずは喉がなるほどに一杯を呷る。
一皿めの “ピータン豆腐” の濃厚とサッパリの共演を味わいつつ、苦味走ったラガーを楽しむのだ。

どうもここ萬来軒の名物メニューらしい “麻婆餃子” を択ぶ。当たりだ。この共演も素晴らしい。
濃厚なひと皿にはさっぱりと “レモンサワー” を合わせて、薬師さまのお陰で美味しい酒肴に巡り合った。

新宿線の旅は続く。ボクが乗るのは相変わらずレモンイエローの各駅停車だ。
この駅は鷺ノ宮だったろうか。乗務員もホッと一息の急行の通過待ち。
このシチュエーションには決まって原田知世の曲を思い出す。
彼の住む町を訪ね指を折って駅を数える彼女、急行の通過待ちがいつももどかしかった。と去年の恋の詩だ。

東村山も所沢も最近呑んだから今回は通過して、やがてレモンイエローの各駅停車は航空公園駅に着く。

駅舎で時を刻む CITIZEN の針は飛行機のプロペラをモチーフにしていて、なかなか秀逸なデザインだ。

振り返る東口駅前広場には、戦後初の国産旅客機 YS11 がエアーニッポンの塗装そのままに展示されている。

所沢航空記念公園は、1911年に開設された日本で最初の飛行場「所沢飛行場」の跡地に整備された。
この「日本の航空発祥の地」に、航空自衛隊入間基地に所属した C46-1A輸送機(天馬) が煌めいている。

所沢からの緩い勾配を駆け上がってきたのは、30000系、急行の本川越行き、この旅のアンカーになる。
急行と表示していながら、田無からは各駅に停まるので、終点までは6駅20分の旅になる。

黒漆喰の壁、屋根には大きな鬼瓦、一番街には重厚な造りの商家が連なる。小粋に人力車が疾走していく。
この情緒あふれる蔵造りの町並みをして、川越は「小江戸」と称される。
西武新宿線の終点本川越駅は、この町並みに最も近い駅だ。

そんな小江戸川越のシンボルが「時の鐘」で、最初のものは寛永年間に川越城主の酒井忠勝が建てた。
現在の鐘楼は明治27年、江戸時代の姿そのままに再建した4代目だそうだ。
鐘の音が小江戸の町に響きわたるのは日に4回、でも聴いた覚えはないなぁ、結構訪ねているのだけれど。

18時の鐘を待てずに向かったのは「六軒町一丁目商店」、すでに賑やかに立ち呑み酒場は営業中。
客層はご同輩というよりも若者が多いしスタッフも同様だ。それでも臆せずにカウンターの一角を占める。

元気なお嬢さんが注いでくれた “生ビール” を片手に小声で乾杯、今宵の一人酒を始めよう。
アテの一番手、申し訳程度のキャベツを敷いて “ハムカツ” が登場、分厚いのが二枚、満足の一品だ。

小皿に山盛りなのは “もやしポン酢”、これは少々手こずりそうだ。
むかし学生街の定食屋の「もやし炒め定食」が、正にモヤシだけを炒めた皿にガッカリしたことがある。
気を取り直して “梅水晶” 、これは満足度の高い一品、日本酒が呑みたくなるね。

でもここ最近、少々酒が過ぎていることを自覚しているから “黒ホッピー” を択ぶ。
アテには “炙りチャーシュー”、ジューシーな叉焼をさっと炙ってレタスにマヨネーズ、言うこと無し。

立ち呑みを楽しむ若者に、脈絡もなく力強い何かを感じた今宵、新宿線を最後に西武鉄道の呑み潰しを完了。

西武鉄道 新宿線 西武新宿〜本川越 47.5km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
どうしてますか / 原田知世 1986


Go!Go!West! 9 駅そば日記 濱そば@大船「冷しねぎだくスタミナそば」

2024-07-24 | 日記・エッセイ・コラム

この日も茹だるような暑さに、ボクは「季節限定メニュー」のタッチパネルを押した。
択んだのは “冷しねぎだくスタミナそば”、たっぷりの刻みネギとドライにんにくを散らした一品だ。
やや硬めにしてもらった麺にぶっかけ汁を絡めて、シャキシャキのネギと、カリッとにんにくの食感がいい。
半分くらい食したら、ラー油を2滴3滴と垂らす。ちょっとヒリヒリするくらいがおいしい。

ところで入口に『つゆが変わりました』のポスター掲示を見つけた。
なんでも、かつてホームで愛された「大船軒」のつゆの提供を受けたそうだ。
ホームの大船軒に通った諸兄は、シンプルに “ざるそば” を択ぶと、懐かしい味をご賞味いただけそうだ。

大船駅3・4番ホームに在った駅そば「大船軒」が撤退してからすでに6年。
南改札と北改札を繋ぐアトレ大船が整備され、FOOD SQUARE が賑わっている。
駅そばは南口に「いろり庵きらく」北口に「濱そば」と辛うじて改札内に2軒が残った格好だけれど、
この FOOD SQUARE に入ることなく寂しい扱いだ。でもやっぱり駅そばはホームが似合うよね。
ホームに降りたら、昨年リニューアルしたE259系「N'EX」が入線してきた。この夏はきっと大活躍だね。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ファースト・デイト / 岡田有希子 1984


昭和な町並みと銀の円盤と醤油焼きそばと 西武山口線・狭山線を完乗!

2024-07-20 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

ゴルフ場の南辺を舐めるように、最大勾配50‰をゴムタイヤを履いた「レオライナー」が下ってきた。
全幅2,380㎜の車両はまるで遊園地の乗り物の様だけど、案内軌条式鉄道といって法律上はれっきとした鉄道だ。

レンガ造りの壁面とドーム屋根、ネオルネッサンス様式の取水塔が多摩湖に映る。
山口線はこの堰堤直下にある多摩湖駅を起点に、西武園ゆうえんちと西武球場を結んで走っている。

多摩湖駅を出て1分、短いトンネルを潜ると西武園ゆうえんちが見えてくる。
電車は多摩湖に沿って走っているはずだけど、水源を守る保安林が繁っているので湖面をみることはない。

西武ゆうえんち駅前には昭和の町並みが広がっている。夕日が丘商店街というらしい。
「活気・元気・熱気がほとばしる、あの日あの頃の昭和」だって、昭和は遠くになりにけりだね。

若い女の子がオート三輪と写真を撮っている。SNSにあげる映える一枚になるのだろうか。
出掛ける前にはこの商店街の大衆食堂で一杯やろうと思ったけど、ここ、有料エリアなんだね。先を急ごう。

西武園ゆうえんち駅を出たレオライナーは、グリーンを右手に見ながら東中峯信号場で上り下りが交換する。
いつしか軌道は下り勾配に変わり、夏の太陽を照り返す巨大な円盤が見えてくると西武球場前駅だ。

躍動感溢れる巨大なライオン像が吠えるベルーナドームには、すでに多くのファンが詰めかけている。
千葉ロッテを迎えてのゲームは18:00試合開始のはずだけど、すでに熱気いっぱいのボールパークなのだ。

旅の後半は狭山線に乗って、西武球場前駅から狭山丘陵を北に向かって降りていく。
1番線に迎えにきてくれた20000系は、エレガントブルーで装った堂々の10両編成。

当然のことながら、この駅の装飾は若き獅子たちに埋め尽くされている。
そしてこの時間帯、到着する列車は10両編成いっぱいのファンを吐き出し、乗り込む乗客は数えるほどだ。

エレガントブルーの10両編成は、35‰という鉄道としては結構な急勾配を慎重に降りていく。
唯一の途中駅である下山口で申し訳程度の乗降があって、やがて大きな左カーブを切って西所沢に終着する。

池袋線にひと駅乗車して所沢、新しく拓けつつある東口を降りると、昼呑みの大衆居酒屋がある。
大衆居酒屋といってもモダンな作りで、この時間帯、草野球を終えたオヤジ達のグループが盛り上がっている。
およそ似つかわしくないお嬢さんが一人で生ビールを呷っていたり、なんだか混沌としている。

それでは負けじと呑み人も生ビール、冷凍庫から登場したキンキンのジョッキーに、赤いダルマがカワイイ。
暑いときはシンプルに “冷奴” がいい。冷えた豆腐を箸で崩しているうちに、汗がひいていく。

続くアテはサッパリと “豚肉の梅照り焼き”、二杯目はHAPPY HOURのメニューから “樽ハイ倶楽部” を。
このアテは案外美味しい。家呑みのメニューに加えよう。ひょっとしてボクでも出来そうだ。

三杯目の “薫香ハイボール” を呑みながら、〆は “ところざわ醤油焼きそば” をいただく。
これっ醤油メーカーと製麺会社の社長の仕掛けた新しいB級グルメらしい。なるほどね。
ニンニクやら生姜が効いた麺に白髪ネギを散らして、これもサッパリした一品、なかなか美味しい。

真夏日の呑み鉄散歩、少しだけ日焼けした顔が昼呑みの痕跡を消して、さあ夕立が来る前に帰ろう。

西武鉄道 山口線 多摩湖~西武球場前 2.8km 完乗
西武鉄道 狭山線 西武球場前~西所沢 4.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
メイン・テーマ /  薬師丸ひろ子 1984


水曜日は家呑み派「葵鶴 純米吟醸 純」

2024-07-17 | 日記・エッセイ・コラム

小さなセラーの隅っこから、深いブルーのボトルが出てきた。これ、兵庫県三木の “葵鶴”。
神戸電鉄粟生線で呑んだ時に仕込んだ酒だから、1年以上寝かせてしまった。ワインじゃあるまいし大丈夫?
羽柴軍が別所長治を包囲した三木合戦の舞台となったこの辺りは、山田錦の日本一の生産地だ。

豚バラの良いところが冷蔵庫にあったから、豆腐としめじと水菜で “豚バラ鍋” にしてもらった。
夏とは言え、鍋ものは手軽でヘルシーで尚且つ日本酒に相性がいい。
もう一回り小さい土鍋では “とうもろこしご飯” が出来上がっていた。
バターを入れずに塩胡椒だけで仕上げると、これもなかなか酒にあう一品になる。

柔らかな香りでさらりとした呑み口の純米吟醸は、特A地区の山田錦100%で醸した「GIはりま認定酒」。
淡麗な酒を差しつ差されつ、鍋をつつきながら、ふたりだけの家呑みもなかなか良いものだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
愛情物語 / 原田知世  1984


アナベルと金婚と東村山音頭と 西武国分寺線・多摩湖線を完乗!

2024-07-13 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

羽根沢信号場から恋ヶ窪駅へ延びる直線区間をレモンイエローの6両編成が駆けてくる。
やはり国分寺駅が単式ホームだから、国分寺を出発する列車と到着する列車はここで行き交うことになる。
ニュースが熱中症への注意を叫んでる休日、国分寺線に乗って呑もうとやってきた。

ブリヂストンの工場を右手に見て小川駅、国分寺線はここで拝島線とX字に交差する。
平面交差になっているので、先発の小平ゆき(拝島線)が行手を遮るように横切って右奥に消えていった。

右から新宿線の複線が近づいてきて、レモンイエローは工事の防音壁に囲まれた2番線に到着。
国分寺を発ってからわずかに10分、国分寺線の旅はアッという間に終わりを迎える。

終点の東村山駅付近は連続立体交差事業が進行中、5つの踏切が解消されるらしい。府中街道の渋滞も酷いもの。
駅の反対側には、えっと言うような26階建てのタワーマンションが聳えている。

そして駅前広場では、大きな欅の木陰で「アイーン」ポーズの志村けんさんが暑さを凌いでいる。
昭和な少年たちの土曜日は、草野球から帰って夕飯を済ませると、『8時だョ!全員集合』にかじりついた。
もっともボクはだんだんと『オレたちひょうきん族』に心変わりしていったのだが。

煙突の高さも誇らしげに “金婚” の豊島屋酒造が江戸前の酒を醸している。
実はこの旅のスタートラインへ向かう車中、Googleマップでどうやら東村山に酒蔵があることを知った。
まぁ呑み人の旅はそれくらい行き当たりばったりなのだが、知ったからには訪ねない訳にはいかない。

滝のような汗を流して15分、ショップ「KAMOSHI no BA(かもしのば)」で試飲を愉しむ。
定番の “金婚” や “屋守(おくのかみ)” の他に、なかなか尖った酒をお造りの印象を受けた。
蔵元でしか買えない無濾過生原酒 “純米大吟醸 NEON(PINK)” と “純米吟醸 MELLOW(BLUE)” を仕込んで、
この先の旅、左手に提げた袋がカチャカチャとリズムよく音を立てるのだ。

駅前に戻ったら「ますも庵」の暖簾をくぐる。まだ陽は高いけど今日の一杯を。
この店は豊島屋酒造さんで「東村山で金婚が飲めるお店は?」と尋ねて、紹介してもらったのだ。

とは言えこの暑さ、先ずはキンキンに冷えた “大人の⭐︎生” を一杯。アテは何も捻らず “冷奴” がステキだ。

そして “金婚 純米酒” を升に溢してもらう。やや甘めの飲み口がスッキリした酒だ。
お供するのは “身欠きニシンの甘露煮”、蕎麦前のうちでは好みの一品だ。

〆の一枚は “肉汁うどん” に変更して、甘い肉汁、コシのある歯ごたえと喉ごしを愉しむ。
うどんは埼玉県さんの地粉と言うからまさに武蔵野うどん。西武線シリーズでははや3度目なのだ。

志村けんさんに別れを告げたらもう一路線乗っておく。
3番線でガラんとして発車を待つレモンイエローは2000系4両編成の西武園行き。冷房が心地よい。
列車がガタンと動き出すなり『次は終点西武園っ』の乾いた車内放送、そう西武園線はたった1駅の乗車なのだ。

黄色い西武電車を背景にして、抜けるように白く、満開の “アナベル” が美しい。
沿線の「北山公園」は、水辺を楽しめる静かな公園で、数千本の花菖蒲と紫陽花が盛りを迎えている。

線路の向こう側は『となりのトトロ』でメイが迷い込んだ七国山のモデルと言われる八国山緑地。
東村山と所沢の市境(都県境)にある緑地は、ハイキング トレイルやバードウォッチングのできる池がある。

競輪の開催がない日は閑散とした西武園駅、レースがある日ならばメインスタンドで呑んでも良かったなぁ。
隣接する西武園ゆうえんちプール、聞こえてくる女の子や子どもたちの歓声が夏を感じさせる。
っと、西の空に夕立を予感させる灰色の雲が広がり始めていることに気付く。
慌ただしく折り返すレモンイエローの電車に乗って、国分寺線・西武園線の旅を終えよう。

西武鉄道 国分寺線 国分寺~東村山 7.8km 完乗
西武鉄道 西武園線 東村山~西武園 2.4km 完乗

東村山音頭 / 三橋美智也&下谷二三子


ノミビトは朝、空港で

2024-07-10 | 日記・エッセイ・コラム

土砂降りの午前8時、更新したての真新しい旅券を片手に、羽田空港第2ターミナル。
少々早めの夏休みか、久しぶりの海外渡航は一都市滞在の5日間。予定は全く立てていない。
行った先で酒場を放浪するか、呑み鉄の旅をするか、まぁ単車には乗らないと思うけど。
ちょい贅沢に5つ星ホテルだから、プールサイドでのんびり過ごしても良い。とにかく自由なのだ。

とはいえ、呑むことは外せないから、ナッツとチーズに、朝からラウンジでプレモル生ビール。
喉が潤ったら、“大七箕輪門” 注いで、“焼き鮭” を箸で崩しながら山田錦の純米大吟醸を愉しむ。
搭乗前からやるべき事、いや呑むべきものは呑んでおかないと。

さて、いったい呑み人はどこに降機するのだろう。
容赦なく照りつける市街地の国際空港にはこんなオブジェがあったのでパチリ。

首都を貫く大河の河口の町には、こんな南欧風の小径があったり。

ミーハーにもこんなスイーツに舌鼓を打ったりするのもまた楽しい。

比較的新しい街並みには、こんな今どきのオブジェがあって、観光客やカップルが写真を撮っている。

さて、呑み人が紛れ込んだのはどこの街か、旅慣れた貴兄にはお分かりでしょうか。
スイーツで分かっちゃうかもしれませんね。
いずれ、何らかのレポートをしますね。それでは行ってきます。

<40年前に街で流れたJ-POP>
モリスンは朝、空港で / 佐野元春 1983


空飛ぶ機関車と真夏日のホッピーと魔法の国と 西武有楽町線・豊島線を完乗!

2024-07-06 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

エメラルドのボディーに3人のキャストを大胆にあしらったフルラッピング電車が豊島園に到着する。
溢れ出した乗客の中には、すぐには改札を出ずに、カメラを片手にホームを行ったり来たり。
今日は昼呑みの練馬を基点に、豊島線と西武有楽町線で遊ぶ。

3番線に入ってきた紅いラインの8両編成は東急の車両、副都心線を経由して横浜中華街からやってきた。
西武の車両は勿論だけど、東京メトロ、東武、東急、横浜高速の車両が入り乱れるのは副都心線効果ですね。

地下がこんなに賑やかなのは想像できないほど、静かな住宅地の只中に小竹向原駅は口を開けている。
小竹向原〜練馬のわずか3駅を結ぶの新線(1998年全通)は、練馬区内で完結するけど有楽町線だ。

紅いラインの石神井公園行きは、6分の乗車で西武有楽町線の旅を終える。
もっとも大抵の場合、このまま池袋線に乗り入れて、石神井公園あるいは飯能まで足を延ばすのが常だ。

高架を西武の路線がX字に交差し、その地下を大江戸線が走って、練馬駅も案外立派なターミナルだ。
すでに真夏の陽に射られて、練馬駅前交差点で都道を越えると、ビルの谷間に酒場が連なる細道が延びる。

この界隈には昼から暖簾が掛かる店が何軒かあるらしい。
呑み人はぼんやりと赤提灯が点った「大衆酒場 練馬 春田屋」に吸い込まれる。すっ涼しい。

先ずは生ビール。よく冷やされたジョッキーには誇らしげに店名が入っているね。
アテは “肉味噌ピーマン” って、己で箸を操って作るんかい?まぁ安いから良い。

二杯目は “生レモンサワー”、この酸っぱいのがいい。
タマネギを敷いて “漬けマグロブツ”、紫蘇を散らしてこれがなかなか気の利いたアテ、さらに呑めそうだ。
日本酒は松竹梅かぁ、ご常連が裏メニュー的な地酒を注がせてるけど、面倒だからホッピーでいく。

ナカを追加するタイミングで “豚バラ” を焼いてもらう。味噌と梅と一本ずつね。
汗も引いたし、ちょい気分が良くなったところで、小さな旅の続きを。

高架のホームに上がってほどなく、Harry Potter を煌めかせて「スタジオツアー東京 エクスプレス」が登場。
豊島線は練馬から北へ、住宅街を掻き分けてわずかに1キロの旅なのだ。

赤を基調とした豊島駅構内は、ホグワーツ魔法魔術学校へとつづくホグズミード駅をイメージしているとか。
ベンチや電話ボックス、天井から提げられた時計も英国調で、なんだかワクワクしてくるね。

空飛ぶ魔法列車のモニュメントは、キングス・クロス駅の9と¾番線の Hogwarts Express と思いきや、
かつて「としまえん」で走っていた機関車をリメイクしたものだそうだ。なかなか粋ですよね。

イングリッシュガーデンをイメージした駅前広場、木材をふんだんに使ったナチュラルで暖かみのある駅舎。
豊島園駅はずいぶん雰囲気が変わりました。

黒いマントを羽織り魔法の杖を握って、コスプレをした若者が少なからず集う緑の小径を行くと、
木立の中に、守護霊(パトローナス)が跳ねる「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京」が現れるのだ。

さてこの夏、時間を見つけて魔法の国を訪れて見てはいかがか。ボクは練馬駅前で呑んで待っています。

西武鉄道 西武有楽町線 小竹向原~練馬 2.6km 完乗
西武鉄道 豊島線 練馬~豊島園 1.0km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
時間の国のアリス / 松田聖子 1984


人生のそばから 分上野藪かねこ@浦和

2024-07-03 | 呑み鉄放浪記

浦和駅から歩いて10分と少々、閑静な住宅街に隠れるように、その店は柔らかく行燈を点している。
場所がらフラリと訪ねる店ではないので、今宵めずらしく、あらかじめ席を予約して出かけた。
その店は、ゆるりと蕎麦前を愉しめる、雰囲気のいい空間を用意してくれる。

シャンパンゴールドに煌めく “ハートランド” で始める。お通しの “そば味噌” がなかなかいい。
県産平飼いの “玉子焼き”、先ずはそのまま食べて甘さを感じて、あとはおろし醤油でいただく。
それから “フルーツトマトとタコのおろしポン酢”、さっぱりと夏の一品だ。日本酒が欲しくなってきたね。

爽やかな空色のラベルは、白隠政宗の “誉富士 純米酒 夏”、ちゃんと夏酒を揃えてくれるのが嬉しい。
さっぱりドライに仕上がった食中酒に、アテは “賀茂茄子と香り豚のみぞれ煮” が美味しい。

アスパラ、谷中生姜、新玉葱、新ごぼう、ヤングコーンを並べて “夏野菜の天ぷら” は抹茶塩で。
山形の “米鶴” は純米吟醸 直汲み無濾過生、出羽燦々で醸した華やかな酒、これは夏野菜に合うね。

頃合いで、〆の “辛味大根おろしそば” が登場する。
薄い紫をした(かなりの)辛味大根をそばの上に盛ったら、それを全体に流すように汁をぶっかける。
おっかなびっくり、それでも大胆に箸でつかんでズズッと啜る。かっ辛い、でも堪らない。
夏酒に夏のアテと辛味蕎麦、梅雨空を吹き飛ばす爽やかな宵の口なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
愛・おぼえていますか / 飯島真理 1984