旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

“恋のしらやまさん”でラガーとハントンライスを 石川線を完乗!

2022-10-29 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

秋の澄んだ空気のせいだろうか、ずいぶん早くから電車の警笛が聞こえる。何分も経ってから、
無人駅に隣接する踏切の警報音が鳴り始める。っと大袈裟に車体を揺らして鶴来行きがやってきた。

橋爪門続櫓から菱櫓をつなぐ2層2階の五十間長屋、白い土壁と瓦が朝日に輝いて美しい。
さすがは加賀藩前田家百万石の居城らしく威風堂々としている。続く二の丸御殿の復元整備が待ち遠しい。

金沢城を背にして、静かな朝の香林坊・片町を抜けて犀川大橋を渡ると「にし茶屋街」は案外近い。
「ひがし」や「主計町」と比べるとひっそりした「にし」だけど、美しい街並みを見ることができる。
木虫籠(きむすこ)と呼ばれる出格子の茶屋からは、今にも芸妓さんの三味線が聴こえてきそうな風情がある。

にし茶屋街から泉用水に沿ってぶらぶら歩くこと5分、小さなターミナルに行きあたる。
今回呑み潰すのは北陸鉄道、白山比咩神社(しらやまひめ)をめざして先ずは石川線に乗ろうと思う。

窓口でお得な「1日フリーエコきっぷ」を求めたころ、タイミングよく鶴来行きの2両編成が入線してきた。
アルミの装いに纏う帯は、紅から橙に変わっているけれどこれは東急車両、金沢にお嫁に来たんだね。

線路の状態は必ずしも良くはない。橙帯の2両編成は左右ばかりか飛び跳ねるように上下にも揺れている。
ちょっとしたアトラクションのようで子どもたちは楽しいらしい。途中の額住宅前駅で上り下りが交換する。

稲刈り後の田んぼが青いのは小麦か大麦か、果実の畑も見えて、いつの間にか車窓には田園風景が広がる。
右手に手取川が近づいて来る。田園風景の先に町が見えてきたら終点の鶴来駅だ。

鶴来駅の駅舎は昭和2年に建てられたもの。大正ロマンというのだろうか、和洋折衷の瀟洒な駅舎は
往時の賑わいを想像させる。昭和初期のこの駅からは辰口温泉を経て北陸本線の寺井駅を繋ぐ能美線、
さらには白山下駅まで延びる(金沢と名古屋を結ぶ些か大それた計画の)金名線が乗り入れていた。

駅正面の白山市観光案内所でレンタサイクルの貸し出しを受けて、鶴来の町並みを流してみることにする。

鶴来では “萬歳楽” の小堀酒造店が江戸時代から、“菊姫” はさらに昔から、白山の雪解け水で旨酒を醸す。
土産に “菊姫” を何本か仕込んで満足、いずれこのページで家呑みとして紹介するかも知れない。

白山(2,702m)に源を発した手取川は、ここ鶴来を扇頂として肥沃な扇状地を広げている。
一方ここから上流の手取川は渓谷となる。すでに廃止された金名線はこの谷間を17kmほど遡って走っていた。

加賀一ノ宮・白山比咩神社(しらやまひめ)に詣でる。ご神体は白山、山頂に奥宮が鎮座しここは本宮にあたる。
主祭神の1柱は白山比咩大神=菊理媛神という女神さま、後の2柱の伊奘諾尊と伊弉冉尊を仲直りさせたとして、
縁結びの神とされている。地元では “恋のしらやまさん” と謳って恋する女子旅を招いている。
北陸鉄道では和菓子券や辻占券を付けた「恋のしらやまさんきっぷ」を販売している。なかなかセンスがいい。

参道の立寄り処は蕎麦屋と相場は決まっている(と勝手に思っている)が、「おもてや」はちょっとお洒落な
ランチスポット。店頭で販売する “大判焼き” が人気で、若者や七五三の家族連れが列を作っている。
明るいcafe風のテーブルで “キリンラガー” を呷りながらランチを択ぶ。突き出しに漬物の小鉢が置かれた。

“ハントンライス” は金沢のB級グルメ、オムライスにタルタルソースたっぷりの白身魚のフライが乗っている。
デパートのレストランの賄い料理が原型といわれ、北陸新幹線の延伸開業を期に脚光を浴びつつあるそうだ。
ケチャップソースとタルタルソースの意外なコラボレーション、何よりボリュームたっぷりのランチを愉しむ。
恋する女子旅に紛れ、B級グルメを食す、いつもの呑み鉄旅と勝手が違う石川線の旅を堪能している。

北陸鉄道石川線 野町〜鶴来 13.8km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
野ばらのエチュード / 松田聖子 1982 


ご当地旨ラーメン事情 京都「新福菜館」

2022-10-26 | 旅のアクセント

 ちがうタイプの麺(Men)を 好きになってしまう 揺れる乙女心 よくあるでしょ?
高倉跨線橋の北詰に人気のラーメン屋が軒を連ねている。京都にはOnOffかなり足を運んでいる呑み人だけど、
この二軒はどちらも「初めまして」だから何方でもいい。やや順番が早そうな「新福菜館」の列に紛れ込む。

先行して “ヤキメシ” 着丼、醤油を焦がしたような香ばしい匂いが漂う。この茶色って絶対美味いやつだ。
でも長い目で見ると体に良くないんだろうな。古めかしい薄いスプーンで大きなひと口を放り込む。
予想通りの濃ぉい醤油味が口っぱいに広がる。やっぱり美味い。癖になりそうな味ではある。

続いて“中華そば” 登場、山盛りのネギで麺はおろかチャーシューすら見えない。ネギ増しにしたからね。
辛うじて覗くスープ、これはもう茶というより黒か、レンゲでおっかなびっくりひと口、案外まろやか。
もういいペースで中太麺をズズッと啜っていく。時々トロっとチャーシュー、シャキっとネギを絡めて美味い。

ホントは先斗町まで呑みにいく心算だったけど、尼崎で昼呑みが過ぎたから今宵はラーメン紀行になった。
それでも期待以上のしょうゆ味に満足、今更ながらの旨ラーメンを発見。やはり京都は食に関しても奥が深い。
肌寒さを感じる風に吹かれながら、投宿先へ向かう足取りに、靴裏のベタつきも苦にはならないのだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
けんかをやめて / 河合奈保子 1982


風を感じて! キャンパスイエローとZと肉汁うどんと

2022-10-22 | 単車でGO!

長く続いた秋雨が上がった昼まえ、zのカバーを解いてエンジンをかける。腹に響くような低音が心地よい。
もうこの時間だから、近場のドライブに連れ出したい。どうやら鴻巣市の荒川河川敷でコスモスが咲いている。

約88,000平方メートルに1,000万本というからなかなかの見応え。
赤い水道橋を背景に、濃紅色、桃色、白色と咲き乱れるのは “センセーション”、最もポピュラーな種類ですね。

ようやく咲き揃って来たのは “キャンパスイエロー”、青空に映える透明感のある黄色が爽やかでしょう。

いわゆる黄花コスモスは生命力が強そうだ。まるで剛毛のような茎が絡み合いながら好き勝手に伸びているね。
半八重咲きの花は “ブライトライト混合”、黄色と橙色の混合らしいのだけど、辺りはオレンジ一色だ。

ところで対岸の吉見町は苺の産地、ゆるキャラの “よしみん” はいちごの妖精らしい。
っで、荒川と多摩川に挟まれた武蔵野台地の郷土料理は “うどん”、江戸期から小麦や大麦の栽培が盛んだった。

「名代 四方吉うどん」の暖簾をくぐる。家族連れで賑わう有名店だけど、13時を回って並ばずに入店。
お奨めの “肉玉うどん” を注文すると、大きな丼いっぱいの饂飩と、半熟卵を落とした肉汁が運ばれて来た。
割り箸で大掴みしたうどんを濃ぉい肉汁に浸してズズッと一気に啜る。美味しい。これぞ “武蔵野うどん” だね。
すっごくコシが強い。肉汁が薄まってきたら半熟卵を箸で割る。マイルドに味変してこれまた美味いのだ。

吹上コスモス畑で一番魅かれたのは “ピコティ”。白い花弁がピンクやバイオレットで縁取られて可憐でしょ。
カメラ片手にずいぶん歩き回ったから、気付いたらすっかり日が傾いている。
zと同じくらいの茜が眩しい西の空に目を細めて、エキゾーストを響かせながら武蔵野の大地を直走るのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Happy Man / 佐野元春 1982


信州点描 Pinot Noir

2022-10-19 | 日記・エッセイ・コラム

 夏に立ち寄った千曲川ワインバレーのリュードヴァン、週末、ピノ・ノワールの収穫ボランティアに再訪した。
標高800m、蓼科山を望む畑には平年を超える降水量に負けず、しっかりと色付いたね。

収穫用コンテナボックスをひっくり返して腰掛けると、ちょうど目線に美しく実ったピノ・ノワールの房と対面。
園芸用のハサミで房を切り取ったら、悪くなった部分を削いで、コンテナに収めていく。
迷子になる房が無いよう葉を掻き分けながら、勝手が分からない慣れない作業に、最初は慎重になり過ぎる。

漸くペースが掴めてきて、10kgを収めるコンテナを4つ作った頃、スタッフからランチの声が掛かる。
スタッフが大きな圧力鍋から “地鶏のトマト煮” を盛り付けるのを横目に、シードルをいただいて人心地だ。

振る舞われたワインは2021年の “ドゥー・ローブ・ヴィオレット”、香りの豊かなブレンドワインだね。
ニンニクと一緒にオリーブオイルで揚げた “ブロッコリーのアーリオ・オーリオ”、これいいアテになるなぁ。
じっくり煮込んだ “地鶏のトマト煮” が美味しい。楽しいピクニック・ランチの演出に満足なのだ。

長いランチ休憩の後は、ワインを入れた身体はいいペースで動いたから、6つのコンテナを満たした。
今年は少々葡萄の色付きが悪いとオーナー氏、このピノ・ノワールは赤ではなくスパークリングに仕上げるとか。
美味いワインになったまた会おうな。これって、明日は身体が動かないかも知れんなぁ。

<40年前に街で流れたPOPS>
Can't Take My Eyes Off You / Boys Town Gang 1982


モスラの卵と越前そばと黒龍と 勝山永平寺線を完乗!

2022-10-15 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 眩い朝陽が差し込むのは早朝の福井駅、ホームの先端に高校生のカップル。会いたかったんだね。
現在キャンペーン中とかで、この日「一日フリーきっぷ」が500円、えちぜん鉄道をお得に呑み潰そう。

恐竜が今にも襲いかかろうとしているのは勝山駅、1914年(大正3年)開業以来の駅舎は登録有形文化財
午前中は三国芦原線に乗って東尋坊に遊んで、午すぎから勝山永平寺線に揺られてきた。

なぜ恐竜?って、ここは福井県立恐竜博物館の最寄駅だから。人気の博物館は現在予約制なので注意が必要だ。
九頭竜川対岸の山裾に鈍く光る銀のドームが恐竜博物館、ボクは勝手に “モスラの卵” と呼ばせてもらおう。

白地に青のツートンにちょっぴり黄色のアクセント、MC7000形は飯田線を走っていた119系をJR東海から
譲渡されたものらしい。この2両編成にのんびり揺られて福井まで戻ることにしよう。

白山山系を背景に緩やかに蛇行する九頭竜川、長い竿をしならせて、釣り人たちがアユ釣りに興じている。

上り下りの電車が交換するのは永平寺口駅、ローカルな駅がいっときの賑わいを見せる。ボクも降りてしまおう。

5分の待ち合わせで小さな路線バスが現れた。折角だから、大本山永平寺には詣でておきたい。

門前の賑わいをやり過ごして参道に足を踏み入れる。木々は生い茂り、岩々は苔むし、身が引き締まる。
深山幽谷の境内、建ち並ぶに殿堂楼閣、永平寺は修行僧が日々厳しい修行に励む禅の修行道場なのだ。

ぴかぴかに磨き上げられた回廊の階段を上り詰めた法堂(はっとう)から西日差す七堂伽藍を見下ろす。
参拝客が途切れたタイミングと相まって、その静けさがここが山深い修行の地であることを実感させてくれる。

参拝を終えたらちょっとだけお清めがしたい。次の路線バスまでは40分ほどの時間がある。
“黒龍いっちょらい” をいただく。程よい吟醸香にピリッとした⾟⼝、喉にスッーと透って心地よい酒だ。

吟醸酒の最後の一口を残したころに “おろしそば” が登場、越前そばを頂くのはこのタイミングの他はない。
たっぷり鰹節、風味の強い太い麺、辛み大根を溶いた汁にサッとくぐらせてズズッと啜る。美味しい。

永平寺口駅に迎えに来たのはやはりMC7000形の2両編成、キャラクターの娘のヘッドマークを付けている。

車窓には重たげに穂を垂らした黄金色の田圃が続く。間もなく稲刈りを迎えるはずだ。

黒龍の蔵元ってこの沿線だったよなぁ?ふと思い立ってスマートホンを操る。ビンゴ!っていうか次の駅だ。

慌てて飛び降りた松岡駅、レトロモダンな駅舎が格好良い。やはり駅舎本屋は登録有形文化財なのだ。
話は逸れるがいつも思うこと、こうした風景に無機質な自動販売機はいただけない。余所者の勝手な独り言だ。

駅から歩くこと10分弱、大きな杉玉を提げ、夕日を浴びた堂々たる町家に辿り着く。「黒龍」の染め抜きがいい。
ところで蔵元の営業は17:00迄、アウト。それでも蔵を尋ね当てると、呑み人としては旅の達成感大なのだ。

17:42着、ウッディーで暖かみのある福井駅に迎えられた。
恐竜博物館にフラれ、黒龍にフラれたけれど、風景に空気に奥越の秋を感じた勝山永平寺線の旅なのだ。

えちぜん鉄道・勝山永平寺線 勝山〜福井 27.8km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
とまどうペリカン / 井上陽水 1982  


一酒一肴 松本•今錦×馬肉たたき

2022-10-12 | 津々浦々酒場探訪

  城下町を漫ろ歩いて、今宵は駅近の酒場で地酒と郷土料理を堪能したい。
場所柄、地元の若者、観光客、出張のサラリーマン風など、ちょっと混沌とした雰囲気になってる。

酒は東に西にアルプスを見上げる天竜川沿い中川村の "今錦おたまじゃくし"、特別純米酒ひやおろしを択ぶ。
もみじを散らしたラベルには工夫があって、酒の成長をおたまじゃくしで表しているそうだ。
冬に出荷する生酒は手足なし、春の特別純米では足が出て、1年を経たひやおろしは手も生えてってね。

アテには "辛味大根おろしと馬肉たたき"、炙った赤味馬刺しに信州の辛味大根をたっぷりおろして、
ポン酢でさっぱりと美味しい。 ふくよかながらもキレのある “ひやおろし” とともにご機嫌な宵なのだ。

 
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<40年前に街で流れたJ-POP>
時代は僕らに雨を降らしてる / 長渕 剛 1982


東尋坊と白えびのかき揚げと奏雨と 三国芦原線を完乗!

2022-10-08 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 2週続けて福井、この週末は最高の秋晴れに恵まれ、東尋坊と三国港の海鮮を求めてえちぜん鉄道を旅する。

と言いながら、前夜のうちに北陸の海の幸を愉しんだ。大阪から流れて福井駅前の大衆割烹「善甚」を訪ねる。

この週末は奥越の酒に酔う。先ずは越前大野の “花垣 超辛純米” を択ぶ。、薄く色付いた液体がグラスに滴る。
そうこの店、二段にした受け皿にまでいっぱいに零してくれる。これはお迎えにいかないといけない。
ハマチ、甘えび、平目、サワラ炙り、カンパチ、真鯛と豪勢に6点盛り、特に “サワラ炙り” が上々のアテだ。

“白えびのかきあげ” が揚がったら、二杯目も越前大野、真名鶴酒造の酒をお願いしよう。
“奏雨(SOW)”、雨が奏でるの詩的なネーミングが表現するちょっと甘やかで爽やかな純米大吟醸は、
『果実や野菜類をふんだんに盛り込んだ前菜類と好相性』との紹介、カニやらエビやらにも合いそうだ。

     

〆は “鯖へしこ茶漬け”、朝晩涼しくなったこの頃はこんな食事がいい。何より “へしこ” に目がないのだ。

三国芦原線の起点は福井口、北陸新幹線と並んで高架を走ってきた単行電車は、勝山方面への本線と分かれる。
昨晩はほどほどに切り上げたので、早朝の旅立ちにもすこぶる快調だ。

白地に青のツートンにちょっぴり黄色のアクセント、単行電車が九頭竜川を渡ると辺りは田園風景に変わる。

この日一杯目のプルトップを引く。秋味系のビールがしっくりくる季節になったね。
車窓の白は蕎麦の花、越前の蕎麦はまもなく収穫の時期を迎える。そうだ「越前おろしそば」も食べないと。

行程のちょうど真ん中、西春江ハートピア駅で上り電車と交換する。早い時間にもかかわらず高校生で満員だ。

あわら湯のまち駅に途中下車、開いたばかりの「芦湯(足湯)」に寄り道しようと思う。
湯巡権三と湯巡艶子がプリントされたタオルを求めて、総ひのき造りの湯船に足を浸す。いやぁ癒やされます。 

膝下をぽっかぽかにして、40分後、迎えに来た後続で日本海をめざす。いつの間にか2両編成になっている。

一本脚の架線柱、コシヒカリの収穫を終えた見渡す限りの田んぼ、ローカル私鉄ならではの風景を堪能する。

微かに潮の香りが漂ってくる。旧駅舎の建材を利用した木造平屋建ての駅舎「三國港驛」がこの旅の終着駅。
かつては駅の間際まで岸壁が迫っていたという。この駅は国鉄三国線の貨物駅として開業しているのだ。

キイコキイコと貸し自転車を漕いでいく。目の前に現れた予想外の勾配に時ならに大汗が噴き出す。
サスペンス系のTVドラマになくてはならない「東尋坊」は、巨大な柱状節理が織り成す風光明媚な海岸線だ。
荒れたイメージにはほど遠く、穏やかに碧い日本海。吹き渡る海風に汗がひいていく。足を伸ばして良かった。

岬を回り込む帰りの下り坂に、自転車は快適に風を切る。三国港に戻ったら老舗魚問屋が営む食事処へ。
カニの季節はもう少し先、刺身は昨晩堪能したしね。っと云うことで “うに・いくら丼” を択ぶ。
ちょっと贅沢に、“うに” と “いくら” の甘さがまったりと口に広がって、三国芦原線の旅は終わるのだ。

えちぜん鉄道・三国芦原線 福井口〜三国港 25.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
Ya Ya (あの時代を忘れない)  1982 / JUJU


一酒一肴 名駅•半田郷×名古屋牛かつ

2022-10-05 | 津々浦々酒場探訪

 おすすめの "名古屋牛かつ" はちょいレア、おろしポン酢でよし、たっぷりわさびでもよし、美味しい。
こんなアテに合わせる食中酒は純米系がいいね。純米吟醸 "半田郷" はしっかりした味わいで濃い料理にも合う。

名古屋圏を呑み潰した夏、青春18きっぷだから、東京に帰るには17:00の新快速に乗らないといけない。
15:00に赤ちょうちんが灯るちょいのみ酒場「せんて」を探し当てて、まだ日の高い名駅での一杯なのだ。


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<40年前に街で流れたJ-POP>
待ちぼうけ / 堀ちえみ 1982


シュツットガルト電車と鯖へしこと早瀬浦と 福武線を完乗!

2022-10-01 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

 シュツットガルトから高知を経由してやって来た735形 “レトラム” が明日のイベントに向けて調整中。
スリムな車体に存在感のあるパンタグラフ、ドイツ国旗が誇らしい。幸運な巡り会いがとても嬉しい。

大阪からの帰路、乗車券を北陸回りに変更して福井・金沢を呑み潰す週末、金曜日の夕方、武生駅に降り立った。
JRの駅前からショッピングセンターを回り込むように歩くと、小さな福井鉄道のターミナルがある。

赤い「急行」の表示幕が誇らしい880形は2両連接電車、2006年に名鉄の岐阜市内線からやって来た。
夕方の時間帯は30分ヘッドで終点の田原町まで45分で疾走するのだ。北陸シリーズは先ず福武線を呑み潰す。

ひとつ目の北府(きたご)駅で早速途中下車してしまう。木造平屋建ての駅舎はギャラリースペースになっていて、
かつて使用された古い制服や車両・駅の備品などが展示されているのでなかなか興味深い。

日野川の鉄橋を渡るとめがねの鯖江市に入る。沿線の鉄道用地にコスモスが秋の風に揺れている。
鯖江の市街地を抜けると田園地帯が広がる。軌道線車両が60km/hで疾走するから、こちらも負けずに揺れる。

赤十字前駅を出発したばかりの電車がガクンと停車した。ここからは(一般道路上に敷設した)軌道線を走る。
夕方のラッシュ、乗用車をかき分けて走って来たLRTは相互乗り入れ相手であるえちぜん鉄道のki-boだ。

複線になった軌道線をゆっくりと連接電車は北上する。急行は支線の福井駅前を経由しない。
夕闇が訪ずれた田原町の1番線、行手は車止めで塞がれている。2番線は三国芦原線と繋がりLRTが乗り入れる。

福井駅前へ乗り入れる支線が分岐する福井城址大名町駅近くに、福井の地酒を堪能できる居酒屋がある。
『酒季織々 旨い肴、和み酒』ってなんて素敵なキャッチフレーズ、いやが上にも期待が高まるね。

掘りごたつ式のカウンターに腰を落ちつける。居酒屋というより小料理屋って趣がある。
カウンターの中に鈴木杏樹か麻生久美子が居て欲しいと思うのは妄想だろうか。森口瑤子も捨て難いなぁ。

地酒の品書きが気になるけど、先ずは生ビールで喉を潤す。
涼しげなガラスの器に、はまち、真鯛、さわら、サーモン、マダコと並んで、今宵のひとり呑みは始まる。

嶺北の蔵 “白岳仙”、秋限定の特別純米ひやおろし、軽快でキレのある喉越しに食が進みそうだ。
名物 “竹田の油揚げ” はパリッと香ばしい表面、ふんわり柔らかい中身、この旨味と食感にはちょっと驚き。

こういった店での酒撰びはお店の方に尋ねるにかぎる。純米縛りで若い板さんが “早瀬浦” を奨めてくれた。
嶺南・美浜の酒は海の男を納得させるキレ味鋭い辛口の酒、然すればアテは小浜の “鯖へしこ炙り” と来る。
鯖へしこは日本酒に最高のアテだね。この塩辛い糠漬けに酒は進み、過ぎたるを知りながら三杯目を択ぶ。 

嶺北に戻って “常山” の純米超辛は、五百万石を醸した淡麗旨口、なるほどこういう酒があるんだね。旨い。
重なってしまうけれど “焼鯖寿司” と赤出しをいただいて、福井のうまいものを堪能する夜を〆る。満足だ。

ほろ酔いを自覚しながら、もう一度連接電車に乗る。福井城址大名町駅から最後の1区間を走るのだ。
田原町と越前武生を結ぶ福武線にあって、各駅停車だけが福井駅前への支線に顔を見せている。

街明かりに浮かび上がる青いラッピング電車が甲高いブレーキ音を響かせて、呑み人の福武線の旅は終わる。
“フクイティタン” の低い咆哮が夜も更けた福井駅前に響いていた。

福井鉄道・福武線 越前武生〜田原町 20.9km
     福井城址大名町〜福井駅前   0.5km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
夢の旅人 / 松山千春 1982