旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

JY15 山手線立ち呑み事情 まるの@高田馬場

2023-11-29 | 大人のたしなみ

高田馬場駅から小滝橋へ向かって緩やかな坂道を登っていく。
確か3つ目の信号だっただろうか、右に伸びる路地に入るとその店はあった。
「はじめまして」だから開店時間を狙う。案の定一番乗りでカウンターの奥に立つ。

生ビールは小ジョッキータイプ。まずはこれが無いと始まらない。
一皿めは「本日のおすすめ」のボードから “豚バラ春菊ポン酢” を択ぶ。
豚バラの甘味と春菊の苦味がいい感じだ。

ご夫婦だろうか、奥さんの笑顔は余所者のボクにも優しい。
アテは都度都度大将がフライパンで調理するから、値段は安いけれどどれも美味しそう。

黒ホッピーでジョッキーの焼酎を泡立てたら、小鉢に入った “あぶり明太” を抓む。これがまた絶品。
日本酒だったら二杯は飲めそうだなぁ。

ふんわり玉子が炒めた豚肉と野菜を包んで “とん平焼き” が三品めのアテ。
お好み焼き用のソースだろうか、マヨネーズと絡んでいい味を出す。

ナカのお代わりは、カウンターの内側に折りたたみ椅子に腰掛けたご常連のおばさんがリレーしてくれた。
アットホームな雰囲気で、なかなかステキなお店ですね。

さて時計は18時を指そうという頃、7〜8人立てば満員のお店は、入店を諦める後客が出始めた。
それでは一人分のスペースを空けますか、千円札二枚で何枚かのコインのお釣り、安いなぁ。
なんだか暖かな気持ちで坂を下る。また伺っても良いですか。

<40年前に街で流れたJ-POP>
東京シャッフル / サザンオールスターズ 1983


風を感じて! 冠雪の富士とZと錦繍の湖北ビューライン

2023-11-25 | 単車でGO!

河口湖周辺の紅葉が見ごろを迎えていますね。
色鮮やかな紅葉の中に浮かび上がる富士山を見ようと、早朝の中央フリーウェイへZを走らせる。

先ずはインバウンドから人気に火がついた新倉山浅間公園を訪ねる。
雄大に裾野を広げる富士山、朱塗りの五重塔、紅く染まったソメイヨシノ、美しいね。

新倉河口湖トンネルを抜けて河口湖畔に出る。ここから暫く湖北ビューラインを愉しむ。
もみじ回廊の渋滞を抜ける頃には、晩秋の陽は南に回って、富士は青いシルエットに変化していく。

大石公園のパークキングにスタンドを立てる。
真っ赤に紅葉したコキアと富士山のコントラストがキレイ?いや少々遅かったかなぁ。

右に左に身体を傾けて、湖畔のワインディングロードを走らせる。カーブを重ねるごとに富士は表情を変える。
長浜のT字路を右に折れて河口湖に別れを告げる。小さなピークを越えると西湖のススキの原が見えてきた。

紅葉に囲まれた湖畔のそば処、重厚なテーブルとイスに身体をあずける。
すでにストーブに火が入っているね。窓越しに湖畔の紅葉を眺めて、そばを待つ時間も愉しい。

“とろろ蕎麦” を択んだ。信州の二八だね。
前半は大和芋のとろろにうずらを落としてそばに絡める。この粘りと淡白な味がいい。
後半は辛めの汁に山葵を溶いて、ちょいと浸してズズッと啜る。なかなか美味い。

湖北ビューラインをさらに西へ進める。
西湖根場浜できょうの一枚、モミジにススキに冠雪の富士山、それにZ、満足だ。

湖北ビューラインはいつしかR139と合流して深い樹海を抜ける。青木ヶ原大橋からの眺めが雄大だ。
精進湖展望台からの富士山、駆け足で西に傾く晩秋の陽に冠雪がキラリ煌めく。

ここらで富士に背を向けて、精進ブルーライン(R358)は女坂峠を越えて甲府盆地へと降りる。
ほどなくやって来る冬の気配を風に感じて、Zを走らせた小雪近い週末なのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ロング・バージョン / 稲垣潤一 1983年


Biz-Lunch 幸龍軒@大塚「肩ロースあんかけ炒飯」

2023-11-22 | Biz-Lunch60分1本勝負

黄色い庇に看板、白い暖簾には○に龍の一文字、テーブルには赤いパイプの丸イス、これぞ街中華。
壁一面にメニューの写真と短冊がペタペタと。どうやら「あんかけ」がキラーコンテンツのようだ。

店員さんは皆あちら(大陸)の方だろうか?
今風に云うとオープンキッチン?奥の一面がガラス張りで、大将が中華鍋を振るう。誰も見ていないけど。

っと、ちょこんと二つ焼売をのせて “肩ロースあんかけ炒飯” が登場。
スプーンでひと口、カラリと揚がった肩ロースと青梗菜を絡めて、甘辛い餡が美味しい。
炒飯は薄味で謙虚に餡に主役を譲っているから、双方の相性はすこぶる良い。なかなかの一皿だ。

隣で冷凍レモンがぎっしり詰まったサワーを呷るご同輩が羨ましいなぁ。
リーチインに多様なアルコール缶が用意されていて、セルフで呑むスタイルみたいだ。
面白いね。今度はアフター6かオフに覗いてみようか。

<40年前に街で流れたJ-POP>
黄昏ダンシング / 麻倉未稀 1983


雄山神社とサバへしこと勝駒と 不二越・上滝線を完乗!

2023-11-18 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

岩峅寺駅(いわくらじえき)の3番線に佇む14760形は、富山地方鉄道のオリジナル車両だ。
ホワイトとグレーの塗装にあずき色のラインは雷鳥色と云うらしい。
午後の日を浴びながら不二越・上滝線に乗って呑みたい。

駅からほど近い雄山神社は霊峰立山を御神体とし、伊邪那岐神、天手力雄神を祀る。
山頂が峰本社であるのに対し、ここは前立社壇(まえだてしゃだん)といって立山信仰の拠点だ。
本殿に手を合わせて、この旅が安全でありますように、美味しいお酒が呑めますように。

雷鳥色の2両編成は、雄山神社の境内を抜けるとすぐに常願寺川の鉄橋を渡る。
対岸にある大正13年(1924年)竣工の上滝発電所は国指定登録有形文化財になっている。

14760形は肘掛け付きの転換クロスシートを並べ、座席番号を示すプレート、帽子掛けなどを備えて、
かつて優等列車として運用された名残を感じる。日に焼けた座席のモケットが寂しい。
こんな車両だったら缶ビールかワンカップを持ち込みたかったけど、駅周辺にお店はなかった。

雷鳥色の2両編成は、富山市街地に向けて田園風景の中、常願寺川扇状地を下っていく。
夏草がむしたホーム、ちょっとだけ歪んだ線路、錆びた架線柱、ローカル線の旅情たっぷりだ。

月岡駅で交換する下り電車も14760形、J3カターレ富山のラッピング電車とは3度目の邂逅になる。
やっぱり広告を入れた車両は満遍なく各路線を走らせるんだね。

車窓はいつしか田園風景から住宅地に変化して、雷鳥色の2両編成は少年たちが待つ不二越駅に滑り込む。

市街地の東端を舐めるように、google mapに緩やかな弧を描くと右手に車両基地が見えてきた。
終点の電鉄富山までひと駅を残して、本線と合流する稲荷町が不二越・上滝線の旅の終わりだ。

目の前の大型ショッピングセンターが茶色の瓦を載せた駅舎に影を落としている。
夏日が続いているとは云え、9月も半ばを過ぎて確実に日は短くなっている。

“勝駒” の菰樽を並べているのは新富町にある人気の居酒屋だ。
なかなか予約が取れないから、8時過ぎにアポなし突入、カウンターの最奥に2席を確保した。

先ずはYEBISUの生ビールで乾杯。
先付けの “タコと大根のやわらか煮” が絶品。煮汁の色に染まった大根が美味しそうでしょう。

緑に輝く爽やかなラベルの “羽根屋” は、さらりと飲みやすい特別純米だ。
角氷を敷き詰めたおけに富山湾に上がった鮮魚を抓んで、酒と人情料理「だい人」の夜は始まる。

呑み人は “へしこ” に目がない。米ぬかと鯖の香ばしい香りで2〜3合は飲めそうな気がする。
“千代鶴” は滑川の酒、立山山麓早月川水系の伏流水と富山県産米で醸す小さな蔵だ。
穏やかな香りでスッキリした口当たりの純米吟醸、でも “へしこ” の相手には上品過ぎるかもしれない。

大判でふわふわの “一番だし巻き卵” が登場、箸を入れるとジュワッと出汁が沁み出て美味しい。
“勝駒” は高岡の酒だね。五百万石を醸したキレのよい純米酒をゆるりと愉しむ。
〆に “じゃこおにぎり” を頬張って、富山の山海の恵みを味わいながら夜は更けゆくのだ。

富山地方鉄道・不二越・上滝線 岩峅寺〜稲荷町 15.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
悲しみがとまらない / 杏里 1983


ハロウィーンの夜は家呑み派 IL COLOMBAIO DI SANTA CHIARA

2023-11-15 | 日記・エッセイ・コラム

今宵はちょっと手を抜いて、デパ地下のお惣菜祭り。
“島豆腐とひじきのサラダ”、“海老の旨みソース”、“牡蠣のフリットレモンソース” を並べる。

IL COLOMBAIO DI SANTA CHIARA は、トスカーナの白ワイン。
その手の雑誌には白桃や梨のような香りとあるけど、そう言われればそんな気もする。
少々の塩味を感じて、だから海老だの牡蠣だのと良い感じになるのだろうか。

お化けやらカボチャやらの置き物を並べてハロウィーンの夜の1本が美味しい。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Scorpion / 中原めいこ 1983


称名滝と志鷹のおにぎりと清酒立山と 富山地方鉄道・立山線を完乗!

2023-11-11 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

レッドとオレンジがグラデーションしたラインの17480系、オールステンレスの都会的な電車でしょう。
東急大井町線から嫁いできた2両編成は、特急扱いで寺田駅の4番ホームに入ってきた。

本線と立山線が分岐する寺田駅は、Yの字をした2面2線×2の変わった構造になっている。
昭和6年(1931年)の開業時より使用されている木造駅舎は、駅名表札が「驛田寺」と右書きで表記されている。

まだ真夏日が続いている頃、本線と分岐した立山線に乗って常願寺川扇状地の東の端をまっすぐ南へと走る。
午前の陽射しにシルエットになったゴツゴツした岩峰は、クライマー憧れの剱岳だと思う。

扇状地の豊な田園地帯をひた走るレッドとオレンジのラインは、線路の微妙な歪みに大げさに揺れる。
線路の両脇にはススキの花穂が揺れて、ゆく夏くる秋を感じさせる。

岩峅寺(いわくらじ)駅で交換するマリンブルーはJ3カターレ富山のラッピング電車。
昨日の本線呑み鉄旅で、電鉄魚津から新黒部の間、この電車に揺られた。

扇状地の要に位置する岩峅寺を過ぎると、レッドとオレンジのラインは徐々に進路を東に変えていく。
左右から山肌が迫り谷を深めていく常願寺川を眺めながら “立山” をマイ猪口に注ぐ。
ブルーのラベルはキレのよい爽快感とコクを併せ持った特別純米酒だ。

深い緑の谷間に山小屋風のリゾートホテルが見えてきた。
ガタゴトとガーダーを響かせて常願寺橋りょうを渡ると終点の立山駅だ。

午前中のお祭りのような騒ぎが過ぎ去った立山駅、それでもケーブルカーの切符は3時間先まで取れない。
黒部立山アルペンルートの最初の関門である「立山ケーブルカー」は法律上は鉄道路線。
呑み鉄というゲームのプレーヤーとしては、乗らないといけない1.3kmなのだ。

この3時間を使ってちょっと寄り道、ワンコインの称名滝探勝バスが絶景へと誘ってくれる。
とは言うものの、バス終点からは30分のだらだらとして登り坂。汗が噴き出す。

落差350mは日本一という「称名滝」が目の前に現れた。
青空の裂け目から噴き出したような怒涛の雪解け水が、4段の滝を流れ落ちて滝つぼで飛沫をあげる。

立山駅に戻ったら「おにぎりの志鷹」で “山菜そば” を啜る。とろろ昆布が入るのが富山流か。
ふわふわの “おにぎり” を頬張りながら、温かいそばが美味しい。

ようやく乗れた13:50発のケーブルカー、クライマーや観光客に紛れて短い旅に出る。

立山駅と美女平の間は1.3km、標高差がおよそ500mをだから、植生が変化していく様が興味深い。

中間の複線区間で急坂を降りる2号機とすれ違った。この時間帯の立山方面行きは満員の乗客だ。
柱状節理の岩肌を左手に見ながら、ケーブルカーはつるべ式に繋いだ車両がバランスをとって上り下りする。

わずかに7分の旅でケーブルカーは美女平に到着した。
乗客の波は足速に引き続き室堂へと登るバスへと流れて、ぽつんとホームに残るのはボクだけだ。
今ごろの称名滝や美女平は、きっと紅や黄に輝く紅葉が盛りだろう。

富山地方鉄道・立山線 寺田〜立山 24.2km 完乗
立山ケーブルカー  立山〜美女平  1.3km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
蒼いフォトグラフ / 松田聖子 1983


Biz-Lunch 蕎誠庵あさひ@東池袋「鴨せいろ」

2023-11-08 | Biz-Lunch60分1本勝負

この辺りは谷底みたいになっていて、店の裏を走る都電は早稲田行きも三ノ輪橋行きもモーターを唸らせる。
旧くてちょっと寂しくなった商店街に真紅の暖簾を提げてそのそば処はある。
コンクリート打ちっぱなしのモダンな佇まいは、創業昭和24年の老舗だなんて聞かなきゃわからない。

少し多めに掴んだ二八を、旨みと甘みが凝縮した温かい鴨汁にサッと付けてズズッと啜る。なかなか美味い。
はじめましての店ではメニューに迷うけど、少しばかり冒険をして最初から “鴨せいろ” を択んだ。
打つ蕎麦はその日によって違うらしく、今日のは越前大野産と「本日の蕎麦」に案内があった。
白い花が咲き乱れる越前大野には最近訪れたばかり、こうした偶然はなんだか嬉しいね。
ランチメニューには小丼との合わせ技もあるから、遠からず再訪してみようと思う。

<40年前に街で流れたJ-POP>
艶姿ナミダ娘 / 小泉今日子 1983


風を感じて! 錦繍の赤城山とZとキノコピッツァと

2023-11-04 | 単車でGO!

青々とした牧草地が広がって、まるで北海道の牧草地のような風景でしょう。
昨夜、Webの紅葉情報と睨めっこして、目的地を赤城山に択んだ。カルデラ湖周辺が見ごろを迎えている。

ほぼ日の出の時刻にイングニッションを回してR17を北上してきた。朝の空気は引き締まるほどに冷たい。
4車線になったり2車線に戻ったり、まだまだ整備途上の上武道路、利根川を渡ると赤城山の存在感が大きくなる。

P17(上武道路)の高架を降りて、県道4号線へ右折する。
正面に赤城山を捉えて裾野を駆け上がると、ひときわ目を引く朱色の「赤城山大鳥居」が見えてきた。

県道4号線には100m単位で標高を示すサインボードが出ている。
雄大な裾野が広がる赤城山だけど、さすがに900mを越えると九十九折りが始まった。

1,000mのボードがキラリと煌めくころには、身体が硬くなった気がする。電光掲示板は10°を切っている。
外輪山を越えるピークは1,400m、その内側には錦繍の世界が広がっていた。

昨日は大陸から流れ込んだ寒気の影響で、上越国境は降雪とニュースが流れていた。
そのおすそ分けだろうか、最高峰の黒檜山(1,828m)にはシュガーパウダーが振りかかっている。

原生林に囲まれた大沼は80万㎡のカルデラ湖、北西の外輪山の切れ目から沼尾川となって流れ落ちる。
湖面の藍と、周囲の峰々にナナカマド・ミズナラ・カエデの赤や黄とのコントラストが美しい。

大沼湖畔に建つ朱塗りが美しい赤城神社は、赤城山と湖の神様「赤城大明神」を祀ったパワースポットだ。
穢れを清める手水舎で龍神が御神水を吐いているのが印象的なのだ。

最高峰の黒檜山(1,828m)直下で外輪山を越えたら、北へ流れる赤城川に沿って沼田方面に降りる。

この県道が根利川にぶつかると南郷温泉がある。
この地で神官や名主を務めた鈴木家が関東では珍しい曲り家を一般公開している。
庭先の足湯を拝借して一息、寒さで凝り固まった身体が溶けだすようだ。

県道62号線に乗ったら、赤城山の東麓をぐるっと巡って南に転針する。
Zが渡良瀬川渓谷に向かって降りはじめた辺りに、プチリゾート風の一軒家レストランを見つけた。

秋らしく柿が入ったサラダを突っつくうちに “キノコピッツァ” が焼きあがった。
厚切りベーコンと風味あるしめじを絡めて、トロりチーズが糸を引いて、なかなかの美味。
熱いコーヒーで一息ついたら、乾いた北風に背中を押されて都会へ帰ろう。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ASPHALT LADY / 杉山清貴&オメガトライブ 1983


Premium Sake Pub GASHUE × 北信流

2023-11-02 | 日記・エッセイ・コラム

金紋錦(長野県産酒造好適米)で仕込んだ、旨みあり華やかな香りありの純米吟醸で始める。
前菜は “秋映とモッツァレラのカプレーゼ”、長野りんごの酸味がこの酒にあう。

上野の Sake Pub で開かれる「酒蔵(蔵元)の会」に潜り込んだ週末の午後。
松代藩御用達、長野県小布施町の小さな蔵元「松葉屋本店」を呑む会を愉しみたい。

造里は “鰹のたたき”、もちろん信州で鰹は獲れないから、醤油を長野から持ってきたらしい。
爽やかな飲み心地の純米吟醸生酒は、山恵錦(長野県産酒造好適米)で醸した旨い酒だ。

信州中野、小布施、須坂、松代と、善光寺平にあって千曲川を挟んで長野市と向かい合う町がある。
いずれも観光資源を抱えているけれど、この蔵がある小布施が抜きんでて頑張っている印象だ。
栗菓子、りんご、巨峰、北斎、酒蔵、ワイナリー、高山温泉郷、上手に結びつけて魅力的な観光地になっている。

北陸新幹線を降りたら長野電鉄の特急で小布施までは25分、車なら上信越道の小布施ICで降りる。
冬季五輪を経て案外アクセスが良くなった「栗と北斎と花のまち」を訪ねたい。

焼物は “味噌漬け豚ロース”、こってり濃厚な味は、肉料理の中でも日本酒に合う一品だと思う。
通称「赤金」は兵庫県産山田錦で仕込んだ純米吟醸、きりっとキレのある辛口は肉料理でもいける。

小鉢で “野沢菜わさび” が登場、信州人のボクには嬉しいアテ、これで二杯は呑めそうだ。
ラインナップは生原酒に代って先ずは美山錦、瑞々しい口当たりはフルーツに喩えられそうだ。

ところで「北信流」とは松代藩発祥で北信濃に広がった宴会の儀式のこと。
お肴謡(おさかなうたい)と云って、宴の中締めで小謡を酒のさかなとして来賓に披露するものだ。
転勤や移住でやってきた方はちょっと驚くかも。そう言えば親父も先生について習っていたっけ。

次なる生原酒は金紋錦、木島平産の少量品種で仕込んだ旨みたっぷりの純米原酒だ。
揚物は長野のきのこを添えて “揚げだし豆富”、これまた泣かせる一品だね。

ラベルについている「GI」とは Geographical Indication、国税庁長官指定のお酒の地理的表示。
「GI長野」は、県産の原料を用いて県内で造る、確かな品質を誇る日本酒とワインの証なのだ。

そろそろ中締めの頃合いだけど、この「北信流の会」にお肴謡は無いんだね。
食事に “さつまいもの炊き込みご飯” が運ばれてきた。香りよく、ほんのり甘くて美味しい。

ガラスの酒器に注がれる三種目の生原酒は兵庫県産山田錦、故にGIマークは付かない。
味わいのある旨辛口は、心地良く味わえる純米酒、いつまでも呑み続けていたい。

さてここから純米大吟醸が三種登場する訳だけど、すでに記憶も怪しいので一種目だけご報告。
「何れ菖蒲か杜若」って、このオシャレなラベルは山田錦を醸した純米大吟醸。
甘味の “桃ジュースのシャーベット” を傍に、香り高い華やかな酒をデザートワインのようにいただく。美味しい。

信州の酒と肴に、懐かしいふるさとと未知の信州を味わって、上野の夜は更けていく。
こんど帰省したら、煉瓦造りの煙突が聳えるこの小さな蔵元を訪ねたい。

<40年前に街で流れたJ-POP>
22歳 / 谷村新司 1983