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本と映画とテレビと鉄道をこよなく愛するブログ

ある「照明さん」。

2007年03月08日 | エッセイ・日記・意見
ある飲み屋で偶然隣り合わせになった60過ぎの洒落た男性。話をしていると、昔、CMをフィルムで撮っていた時代、有名なCMをたくさん手掛けた「照明さん」だという事が分かった。本当に誰の記憶にも残っている様なCMである。やがて、CGなどがCMに導入され、撮影もVTR(Hi-Vision?orD1)で撮る様になり、今まで撮影現場で「いかにカメラフレームの中で照明を組み立てて光と影の演出をするか」に命をかけていた彼は業界を去った。

ドラマでもそうだが、「照明」で「映像」は見事に変わる。ただ、連続ドラマでは「照明」にかける予算も少ないので、普通は5キロ、多くて10キロの容量で、照明さんは苦心して「より良い映像」を創っているのである。一度、ある照明さんから、「このシーンはどうしてもクレーンの上から50キロの照明を当てたい」という要望があり、100万円以上の予算がかかったがやって貰った。やはり、テレビモニターで見ていると、「画面の奥行き」がちゃんと出て、素晴らしい映像になっている。ただ、レギュラーの家のロケで夜になってから深夜12時まで4時間もの間、50キロの照明を普通の住宅街に当てたので、「明るくて寝られない」等のクレームが来て、その日だけの「50キロの照明」になってしまったが・・・。それに、100万単位の予算をそうそう使えるはずもなく・・・。

多分、フィルムで撮るCMの「照明」をやられていたという事は、恵まれていたと思う。CMだから、連続ドラマとは予算の「桁」が違うし、当然、商品を美しく見せる為にはちゃんとした「照明」を創らなければ成立しない。
アメリカでCMを撮影した時のカメラマンが上田正治さんといって、晩年の黒澤明監督作品のカメラマンでフレームの創り方が素晴らしかったと語ってくれた。

その男性は今、「照明さん」から「赤帽さん」になって、毎日、軽トラックで荷物を運んでいる。多分、CMの撮影がフィルムからVTRになり、CGを使って編集で加工できる時代になって、彼は創作者としての「照明さん」でいたかったのだろう。そういう生き方を貫き通すのも「粋な生き方」だと僕は感じた。もちろん、実生活での苦労はたくさんあるだろうけれど・・・自分の仕事のグレードを下げてまで、その仕事をしたくない。今までの自分の仕事を「誇り」に思いたい・・・そんな風に考えたのではないだろうか。たった一夜の出会いだったが、「照明という仕事に対する彼の情熱・誇り」の一端を垣間見たというのは僕の錯覚だろうか・・・違う。錯覚などではない。焼酎のウーロン割りを飲みながら、素敵な出会いだよなぁ~と自分に語りかける僕がいた。

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