転覆事故は、浜名湖の岸辺から100メートルほど沖合で起きた。オールを操るカッター訓練中、荒天で動けなくなった20人乗りのボートを、救助のモーターボートがロープで引航している時だった。
「引っ張る速度が速くなり、オールが流された。ボートはだんだん傾いて水が入ってきて、最後はいきなりひっくり返った」。転覆したボートに乗っていた男子生徒(12)はこう振り返った。
「キャーッ」。午後3時半ごろ、湖上に生徒らの叫び声が響いた。湖岸に立つホテルの6階から事故を目撃した夫婦にも届くほどだった。
全長7メートルのボートには、生徒18人と、指導の教師2人が救命胴衣を身に着けて乗り込んでいた。転覆時、大半はボートの外に放り出され、船底にしがみついて救助を待った。だが、生徒によると、「4人くらいが、ひっくり返ったボートの中に閉じこめられてしまった」。亡くなった西野花菜さん(12)は、ボートの内側から見つかった。
生徒たちは「自然体験活動」のため、17日から静岡県立三ケ日青年の家に合宿していた。18日、浜名湖付近は訓練開始予定の午後2時ごろは雨が本降りになっていた。
「雨が降っているけどやるよ。波が強くて怖いと思うかもしれないけど、協力してこぎましょう」。訓練を催した青年の家側からは、生徒らにこう説明があったという。
生徒約90人と、引率の教師5人、インストラクター3人は、ボート4艇に分かれて乗船した。転覆したボートにはインストラクターは乗らず、指導は教師に任されていた。
訓練開始から約1時間が過ぎたころ、天候はさらに荒れ、波も高くなっていた。
「風が強くなり、ボートに波が当たって、グラグラと揺れた」。転覆したボートとは別のボートに乗っていた女子生徒(13)は語る。
転覆ボートに乗っていた男子生徒(12)は「あまり揺れるので、気分が悪くなった生徒も4人ぐらいいた」。立ち往生したボートはトランシーバーで救助を求め、沖合で待機。その後の湖岸に戻る最中の事故だった。
「団結してカッター訓練をがんばろう」。亡くなった西野さんは訓練の前、生徒を代表してあいさつをした。同級生によると、吹奏楽部でアルトホルンを担当。「優しくて頭がよく、大人っぽい感じ」だったという。
救助された生徒たちも、首まで水に漬かり、ずぶぬれの状態だった。女子生徒の一人は、同級生にこう語った。「死にそうだった。自分のことで精いっぱいだった」
◇
静岡地方気象台によると、浜松市は18日午後3時半すぎに風速6.7メートルとなり、午後4時すぎには最大瞬間風速13.4メートルを記録した。
近くのマリーナで働く男性社員(49)は「浜名湖の北側は、ほかの場所より風が強く、波が集まりやすい場所でもある。子どもたちが出航したのを見て、『雨が強くて視界も悪いこんな日によく出たなあ』と思った。日程を組んでいたから、無理をしたのではないか」と語った。
浜名湖でボートの販売や修理、保管などをしている「浜名湖ボートクラブカナル」の柴田昌宏代表(48)はこの日、新型ボートのテストをしていたが、昼前から土砂降りとなり、東寄りの風も強まったため、切り上げたという。転覆事故直後の午後4時ごろは、風向きは西寄りに変わり、横なぐりの雨に。「エンジンと浮力の大きいボートだったら大丈夫だが、手こぎボートでは今日は危なかった」と話す。
また、波が高い中で人を乗せたボートを引航すると、左右に振られて横波が入るなどしてかえって危険だという。「引っ張る船に全員を乗せ、空にしたボートを引く方がいい。人数が多すぎたら、ボートを漂流させたままでピストン輸送して陸に運ぶのが安全だ」と指摘する。
(朝日新聞より引用)
痛ましい事故。
「引っ張る速度が速くなり、オールが流された。ボートはだんだん傾いて水が入ってきて、最後はいきなりひっくり返った」。転覆したボートに乗っていた男子生徒(12)はこう振り返った。
「キャーッ」。午後3時半ごろ、湖上に生徒らの叫び声が響いた。湖岸に立つホテルの6階から事故を目撃した夫婦にも届くほどだった。
全長7メートルのボートには、生徒18人と、指導の教師2人が救命胴衣を身に着けて乗り込んでいた。転覆時、大半はボートの外に放り出され、船底にしがみついて救助を待った。だが、生徒によると、「4人くらいが、ひっくり返ったボートの中に閉じこめられてしまった」。亡くなった西野花菜さん(12)は、ボートの内側から見つかった。
生徒たちは「自然体験活動」のため、17日から静岡県立三ケ日青年の家に合宿していた。18日、浜名湖付近は訓練開始予定の午後2時ごろは雨が本降りになっていた。
「雨が降っているけどやるよ。波が強くて怖いと思うかもしれないけど、協力してこぎましょう」。訓練を催した青年の家側からは、生徒らにこう説明があったという。
生徒約90人と、引率の教師5人、インストラクター3人は、ボート4艇に分かれて乗船した。転覆したボートにはインストラクターは乗らず、指導は教師に任されていた。
訓練開始から約1時間が過ぎたころ、天候はさらに荒れ、波も高くなっていた。
「風が強くなり、ボートに波が当たって、グラグラと揺れた」。転覆したボートとは別のボートに乗っていた女子生徒(13)は語る。
転覆ボートに乗っていた男子生徒(12)は「あまり揺れるので、気分が悪くなった生徒も4人ぐらいいた」。立ち往生したボートはトランシーバーで救助を求め、沖合で待機。その後の湖岸に戻る最中の事故だった。
「団結してカッター訓練をがんばろう」。亡くなった西野さんは訓練の前、生徒を代表してあいさつをした。同級生によると、吹奏楽部でアルトホルンを担当。「優しくて頭がよく、大人っぽい感じ」だったという。
救助された生徒たちも、首まで水に漬かり、ずぶぬれの状態だった。女子生徒の一人は、同級生にこう語った。「死にそうだった。自分のことで精いっぱいだった」
◇
静岡地方気象台によると、浜松市は18日午後3時半すぎに風速6.7メートルとなり、午後4時すぎには最大瞬間風速13.4メートルを記録した。
近くのマリーナで働く男性社員(49)は「浜名湖の北側は、ほかの場所より風が強く、波が集まりやすい場所でもある。子どもたちが出航したのを見て、『雨が強くて視界も悪いこんな日によく出たなあ』と思った。日程を組んでいたから、無理をしたのではないか」と語った。
浜名湖でボートの販売や修理、保管などをしている「浜名湖ボートクラブカナル」の柴田昌宏代表(48)はこの日、新型ボートのテストをしていたが、昼前から土砂降りとなり、東寄りの風も強まったため、切り上げたという。転覆事故直後の午後4時ごろは、風向きは西寄りに変わり、横なぐりの雨に。「エンジンと浮力の大きいボートだったら大丈夫だが、手こぎボートでは今日は危なかった」と話す。
また、波が高い中で人を乗せたボートを引航すると、左右に振られて横波が入るなどしてかえって危険だという。「引っ張る船に全員を乗せ、空にしたボートを引く方がいい。人数が多すぎたら、ボートを漂流させたままでピストン輸送して陸に運ぶのが安全だ」と指摘する。
(朝日新聞より引用)
痛ましい事故。
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