思考の踏み込み

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完璧4

2014-04-26 06:17:16 | 
"双葉の前に双葉なく、双葉の後に双葉なし ー "

いわずと知れた角聖、双葉山定次。



国技大相撲に求道性をもって臨み、それを実績でもって体現した点で偉大な横綱であった。

有名な双葉の記録といえば、69連勝というのがあるが、これは今日と同様に測れるものではない。

当時は年二場所制であったから、足掛け三年に渡って無敗を誇ったわけである。
無理やり年六場所にあてはめれば、少なくとも250連勝くらいしているということになるが、まあそういう見方もできるというだけでこういった比較はあまり意味はない。

いずれにせよ、まる三年勝ち続けたということは驚異的であることは間違いない。

しかも彼はどんな相手でもまず受けて立ち、相手に力を発揮させてから勝つのであるから、これはより偉大な記録として浮かび上がる。

制限時間前の奇襲にさえ対応し、力水も一度しかつけないスタイルを確立させたりと、まるで剣客のような緊張感でもって相撲を取っていた。

歴代横綱の映像を見る範囲で比べても、明らかに双葉は強い。
それは腰の安定感をみれば一目瞭然である。

体重の上がった今日でもその強さは揺らがないだろう。

しかも彼は現役時代は明かさなかったが、片目が見えず、右の小指が使えないというハンデを背負っていた。



片目は言うに及ばず、小指の機能がいかに重要か、少しでも武道をかじったことのあるものなら知っていることだ。

それらを克服した上でのこの成績、やはり "完璧" な強さである。

近年でみると平成八年頃の、小錦を真正面から寄り切っていたほどの貴乃花は、あるいは双葉に近いところまで行くかと期待されたが、ハワイ勢の巨漢と立ち向かう為に無理な増量をして力士生命を縮めてしまったことは残念だった。

現横綱の白鵬はこの意味で戦後、双葉の次に強いと個人的には思う。



既に年齢的なピークは過ぎつつあるが、精進次第では今後なおも期待できる。
一相撲ファンとしては白鵬の存在はまったくありがたいものである。

異国から来た少年が、日本人でさえ忘れ果てそうな求道性という、双葉の精神を体現しようと精進しているということはまったく国民栄誉賞をあげて欲しいと思うくらいだ。

双葉は69連勝が止まった夜、恩師安岡正篤に電報を打ったという。

"イマダモッケイタリエズ ー "

木鶏 ー 木彫りの鶏の様に泰然とした、最強の闘鶏の境地には我未だ届かず ー という意味だ。

凡人には完璧に思えたその強さも、当人にとってはまだ納得のいくものではなかったのかもしれない。