数多くの間隙を持つ物質を多孔質体と言いますが、土はまさしく多孔質体に他なりません。多孔質体である土壌は重力に逆らって水を保持する能力を持ち、その水を吸収して保持するメカニズムは、表面張力に依る毛管作用(細管の吸水上昇)であります。
毛細管内の水面上昇
毛管が細くなればなるほど毛管上昇高さは大きく、毛管が太くなると毛管上昇高さは小さくなりますから、土を構成する土粒子が小さい程、保水量が大きくなり、荒い土は、それだけ排水性が良くなって保水量は小さくなります。
土壌水のエネルギー状態と移動
土の中の水は、重力に逆らって保持されて居る訳ですから、位置のエネルギー、ポテンシャルエネルギーを持っています。水のポテンシャルエネルギーは保持されている位置、あるいは内部の状態によって決まるエネルギーであり、実は、そのエネルギー量によって植物の養水分の摂取の容易さが変わり、成長の度合いも変わってきます。
土壌水には、土粒子との間の付着力(表面張力と考えても良い)や重力、さらにはイオンが溶け込むことで発生する浸透圧などが作用していますが、その土壌の固相のことを土壌マトリックスと呼びます。
土における水の不飽和形態
その土壌マトリックスと水との間に働く毛管力(付着力)に由来するエネルギーのことをマトリックポテンシャルと言います。
土壌水分特性曲線と土性
土壌は小さな間隙の集合体であり、土壌水はその土壌間隙に存在して居て、そこでは土壌マトリックスと土壌水との間に付着力が作用し、土壌水が引き付けられています。これが土壌の不飽和状態における水分保持のメカニズムであります。マトリックポテンシャルとは、この土壌水を引き付ける能力を表す指標であり、マトリックポテンシャルが小さいほど、より強く土壌水は土壌マトリックスに引き付けられ、それだけ植物はその水分の摂取が困難になり、成長が制限される事になります。
土壌に保持される水分量とマトリックポテンシャルとの間には、土性特有の一定の相関々係があり、その相関々係を表したのが、土壌水分特性曲線であります。土壌水分特性曲線では、通常マトリックポテンシャルの軸を常用対数で表します。このときの単位は[-cm]あるいは[-m]のように表記されます。したがって、縦軸の上に行けばいくほど数値は大きくなりますが、マトリックポテンシャルは小さくなります。負圧なので絶対値が大きくなるほどポテンシャル(エネルギー)としては小さくなります。
水分特性曲線とポテンシャル領域(不飽和形態)
実は、新プランター栽培で採用している培地は、土壌と同様の多孔質体であり、その保水メカニズムが植物に最適な条件となるような物性を有しています。それは、上図の水分特性曲線ような空気侵入圧上側のマトリックポテンシャル領域の一定の範囲内の大きな張力下で、植物に最も好ましいフラットな保水領域(毛管領域)を持つ多孔質体であることです。
新プランター栽培では、その領域に養水分を底面給水できるように栽培装置を構成し、より少量の培地量でより高い生育効果が得られるようにしているのです。
土壌断面内における水分の形態
上図は、一般の圃場などの土壌内の水分形態を土壌断面で表した図ですが、降雨や散給水によって土壌面に与えられた水は、懸垂水帯及び毛管水帯に保持されるのですが、土性によってその保水量は異なり、毛管上昇水も地下水位によって違ってきます。
異なる土性の土壌水分特性曲線
容器用土栽培となると、容器内土壌は毛管水域とは隔離された懸垂水帯域であり、其処に保水性と通気性を保持させるためには、保水性の高い赤玉土や水はけの良い荒砂等を配合した培養土を用いるのですが、容器内では、給散水によって保持される水分量、保水能力(容水量)や空隙率等の団粒構造は、作物の生育共に変化し易く、それが栽培結果を大きく左右する事になります。従って、用土の配合物性だけではなく、容器用土量が最も大切な要件になり、20-30Lと大きな用土量の確保が野菜栽培プランターでは必要になってしまいます。
植物との関係からみた土壌水分の分類
植物との関係から見た土壌水分を、その持つエネルギーレベルで分類したのが上図の分類表であります。表示されているpFは、ポテンシャルのPと自由エネルギーのFの意味であり、pF分類は、負圧で表示されるマトリックポテンシャルを簡潔な表示の対数値で表したものであります。単なる水分量だけでは無く、土壌水の持つエネルギー量が大変重要であり、作物の易生育有効水分量と言う考え方がその知見で明らかにされているのです。
水持ちの良い土は植物が中々その水を利用する事が出来ないと言う事になります。言い換えれば、水持ちが良ければ、それだけ育ちが悪くなるのです。
容量約2.5 Lの学校教材プラ鉢で育つミニトマト「アイコ」5段果房開花中ですが、今年は、早くも1段目は赤く成り始めました。
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