白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―堆肥による窒素飢餓―

2013年04月30日 | 土壌

窒素は植物が尤も大量に必要とする栄養素ですが、過剰な窒素肥料の投与による農地からの流出する硝酸態窒素、家畜糞尿、生活排水も亦その発生源と言いますが、その硝酸態窒素の地下水汚染が今、深刻な社会問題と成っています。

「有機栽培」では、化学窒素肥料の使用を完全に排除していますので、空気中の窒素を固定する微生物を利用する緑肥植物、堆肥や有機物肥料からの無機化される窒素成分だけが、肥料として許されると言う事ですが、その有機栽培であっても有機、無機に関係なく、土壌の過剰な窒素成分は硝酸態窒素となって当然、同じように地下水汚染の原因になる事はご存知のとおりです。

 

―窒素固定する緑肥植物のれんげ草――筑波農場ブログより

植物に必要な肥料要素は、窒素以外の多量要素のリンにカリ、次にマグネシュム カルシュウム、硫黄であり、あとは微量要素と呼ばれる鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、銅、塩素、モリブデン、ニッケルの全部で14種類が必須の元素であり、有機農法では、窒素以外のそれらの無機元素は基本的には肥料として土壌へ添加することが認められています。

 

―植物に必要な14種類の必須無機要素―

作物にとって大切なのは、それらの必須無機栄養素が適切な分量の構成比で施肥される事であり、それらの成分を作物が効果的に摂取できるようにするには、土壌が適正な保肥力を持つ事です。健全な土壌とは、その組成と適度な土壌水分の保持と排水性をもたらす土粒子間隙を維持する団粒構造と良く言われています。

 一般の農地土壌では、含まれる腐植による保肥力の向上と土粒子の団粒化の促進の為に、毎年一定量の堆肥の施用が好ましいと言います。その堆肥からは肥料成分となる諸要素も合わせて添加されますが、圃場の土質や栽培作物に依って、経験的に堆肥の施用量をきめているのでしょうが、どんな堆肥をどのくらい入れるかで其の効果は違い、必ずしも多く施せば良いと言う事では有りません。

 一定量を超えて土壌に無機成分が蓄積すると返って肥効が悪くなり、特に過剰な微量要素の蓄積は稙物に取って有害となり、バランスの取れた良質な堆肥の適正量の施用が肝心と言います。

 

―土壌の理想的な三相分布―

良質な完熟堆肥と言っても、リンやカリ、亜鉛等、一部の微量要素が高度に濃縮されていれば、窒素成分とのバランスを欠き、窒素成分の補完が必要となり、堆肥施用が不適切と言う事にも成り兼ねません。所謂一般に言う窒素飢餓です。

 

―典型的な窒素欠乏した葉の写真―

家庭菜園等では、多くの方が有機栽培志向もあって、堆肥や有機肥料ならと目分量で施したりしていますが、必要な肥料分の不足による成長不良や遅れた肥効の窒素過多等が原因で病虫害に見舞われる事も多く、其の上、無農薬であれば、市販の野菜に匹敵するような見栄えの良い収穫を上げるのは大変難しく、有機肥料だけの野菜栽培は中々期待した結果が得られないのが実情です。

その多くの場合が窒素成分の肥効に原因があるのですが、家庭菜園だから結果には拘らずと自分に言い訳し、窒素成分が多いと野菜の味が落ちると勝手な解釈をされる方もいらっしゃいます。

 実は、其の堆肥に必要とする窒素の補完に就いての話が、ネット上のコロラド州立大学の公開講座の中に紹介されていました。

 

―コロラド州立大学―公開講座―

その結論から申し上げると、一般に言う炭素率、C/N比が堆肥の施用には大切であり、堆肥の施用に依って窒素が無機化されて肥料効果を発揮できるかどうかは、堆肥の炭素と窒素の質量比にあり、其の境が20対1であると言う事です。そこで重要になるのは、堆肥の一般に表示されている炭素率であり、それに従って必要な窒素の補充量をきめなくてはなりません。

 理論的には、炭素率が20を超える堆肥には、炭素率が20になるように窒素肥料を添加する必要があり、例えば、日本で公表されているウッドチップを堆肥化したバーク堆肥の例で言えば、炭素率は35以下とあり、参考までにそれに倣って炭素率20以下にする添加に必要な窒素量を計算してみます。

 

―バーク堆肥工業会のHP写真―

バーク堆肥の乾物重量が70%とあるので、C/Nを20にするには、1袋30㎏のバーク堆肥に添加の必要な窒素量の計算は、30x0.7x1/35=0.6kg がバーク堆肥に含まれている窒素量であり、添加の必要な窒素量をC/Nで20とすると、30x0.7x1/20=1.05-0.6­=0.45kg が添加の必要な窒素量となります。 

 

  ―バーク堆肥―

これを、窒素含有量が46%の尿素で必要な窒素量を補充するには、0.46x1/0.45=1.02kgとなり、1袋30kgのC/N比35のバーク堆肥を施用するに当たって、約1㎏の尿素を添加しないと、窒素飢餓が発生して生育が阻害される事になる計算です。

もし、有機栽培だからと、必要な窒素量を菜種油粕で補充しようとすれば、一般に、菜種油粕に含まれる窒素量は、約5.2%と言われ、其の無機化率は概ね60%程度とされていますので、0.45kgの窒素の添加必要量を単純に計算すると、1/0.052x1/0.6x0.45=14.4㎏にも成ります。

 

―有機肥料の定番菜種油粕―

前記のC/N比35以下のバーク堆肥、30㎏の施用で、菜種油粕で必要な窒素量を補充するとすれば、なんと14kgも必要となる計算です。

農耕土壌が涵養するバイオマスの保全に、エネルギー源となる炭素率を維持していくには、それに見合った窒素の添加が必要であり、地力と言われる土壌微生物による有機窒素の保全には、それだけ余分に無機化のための窒素の補充が欠かせないと言う事です。

 

  ―良い土とは生きている土―

しかし、補足する窒素量のコストから、可能な限り経済的な窒素源を選択すべきですが、其の他に考慮すべ大切な点は添加する堆肥の熟成度であり、それに有害な発生物質の混入の怖れが無い事です。

具体的には、ウッドチップの堆肥化には、家畜糞や作物残滓に比べて長時間を要し、材料に依っては有害物質が堆肥化の過程で発生混入する可能性もあります。

下水処理汚泥等の微生物残滓が使われていれば、有毒な重金属が濃縮されている怖れがあり、其の品質の確認が必要と言います。

家畜糞尿堆肥では、土壌塩分濃度の上昇の怖れや雑草種子の添加を招く場合があり、注意が必要と結んでいます。

 

―堆肥も無縁な新プランター栽培で収穫した夏野菜―

差し詰め日本では、今尚、堆肥の施用には高濃度セシウム放射能汚染堆肥を土壌添加する怖れがあり、どんな堆肥をいれるか原料の入手先の確認が難しいのですが、窒素は作物栽培で中心となる尤も重要な肥料要素であり、堆肥を施用するならC/N比20を目安に、適正量を如何にうまくコントロールするかで、穀物収量から野菜の良し悪し、味や風味も決まるのです。

特に過剰な窒素成分に弱いトマト栽培では、土壌の全窒素量と水分量の適否が難しく、味に風味に収量迄が全く違ってきます。

尚、この記事は丁度1年前に発表したのですが、今般一部加筆訂正して再掲させて頂きました。

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ピーターアンダーソンについて (松井浩章)
2013-05-02 15:27:05
2012年3月24日「日本のエアルームトマト」の話しを興味深く読みました。ピーターアンダーソンとポンテローザのことを詳しく知りたいのですが、資料などを教えてもらえたら、非常に助かります。
私はライターで、熊本のトマトのルーツを調べています。よろしくお願いします。

matsui@dodoedit.jp
ピーターアンダーソンについて (管理人)
2013-05-03 09:13:15
松井様

お尋ねの件ですが、資料の様なものは無く、全てネット上でKeywordを入れて検索した結果の情報です。
ネタ帳の様なものは残していませんので、情報のアクセス先の記録が無く、具体的には申し上げられません。悪しからずご了承ください。

唯、検索結果で得た関連情報をKeywordにして追っていくと調べたい内容がはっきりしてきます、語学力と根気の必要な作業ですが、何よりも好奇心が大切です。
早速、Peter Anderson & Ponderosaをgoogleで検索
してみてください。

ありがとうございます。 (松井浩章)
2013-05-03 09:47:37
ご返事ありがとうございます。
さっそくやってみます。
新プランター栽培 (玉野井いづみ)
2013-05-31 16:51:22
家庭菜園の野菜の生育状況に疑問があり、「もしや窒素飢餓では?」と思い立って、それについて調べていたら、このブログにたどり着きました。
たいへん興味深く読ませていただきました。
高度過ぎて、私のオツムでは消化しきれませんが、試しにやってみたいと強く思いました。というのも、メロンとスイカとかぼちゃをどうしてもプランターで育てなければならない状況になった(発芽しすぎて畑で栽培しきれない)のですが、一般的サイズのプランターしか手持ちがなく、どうしたものか考えあぐねているところでもあったからです。
ずっと前の記事に3000円プラス送料1000円でお分けいただけると書かれておられましたが、今でも残りがありますか?もしもあるのならぜひともお分けいただきたく存じます。
新プランター栽培 (管理人)
2013-06-04 12:00:47
玉野井様

お返事が遅れて申訳ありません。お問い合わせの件ですが、手作りの栽培装置ですので手間が掛かり、現在在庫も無く、お譲りする事ができません。
せっかくの申し出に大変失礼ですが、悪しからずご了承下さい。
尚、このような標準プランターで野菜栽培を行う大きな利点は、容易に移動設置ができる点です。
おっしゃられるメロンやスイカ、かぼちゃなどは蔓ものですから、這う場所が必要で、用土栽培なら、それほど蔓も伸びませんから良いのですが、新プランター栽培では蔓が広がって困り、どちらかと言うと不向きです。
どうしても容器栽培をお望みでしたら、10号菊鉢の
培養土栽培をされてはどうですか。
肥料ですが、8-8-8の化成肥料を水に溶かした
液肥で与えます。
その量の与え方ですが、100~300ppmの液肥してで与えます。
8-8-8ですと、N.P.Kが8%含むという事ですから
1Lの水に2g溶かせば、160ppmの液肥になります。
それを成長状態にあわせ散水かわりに与えます。
その都度溶かすのは大変ですから、計算して濃い肥料原液を作って置いて、水で薄めながら利用します。
どうぞ、お試しください。
ありがとうございます。 (玉野井いづみ)
2013-06-09 19:00:27
ご丁寧な返事と情報、ありがとうございます。
そちらの使われている資材は、液肥だけでなく用土がなにか特別なもののように拝見しましたので、お願いしていた次第です。

液肥についてはご教示の通り、試してみようと思います。メロンやスイカ、かぼちゃについては、立体栽培を試してみようと思っています。すでにスイカとかぼちゃについては、畑・プランターと両方で育てています。メロンについては、雨に当たらない方がいいとのことなので、巨大プランターにドーム状のビニールを被せるべく、本日資材を準備しました。

ただ、よろしければ、そちらが使われている「軽量な用土」について、もう少し詳しくというかわかりやすくお教えいただければ幸いです。持ち運び・移動が現在の用土ではたいへん重いのです。
いろいろとなんでもチャレンジしてみたい私です。
計算の前提が違うのでは? (通りすがりの農家)
2020-06-13 16:26:27
70パーセントは堆肥の乾物重量ではなくて、
堆肥の乾物重量に対しての有機物量です。
全国バーク堆肥工業会の品筆基準によれば、
堆肥の全重に対しての有機物量は、
含水率は55~65%ですので、60%として、
(1-0.6)×0.7 = 0.28
となり、「28%以上」となります。
(仮に、70パーセントが全重に対する有機物量だとすると、「含水率 60±5 %」とつじつまが合いません)
更に 全有機物量=全炭素量 ではありません(有機物にはCのほかにもN、O、H、P、S、キレートされた金属なども含むはずです)のでそのまま単純にC/N比を使った計算には適用できないと思います。
全窒素量が乾物量に対して「1.2%以上」、C/N比が「35以下」ですので、仮に1.2%・35とすると
0.4 × 0.012 × 35 = 0.168
より、全重に対する全炭素量は16.8%となります。
すなわち、40L(20kg)のバーク堆肥C/N比を35→20にするために必要な窒素量は、同じ前提だと
20×(0.168÷20 - 0.168÷35) = 0.072
より72gになると思います。

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