白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―硝子の下の技術革新―

2015年02月17日 | 農法

硝子の下の技術革新とは 「ウエスターンシドニー大学に建設される、ユニークな特徴を備える最先端設計の世界トップクラスのガラス温室、オーストラリアの施設園芸を進展させる為の研究開発に焦点を置きます」と書かれている、愛読するオーストラリアのウエブ雑誌に紹介されていた記事の標題(Innovation Under Glass)です。

 

―オランダヴァーヘニンゲン大学構内温室―

 先のブログで日本農業の将来は、此の儘では立ち行かい事は明らかであり、農業に対する理解を新たにする新しい価値の創造、然るべき先端農業技術への革新を目指すしかありませんと、大層な事を申し上げました。

 日本がTPPの参加で農産物の市場開放を求められるのは今や時代の趨勢であり、それに対向するには、ハイテクジャパンと呼ばれるのに相応しい、農薬使用大国等とカウントされない、世界に誇れる高品質で安全な農産物が輸出できる国、そんな方向に活路を求め、高生産性と独自の競争力を養って、国際市場に打って出るのが日本農業の選択肢と言う事かも知れません。

そうなると、狭い国土でも充分成り立つハイテク農業生産、言うなれば高度な施設園芸が注目され、「オランダに見習え!」と、既に多くの方がオランダ詣でをされて居られる様です。

しかし、オランダで進んだ農業技術、日本とは異なる諸事情の下での成功例であり、国の手厚い施策が背後にあって成し遂げられた官民挙げての農業ソフト技術でもあり、それを如何程に理解して、日本でも可能と捉える事ができるかはいささか疑問に思われます。

 

オランダ農業技術の要衝のヴァーヘニンゲン大学全景

農産物輸出が日本農業の再構築の一端になる!一寸考えてもその難しさは並みでは有りません。国情や気象条件の違い、対象となる作物選択に海外市場開拓等、難題が山積しています。

それらを含めた課題解決の前に、先ず必要なのは農業者の意識改革であり、阻害要因となる現有諸制度に馴染んで来た古い体質から変えて行かなければなりません。

 そんな事を考えながら、その雑誌記事を読ませて頂いたのですが、とても日本農業の将来の参考になる様には思えません。

唯、国によって事情の異なる施設園芸の捉え方、その点には何か意味があるのではと思い抄訳になりますが一寸内容を紹介させて頂きます。

 

―雑誌ハイドロポニックス&グリーンハウスのロゴ-

 抄訳

ウエスターンシドニー大学ホークスベリーキャンパスに設置される、此の最先端をゆく新しい温室施設は、オーストラリアの施設園芸産業に、増大を続ける水不足と逼迫するエネルギー供給に対応する技術を提供する事になります。

 建設されるこの温室は、大学と園芸会社との350万ドルの共同事業の一部であり、2015年9月の最初の植え付け開始を目指して、2014年12月に着工されました。

重点作物はトマトでありますが、園芸会社側との相談で、パブリカ、茄子、レタス、イチゴ、切花等、他の作物の研究にも注目して行くことになります。

温室内では、モダンな高精度ハイドロポニックス、慣行用土栽培システムの両方の方式での利用を行っていきます。

 事業の目標

オランダのWageningen大学の温室園芸研究所と共に尤も近い位置に所在する良く知られている同様の温室研究施設から提供されたものであり、新施設はオーストラリアの施設園芸に於ける重要な研究と合わせ、其の教育面のギャップを埋めるものになります。

 大学の副学長で研究開発担当のScott Holmes教授は、主要な業界組織と連携しての投資と歓迎し、「施設園芸は、オーストラリアの重要な産業であり、ウエスターンシドニー大学が、この興味ある新率先事業を園芸会社と共に、密接な協力の下で行えるのは喜ばしい」と申しています。

参画する企業側のDavid Moore社長は 「この新温室はオランダで設置されている方式をベースした、二酸化炭素、照明、温度、湿度、室内遮蔽方式を制御する各々の能力を備えている」と語っています。

 「この研究は前もって海外で実施されねばならなかったのであり、オーストラリアの諸条件は考慮されてはされて居ない。主要な課題はこの分野の人材不足にあり、オーストラリアでは園芸を専攻する学生が減り、更に園芸の各学科分野での研究課目を提供する大学数が減少している」と、David Moore氏は言います。

「このプロジェクトが研究と教育の明確なシナジーを構築して、我々が挑戦するこれら課題の克服を

助力ける事になる」

「ウエスターンシドニー大学の本プロジェクトへの投資は、多くの実りを齎す祝福すべき事柄であり、高度な予見が抱ける」と彼は言います。

 「このハイテク温室施設は、当大学の都市近郊園芸に新焦点を当てる試みに完全に適合している」と、持続可能な農業及び地域開発を専門としているBill Bellotti教授は言います。

「温室作物生産は、迅速に市場に運搬できる生鮮食品の需要に応える為に、今オーストラリアでは拡大して居ます。此の新しい大学の施設が、生産者の活動をより効果的にする為の最新研究の実践化へ踏み出す助けになる」と、Bellotti教授は亦言います。

 

Professor Bill Bellotti, the Vincent Fairfax Chair

in Sustainable Agriculture and Rural Development at UWS,

「本プロジェクトは、ウエスターンシドニー大学の持つ世界レベルの植物科学の専門知識とオランダWageningen大学の持つ最先端温室テクノロジーとの融合であります」

Bellotti教授の同僚には、植物生理学、分子生物学の専門知識でのARC DECRAフェローである講師のZhong-Hua Chen博士が居ます。

農業と園芸は、本学、ホークスベリーキャンパスにとっての研究中枢となる領域であります。科学及び健康学部とホークスベリー環境研究所は、各年毎に外部からの研究資金を受けていて、両分野の強みとなる中枢的な研究活動の場であります。

「此の温室プロジェクトの主導権は、2009年にこの学内プロジェクトを発議したBellotti教授が握っていて、温室のエネルギーと水の効果的な利用に関する設計と運営から始まりました」

 「その後に、Bellotti教授はオランダから来た国際的な温室の専門家である、Sjaak Bakker博士とSilke Hemming博士の両名に会われ、私は12011年に温室園芸研究に焦点を絞った植物生理学の研究講師として任命されました」と、Chen博士は言います。

 爾来、Bellotti教授とChen博士は、温室プロジェクトの設置に従事して来たのであり、慣行温室内でのトマトの光合成における光強度とスペクトルの効率に関する調査、養分と収穫量の関係等の中枢となる研究作業を実施して来ました。

二つの研究結果が、先駆的な国際科学誌で発表されています。けれども更なるハイテク温室研究の増大する必要性が生まれたのであり、其の改善提案が園芸会社によって年初頭に承認されました。

 Bellotti教授とChen博士に依れば、プロジェクトの目的は、基本的にはオーストラリアに於ける被保護作物生産の研究と教育の機会の前進であります。本プロジェクトの達成で求めている目的は、

 • オーストラリアの諸条件下での温室作物生産で、水とエネルギーの効率研究が実施できる最先端を行く研究温室の設計、建設及び其の稼働。

 • 当初からの水とエネルギーの効率に焦点を置いて、イチゴ、レタス、茄子、ピーマン、切花等の主要温室作物の産業に関連した研究プログラムについての計画と実施活動。

 • 被保護作物生産の為の教育を受けた熟練労働力の不足の現状に向けて、一連の教育及び訓練プログラムの製作と有効利用の準備。 

 

A $3.5 million joint initiative between the University

of Western Sydney (UWS) and Horticulture Australia Limited

 温室の特徴

温室の主なる特徴は、作物の生長とエネルギーバランスを操作する為の温室に設置される被覆材料の互換性を備えていることです。

完全密閉型の温室システムは、高湿度、CO2の作物に対する効率、水と使用エネルギー量に就いての研究を容易にします。

其処が従来の温室との違いであり、24時間自動的に、CO2濃度、温度、湿度、光量を変化させて、水とエネルギー量を低下させる一方で、高生産性を得られるようにする事が出来るのです。

 生育環境の制御

温室内のエネルギー、水、養分量が各区画、コンパートメントベースで監視出来るようになって居ます。コンパートメント毎に、温度、湿度、CO2、灌水量、噴霧量、灌水排出量、養液pH&EC、加熱装置からの熱流量メーター、冷却システム、ポンプ、電流計の監視モニターセンサーが、其のセットポイントおよびモニトターへの設定を行う中央の制御コンピューターに接続されています。

 設備のユニークな特徴は、環境要素の組み合わせの変更設定、例えば、高CO2で高放熱量、

高湿度での高放熱量など、従来の温室では出来ない事が可能になる事です。

 

Professor Bellotti’s colleague

on the project, Dr Zhong-Hua Chen

 温室の被覆材

温室内の各区画、コンパートメントが被覆材の互換能力を備えています。当初の焦点は光の拡散でありましたが、後になって、光合成活性照射(PAR)から近赤外線(NIR)を区別する材料が焦点に含まれるようになりました。

温室の被覆材の異なる拡散特性が、オーストラリアの日照条件で、作物の光合成に与える潜在的なインパクトを調査するのです。実験の為の正確な材料選択は、毎年大学側で行われますが、設計に当たってはWageningen大学側の助言で当初は決定します。

 閉鎖条件

温室の各区画、コンパートメントは、“解放”、“半解放”、“閉鎖”の設置配列で作動できる能力を持ちます。“閉鎖”の条件下では、生産性の向上と水の使用量の減少の可能性がありますが、投下資本の増加と高度な管理能力が必要になります。

 閉鎖型温室では、温度、湿度、CO2レベルの完全制御が出来ますが、オランダでの研究では、収量が20%増加させる事が可能であり、オランダの気候条件で、トマト1kg当たり、圃場栽培トマトの601Lに較べて、41Lの水使用量の低下が示されています。

従って、ユニークな環境要因の組み合わせの生理学的な境界で、異なる作物での実験が商業的にも魅力的な組み合わせの探求の為に実施される事になります。

 

will look at other crops based on industry consultation

 such as lettuce, capsicum, eggplant, strawberry and cut-flowers

 水及び養分供給システム

其の他のユニークな特徴は、各区画、コンパートメント毎に分けて水と栄養分を混合して供給できるようになる事です。中央養水分供給ユニットが、異なる温室内区画、コンパートメント毎に水と養分を混合して供給するのです。必要量は相談で決めます。作物の使用量は監視され、排水も監視しリサイクルされます。

雨水は集積して貯蔵され、灌漑システムで利用され、貯蔵タンク量は設計段階で決められます。

 将来のトレーニング(省略)

大学側の訓練計画に関する内容ですし長くなるので省略させて頂き、以上で内容の抄訳を終わらせて頂きます。

 

will be used in the greenhouse to grow

 crops such as strawberries.

尚、日本でも、既に農林水産省からの補助金で千葉大学に設置された植物工場の実証・展示・研究拠点があり、同レベルの研究が実施されています。

日本ではその出発点が養液栽培であり、此の様な環境制御できるハイテク温室を植物工場の一環とするハードウエア的側面で捉えていて、オランダの収穫レベル同等のトマトの実証栽培結果が得られていると明言されています。

唯、其処には農業の捉え方での園芸との区別、大企業が参画できるその考え方が何かはっきりして居ないように思われて成りません。

 

―日本生物環境工学会植物工場シンポジュウムーより

そのような養液栽培施設園芸も農業の範疇には入るでしょうが、生産コストで大きく違い、慣行農業より優位に立てる作物種は現時点では極限られています。

世界でも、植物工場と呼べるような施設園芸で商業的に成功しているのは、ハイドロポニックスから始まったトマトやレタス等、極限られた数種類の作物種に一部花卉類しかありません。

作物の成育環境を制御して生産性を向上させる農業として高度施設園芸栽培を捉えるなら、それは革新技術プラス制度改革が必要な特殊形態農業とするしか無いように思われます。

 オーストラリアの「硝子の下の技術革新」、結論はまだ先ですが、どんな事になるか結果を知るのが楽しみです。

 ブログランキング ブログコミュニティ にほんブログ村

 家庭菜園(プランター菜園) - 花ブログ村


最新の画像もっと見る

コメントを投稿