白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―根圏は植物のバイオトイレ!―

2015年02月09日 | 土壌

植物は独立栄養生物であり、従属栄養生物である人間や他の動物等とは違いますが、同じ生物ではあり、その生命活動の中で、何らかの代謝老廃物の排出があって然るべきと考えられます。

動物の栄養代謝は見ても分かるように、はっきりした排泄器官と排泄物が認められますが、植物ではそれがはっきりはして居ません。その為に植物の代謝は完璧と信じられて来たと言います。

 しかし、植物は根から吸収した水分の殆どの98%余りを葉から排出(蒸散)させており、光合成の結果、葉からも酸素を排出しており、これなら誰もが知っている周知の事実であって代謝廃物と言う事になります。

 

―植物の葉と根のイメージイラストー

ところが植物は亦、其の根から水分(動物の尿に相当)を排出しているのであり、その事を実験で確かめた話があって以前にブログ記事で紹介した事が有ります。

 先のブログ 「土は生きている」の中で言った 「土壌水分のポテンシャル勾配」、言い換えれば、重力に逆らって保持される水分量の位置によっての「違い」でありますが、植物はその水分勾配の湿潤端側にある根で養分を含む水分を吸収し、勾配の乾燥端側にある根からは代謝による排泄物を含む液体、言い換えれば尿を排出していると言うのです。

 今から3年程前に、当ブログ記事で発表した標題 「NFT耕の生みの親、Dr. Allen Cooperの実験」で、その事を書いたのですが、もし見て居ないようでしたら、上記をキーワードにして検索し、先ずその記事からお読み頂いてください。

 

Dr Allen Cooper

その実験結果を発表された方は、商業目的の水耕栽培法では、画期的な栽培原理に基く装置として高い評価を受け、現在尚も多くの実施例のある “Nutrient Film Technique” NFT(薄膜)耕と呼ばれる水耕栽培法の考案者である英国の研究者、アレン クーパー博士です。

其のユニークな装置構造、土壌を離れる事で高い生育効果を達成する養液栽培では、培養液の流動化が絶対要件となっていますが、その理由の一つは、発生する土壌根圏微生物の持つ、根から脱落する有機老廃物を清浄化する大切なバイオトイレの役割、言い換えれば水洗トイレ機能であり、特に豊富に溶け込む溶存酸素量でそうした機能の高効率化を図った流動養液栽培法で有ると言う事です。

 その上、今日本では、ホビーカルチャーで流行って居るDFT(湛液)水耕とは違って、養液循環動力も養液タンク量も少なくて済む極めて経済効率に優れています。 

 余談になりますが、思い返せば今から10数年前、新プランター野菜栽培の特殊培地に依る静止養液栽培に行き着くまでは、このNFT耕に基く簡易養液流動栽培に熱中して、其の手作り装置で散々「ミニトマト」栽培に明け暮れしたのを今も思い出します。

 

       ―NFT耕のシステムイラストー

話を戻しますが、標題の「根圏は植物のバイオトイレ」の大切な根圏の役割、容器用土栽培でも、一般耕地土壌栽培でも、当然その考慮が必要であり、其の要件は健全な根圏微生物を涵養できる土、又はそれに替わる媒体の機能構造であります。

其のカギとなるのが、植物根を囲む領域の孔間隙量とその間隙径であり、其処に構成される好ましい気相、液相、固相の配分構造であります。

特に容器栽培の媒体の機能要件ではこの点が大切であり、加湿や酸素不足に依って起こると言う「根腐れ」現象、媒体のバイオトイレ機能不全に有る事は言う迄もありません。

 そして、限られた容量であっても必須となる、用土の水分勾配でもたらされる根域の清浄化、実は容器用土栽培では、其の健全な機能の維持が問題であり、度々の給水で用土は固化して団粒構造の破壊が起こり易く、栽培期間が伸びるとそれがどんどん悪化して、長期栽培となる作物種での健全な生育が、益々困難になる悪循環が発生する事です。

 

-根圏Rhizosphere)のイメージイラストー

其の意味では、先のブログでも触れましたが、容器容積を大きくし、排水性を良くする粒状材を多く配合するなど様々な試みがなされていますが、その他の容量因子の作用が必ずあり、本当にそれだけで良いのかは、正直なところ植物に聞いて見なくては判らないと言う事です。

 植物の根部から脱落している根圏微生物への栄養分、植物の全光合成産物のなんと12-40%にも達すると言われて居ります。

自然界にあって、其処に棲む微生物群が、その豊富な栄養分を放って置く訳が無く、植物の根圏には高密度の微生物叢が形成されるのは当然であります。

其の事を明らかにしたのは、今から100年以上も前に、根圏(Rhizosphere)と命名し、その用語を最初に発表したドイツの科学者、Lorenz Hiltnerであり、彼が、其処に病害から植物を守る作用、作物養分を還元する作用等、植物に取っても好ましい根圏環境が保たれる事を発見したのです。

 

―土と植物と根圏と微生物の関係イメージイラストー

今、日本の多くの産地圃場では、限られた野菜種に依る単作農業が盛んであり、当然起こる連作障害を避けるには、一部の有害土壌線虫や土壌感染性病原菌に対する防除が目的ではあるのですが、土壌消毒が欠かせません。

其処で問題となるのが土穣殺菌剤等の農薬の使用であります。一般に農薬に選択的効果は期待出来ませんから土壌殺菌剤の微生物生態系への影響、土壌の持つ植物トイレ機能の崩壊喪失に繋がります。

環境に優れた適応能力を備える植物の事ですから、大概の作物に直ぐにも起こる変化は無いでしょう。それで農薬の殺菌作用効果がはっきり出れば、それで問題なしとされているのです。

しかし、その結果当然起るのが作物の受けている根圏効果への影響、病虫害、気象変化等、環境ストレス障害に対する抵抗性の低下であり、その為に土壌殺菌剤をはじめとし、様々な農薬の世話になる事態の発生です。人で言えば、薬剤常用を必要とする身体(病気)になると言う事です。

 

Professor Dr. Lorenz Hiltner

土壌に撒かれる土壌殺菌剤、除草剤の使用から、殺菌剤、殺虫剤、植物成長調整薬剤へと、農薬使用幅の増大です。やがて農薬無しでは作物は栽培出来ないとする、農薬使用が常態化する悪循環に陥るのです。

 終には、喩えクスリ漬けであっても、使用基準値は守られているので農薬は問題が有りません!とする 「安全神話」を免罪符にした、生産者、利害関係者側の 「農薬を使うな!と言うなら、この値段では農産物は売れません!」とする 「開き直り」が罷り通る、世界トップクラスの農薬使用大国と言う結果です。

極端な言い方をすれば、産地農業で多投される農薬、多くがその地域の防除暦を中心とする、勝手に換えたりやめたり出来ない集団指導制に従っって守る品質基準、生産性確保の常套手段であり、農薬の適正使用範囲の遵守で正当化されている集団合意の目的達成行動であります。

 

―常態化するハウス土壌の薬剤の灌注作業―Web Pageより

それならば、農薬の使用を少しでも減らし、さらなる無農薬に挑戦されて居られる農業者の方々の努力、それはそれ、別なシステムで管理される農業と言う農政の考え方になります。

ご存知のように、有機JAS法に基く 「有機栽培農産物」、「エコファーマー」制度等による 「特別栽培農産物」等、色々あるのですが それらの表示によって 「それだけ高く生産物は売れます!」では、その真の意味から納得はきません。

 一方、其の農薬も今、転換期を迎えていて、生態系( Ecosystem)を守る意味での生物農薬、天敵昆虫等や微生物を利用する、作用機作の異なる農薬が色々登場はして居ます。唯、利用者の意識次第であり、其のコストパーフォーマンスも課題です。

 扨て、土のバイオトイレ機能を守る事は、取りも直さず土壌生態系を守る事であり、自然環境を含めて人の健康、其の生存環境を守り、さらには地球全体の環境を守る事に繋がるが故に、支持されるべきであります。

その土壌を守る事、その大切さを一番に理解できる立場にあるのが自然を相手にして農業生産活動に従事する農業者であり、生態系が守れる農業の持続できる事の価値、消費者を中心に社会全体に農の本質を理解させられる直接的な責務を担える立場にあると理解して頂きたいと思います。

 

―マルチング同時土壌消毒機作業―WebPhotoesより

今、地方の活力創生が叫ばれていますが、必要なのは狭い国土の有意な分散活用、多くが食と健康を支える農生産活動であり、農業従事者の高齢化、増える耕作放棄地、加えてのTPPに依る農産物の市場開放圧力、内憂外患の今日ですが、従来の価値観に基ずく経済優先の施策ではどう見ても日本の農業の将来は、立ち行かい事は明らかであります。

農業に対する理解を新たにする新しい価値の創造、然るべき先端農業技術を目指すしかありませんが、それには本質の理解に乏しいとする、そんな想いで取り上げて見たのが 「土」を守る上でのバイオトイレ機能の話です。

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