白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

新プランター栽培の培地の特性

2014年02月04日 | 容器園芸

土壌は、其の中に含まれる粘土や腐植成分の微細な粒子が凝集して団粒化した間孔隙を持つ多孔質構造体であり、植物にとって大切な養水分の供給能、その保水性と相反する排水性とをあわせて持つ事ができる事から、土壌の孔隙は土の命と謂われるのです。しかし、この土壌の団粒構造、永久に保たれる訳でなく、容器栽培用土等では容易に崩れ、大切な保水性や排水性が劣化します。

 プランターや鉢などを用いる用土では、ご存知のようにその団粒構造を維持させる為に、微粒子で構成された粒状の赤玉土、腐葉土、団粒が崩れても排水性が劣化しないように粗い砂礫土等を配合した 「培養土」と呼ばれるが園芸用土が多く利用されて居ます。

 

―土壌から摂取する栄養素―肥料協会イラストより

土壌は亦、粘土や腐植の肥料成分を保持する能力、合わせて土壌自ら持つ無機成分、鉄、亜鉛、硼素、マンガン、銅、塩素、モリブデン、ニッケル等、植物に必須の微量要素の供給能、土壌pHの中性を自立的に保つ緩衝能をその機能として有しています。

  その構造を概念的に表したのが土壌の固相、気相、液相であり、その三相構成、間孔隙率、間孔隙径分布が保水性、排水等を土壌の物理性と言い、又、電気伝導率、水素イオン濃度、陽イオン交換容量等を土壌の化学性と言います。

 

―土壌の理想的な三相構成―

更に、土壌の作用として揚げられる特性には、土壌微生物等、土壌に住む生物群の持つ作用、其処に栽培される作物との関係で考慮されるべき機能としてよく謂われるのが土壌の持つ生物性であります。

  土壌生物生態系が、作物にどのような作用を果たしているか良く分からないと言いますが、多くの知見でその効果が明らかにされて居り、特に根圏と言われる植物根に接する限られた土壌領域の微生物と植物の共生を根圏作用と言い、土壌有機物等の無機化に依る肥料成分の供給能など、その物質循環の要となる土壌生態系の食物連鎖が土壌の健全な機能を支え、植物に取っての土壌の本質的な役割を果たしていると言う事から生物性と言うのでしょう。

  

―法定土壌改良材の能登ケイソウ土焼成粒―

それでは、その土壌機能を代替する特殊な媒体を用いる新プランター栽培、其の培地にはどんな特色があるのでしょうか、改めてお話致します。

 新プランター栽培で用いる培土の主構成分は、珪藻プランクトンの珪殻が化石化して堆積した珪藻土ですが、その中でも、特に風化が進んで含まれる粘土成分の多い性質を利用して、一定サイズに造粒、焼成したのが能登ケイソウ土焼成粒であります。

 

―珪藻土焼成粒の細孔模式図―

その焼成粒、微細な珪殻の細孔が1次、2次、3次にわたる高度な通導性を持つ独特の孔隙分布を構成しています。
此の構造体、見て分かるように、土粒子で作られる団粒構造体とは全く異なる、元は生物が形成した多孔質構造体であり、それが造粒焼成した為に全く崩れない特異な硬質組織体となっているのです。
その構造体、実は優れた保水性と排水性を半永久的にあわせ持つ、土壌多孔質構造体には見られない高度な浸潤性、高い不飽和透水性を有しています。

それで、此の粒材の本来の目的は、その物理的特長を利用しての土壌の透排水性の改善であり、特定の土壌に混合してその透水性を改善する 「地力増進法」で定められた 「法定土壌改良材」となり、ゴルフ場開発などの大規模な植生土壌の改善に利用されているのです。

 その特異な物理性に着目し、限られた容積のプランターや鉢等でも、大型野菜まで栽培を可能する園芸容器栽培用の培地として利用する方法を思い付いたのが 「新プランター栽培」であります。


 藻殻の電子顕微鏡写真―Wikipediaより

この粒材、もとは珪藻土と言いますから、土としてはどの様に分類されるのでしょうか。実は日本では無く、海外の試験機関で実施された検査資料ですが、

粘土              0.69%

シルト .002mm -.05mm    2.8%

砂   .05mm - 2.00mm   96.91%

礫   > 2.0mm          0.00%

となる 96.91%が.05mm - 2.00mm の単粒度の砂に分類され、其の飽和透水係数、乾燥密度、土粒子密度は下記の通りです。  

飽和透水係数 cm/秒 0.164

乾燥密度    g/cc 0.62

土粒子密度   g/cc 2.21

そして、其の水分保持量ですが、各吸引圧下の毛管水保持率、空隙率が、下記の通りです。

張力10 CM    水分 57.8%   空隙14.3%

   20 CM        38.5%      33.6%

   30 CM        37.5%      34.7%

   40 CM        37.0%      35.2%

この培地、特異な多孔質体の持つ優れた毛管保水力、加えて高度な通導性による培地全体の養水分の浸潤性により、用土容器栽培の半分以下の容積でも、植物に高い根密度を形成させて高度な養水分の摂取効率を上げる働きがあると分かったのです。

 其の鍵は、培地の空隙率が約72%もあり、其の空隙に占める保水能が、プランター内で常に約35%前後に保つ事ができる事、その養水分の大部分が低い水分張力下で保持される事であり、又、培地の保持する水分勾配が、植物にとって大変好ましいと言う事であります。 

言い換えれば、この培地は35%前後の液相と気相、30%の固相を、常に維持しようとする物理性(毛管作用)を有して居て、其処に保持される養水分が植物にとって極めて摂取しやすいエネルギー状態にあると言うことです。

 

    ―ケイソウ土焼成粒の水分張力に相関する気相/液相率の示すグラフ―

そこで必要になるのは、その植物の養水分摂取に備えてプランター内の媒地にどうやって常に体積率35%の養水分を維持させるかの工夫であり、思い付いたのが、プランターの底面部分を一定高さ迄貯水して飽和養水分帯域(ウォーターテーブル)を作り、その底水面から毛管給液させる方法、所謂、サブイリゲーション方式の毛管養水分とする事です。

栽培容器内に、植物が根を張る不飽和養水分域と底面に貯液する飽和養水分域を形成させて、植物の養水分摂取で減少する根域の養水分が自然原理に従い、自律平衡的に毛管上昇して補給されるように構成したのです。

―底水面灌水法のイメージイラストー

言うまでも無く、其の栽培効果は、従来のプランター用土栽培と較べものに成らない程優れている事は栽培写真でもお分かりと思います。

このような原理、土壌由来の多孔質構造体を利用すれば、底面給液栽培法は可能であり、毛管給液法として水耕栽培でもいろいろと考案されて居ますが、実効性に課題があり、特に土壌機能を離れた水耕法では、変化する養液の組成に発生する問題を克服して高い栽培効果を上げるのは容易ではありません。

 

―標準プランター3本仕立て大玉トマトの収穫―
言うなれば培地の化学性であり、前述の土壌の持つpHの安定した中性を保つ自立的な緩衝能、この媒地にも、それが必要な事が分かりました。その為に一定量の保肥力改善の土壌改良資材を媒体に添加しています。

そして、もう一つ分かった事は、この栽培法にも必要な根圏作用であり、用土と同様に根圏微生物が住み付いて根圏で共生できる培地の環境です。その根圏微生物を涵養する条件が、この培地の持つ3ミクロン以下の根毛も毛管水も容易に出入り出来ない微細孔にあると、ネット上の別情報で知ったのです。言い換えれば、その要件をそのケイソウ殻由来の微細孔に備えていると言う事です。                               

所謂土壌の持つ生物性であり、脱落する根毛等、排分泌物の清浄化を果たす、根圏作用ですが、この栽培法にも健全な根環境を維持する作用が培地の構造的な特性で備わって居たのです。

 

―培地の生物性を示すスナップエンドウの根に付着した根粒―

この土を超える機能は、自然が生んだ珪藻プランクトンの持つ珪殻細孔が作り出した多孔質体の不思議と申せますが、実はどんな珪藻土焼成セラミックス粒でも、その効果が同じとは行かない事も比較栽培実験で分かりました。其の媒体の特性の違いが、其処に育つ植物には分かるのでしょう。

尚、この表題のブログ、丁度一年前に発表したのですが、今般、加筆訂正して再掲させて頂きました。

 


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