熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

マーコットの美味しい季節になりました

2006年02月26日 | 柑橘類
 昨日、沖縄本島北部の名護市にある「道の駅 許田」で「マーコット」という柑橘を購入しました。

 沖縄県の主要な柑橘と言えば、夏の「青切りみかん(温州みかん)」、秋の「シークヮーサー」、冬の「タンカン」ですが、それ以外の柑橘も少量ですが栽培されています。
 今回紹介するマーコットもその1つで、2月中旬頃から美味しさがのってくる晩生のタンゴール(みかんにオレンジを交配して育成された柑橘類の総称)の一品種です。



 マーコットの魅力は何といっても濃厚な味わいです。
 沖縄県産の柑橘は、爽やかな酸味やさっぱりした味わいが魅力のものが多く、強い甘味を特長としたものが少ない様に思われます。
 その中でマーコットは、2月中旬以降であれば糖度14度以上の濃厚な味わいになることから、個性的かつ魅力的な柑橘です。また、酸味、香り、果汁量も申し分なく、私が初めてマーコットを食べたときには「沖縄県でもこんな美味しい柑橘が作られているんだ」と感動したものです。

 しかし、沖縄県においてマーコットはメジャーな柑橘とは言えません。
 何故なら、沖縄県におけるマーコットは栽培面積、出荷量が極めて少ないため、売られている果実をほとんど目にしないからです。
 そもそもマーコットは、全国でも栽培面積22ha、出荷量317.3tしかないマイナーな柑橘です。



 何故、美味しいマーコットがメジャーになりきれなかったのでしょうか?

 マーコットが初めて日本に導入されたのは1954年(昭和29年)、沖縄県に導入されたのは、1976年(昭和51年)頃とされています。
 導入されてから間もないから普及が遅れているという訳ではなく、耐寒性が弱いため本土では栽培に施設が必要であり生産コストがかかること、隔年結果が強いため生産が安定しないこと、種子が多い・果皮が剥きにくい等の食味以外の嗜好的理由等が普及を妨げた原因と考えられます。

 私が購入したマーコットは、価格がタンカンの2倍程度でしたが、これも生産量が少ないからでしょう。
 そして、果皮が少し剥きにくいです。果梗部(ヘタ)側から剥くと剥きやすい様です。
 さらに種子が多い・・。温州みかんサイズの果実ですが、種子が15個以上入っているものもあります。
 確かに文句なしに広まる品種ではないかもしれません。

 でも、美味しいんです。

 そう思っているのは私だけではない様で、マーコットは最近注目を集めている様々な中晩生柑橘類の育種親として利用されています。
 「せとか」、「麗紅」等、マーコットの血を引く柑橘類が近い将来日本の食卓で人気者になるかもしれません。

 マーコットを見かけることがあれば、一度は話のタネに食べてみてください。

○参考資料
 ・「話題の柑橘100品種」.松本亮司・喜多景治・向井武・大和田厚.1997.愛媛青果農業協同組合連合会.
 ・「中晩生柑橘の特性調査 ~その2.早香、不知火、マーコットの発育特性~」.伊藝安正・新崎正信.1995.平成6年度 専門技術員現地調査研究推進事業報告書;p.40-47.沖縄県農林水産部営農推進課
 ・「平成15年産 特産果樹生産動態等調査」.2005.農林水産省果樹花き課.
 ・「注目される中晩生カンキツの品種と栽培方法」.嵩原利雄.2006.果実日本;2006年3月号;p.18-23.日本園芸農業協同組合連合会.

バナナペーパー

2006年02月20日 | バナナ
 今日は私が最近読んで面白いと思ったバナナに関する書籍の紹介をしたいと思います。
 書籍のタイトルは「バナナ・ペーパー―持続する地球環境への提案」です。



 皆様は「バナナペーパー」というものをご存知でしょうか?
 バナナペーパーとは、皆様もよくご存知のバナナの「茎」(バナナは草本植物ですので、木の幹に見えるところを仮茎と呼びますが、今回は便宜上「仮茎=茎」と表現します)を原料して作成された紙のことです。



 バナナは熱帯・亜熱帯地域で食糧として輸出産物として栽培されている重要な作物ですが、果実を収穫した後の茎の部分は産業廃棄物として扱われていることがほとんどです。
 しかし、バナナの茎には強靭な繊維が含まれているそうで、それを利用して紙を作った人がいて、それが世界規模で注目されているのだとか。

 何故バナナの茎で紙が作れたら注目に値するのか?ですが、それには私たちの生活で当たり前の様に使っている「紙」の原料について考えるとわかりやすいと思います。
 私たちが通常使用している紙の91%は森林木材を利用した木質紙です。それ以外に草本を原料とする非木質紙が9%あるわけですが、非木質紙の原料の60%は藁なんだそうです。

 「バナナを原料にした紙って珍しいんだ!凄い!!」

 と言うもの確かに凄いのですが、バナナペーパーを作るに至ったのはバナナの生産国の多くが経済的に貧しい発展途上国であることと深い関係があります。

 現在、バナナを生産している熱帯・亜熱帯地域の国は紙を輸入しています。
 これは、熱帯・亜熱帯の国々が自国に製紙工場を整備しようとしても、既に熱帯森林の50%は消失しているため原料となる木材の調達ができないことに加え、製紙プラント建設には少なくとも3,000万ドル(34.5億円:1$=115円で計算)以上を要するからなんだそうです。
 発展途上国には3,000万ドル以上の設備投資を行う余裕はありませんし、原料確保が困難な国に投資して製紙プラントを整備する先進国もありません。

 そこで、登場するのがバナナペーパーです。
 バナナペーパーの製紙工場は、規模を小さくすれば300㎡程度の建物で作業が可能で、そこに設備備品で6.5万ドル、技術研修費で2.5万ドルの合計9万ドル(1,035万円:1$=115円で計算)程度の初期費用で運営が開始できるそうです。
 しかも、バナナペーパーは環境汚染のない「無薬品の製紙技術」で作ることができる上に紙としての品質は木質紙よりも強靱で高品質なんだそうです。

 つまり、熱帯・亜熱帯の国々で産業廃棄物として扱われていたバナナの茎からバナナペーパーを作れる様になれば、

  1.少額の初期投資で製紙工場が整備できる。
  2.産業廃棄物の処理と新産業確立(新たな雇用先)が同時にできる。
  3.自国産の上質な紙が得られる様になり便利な生活と経済的自立が図られる。
  4.天然林伐採に歯止めをかけることが期待できる。
  5.環境に優しい製紙技術である上にバナナの葉による優れた二酸化炭素吸収が期待でき地球環境の再編循環システムの起点にもなるかも。

 と良いことずくめ。
 特に原料を新たに栽培するのではなく、既存の産業の廃棄物を利用できるところが素敵だと思います。

 このバナナペーパー作りを熱帯・亜熱帯の国々に広めようとしているプロジェクト「バナナ・グリーンゴールド・プロジェクト(Banana Green-Gold Project)」が国連主催の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(World Summit on Sustainable Development, Johannesburg Republic of South Africa/通称;環境開発サミット)」で注目を集めたり、「愛・地球博」で関連パビリオンが出展される等、話題になるのも頷けます。

 また関連情報として、大使館派遣員としてハイチ共和国に赴任した女性職員が、貧困にあえぐハイチで、バナナの木から紙を作るプロジェクトをスタートさせる映画「ミラクルバナナ」も気になります(音楽は角松敏生さんが担当)。

 そして一番気になるのは、沖縄で栽培されているバナナの茎を使って遊びで良いからバナナペーパーが作れないかということです。
 実際に自分でバナナペーパーを作ってみれば、どの位の労力とコストが必要なのか?バナナペーパーの品質は木質紙を本当に上回るのか?等が体験できて楽しそうです。

 もしバナナペーパーを自作するときは、バナナの繊維で草履も編みたいものです。

○参考資料
 ・「バナナ・ペーパー―持続する地球環境への提案」.森島紘史.2005.鹿島出版会.
 ・「バナナ」.大林宏.2000.国際農林業協力協会(AICAF).
 ・「平成16年産 園芸・工芸農作物市町村別統計書」.2005.沖縄総合事務局農林水産部統計調査課.



「おきなわ花と食のフェスティバル」レポート

2006年02月09日 | イベント
 2月4・5日に開催された「おきなわ花と食のフェスティバル」に行ってきました。
 イベント内容は盛りだくさんでしたが、私的都合によりイベント会場における滞在時間が短く全箇所をくまなくチェックすることができませんでした。

 それでも、私が毎年関心をもっているコンベンションセンター内における果樹コーナーと植木市の話をレポートします。

 まず、コンベンションセンター内における「果樹コーナー」ですが、ここは「果樹品評会」と「沖縄の果実(展示)」により成り立っています。

 「果樹品評会」と云っても沖縄の2月はタンカン以外はまとまった量が確保できないのか、「果樹品評会」=「タンカン品評会」が現状です。



 しかし、タンカンを「名護紅早生」と「垂水1号」の品種別に審査しているところに関係者のこだわりを感じます。
 品評会の審査は各品種において、3kg箱に2L玉の果実が15個並べられたものを用い、外観(果皮色、傷や病害虫被害の有無、玉揃い)及び内容(食味、果肉色、糖度)の総合得点により順位を決めているとのことです。
 これまでは、両品種を合わせて70点程度の出品数でしたが、今年は100点を超える出品物があったことからも今年のタンカンが豊作であることが伺えます。

 次に「沖縄の果実(展示)」を見ますと、幅2m弱のこぢんまりとしたコーナーなのですが、冬に収穫される沖縄の果実が並んでいます。



 このコーナーは、パネルボード(展示果実の一部を紹介するパネルが貼られている)を挟んで片側が柑橘類、もう片側がその他果樹の展示となっていました。そして、周囲に鉢物のパッションFとパインアップルが並んでいました。



 柑橘類の展示では、パネルは「名護紅早生」「垂水1号」「天草」「シークヮーサー」の4種類。果実は、「タンカン(名護紅早生、垂水1号が品種毎に展示)」「シークヮーサー」「シキキツ」「キンカン」「せとか」「天草」「ハッサク」が展示されていました。

 この中で気になったのはシークヮーサーのパネル。
 シークヮーサーの説明文の後に田中長三郎氏によるカンキツ属の分類を簡単な模式図で描き、「シークヮーサーとシキキツ(四季柑)は別種の柑橘類です。」と明記していたことです。
 これは、先日新聞紙面を飾った「シークヮーサー適正表示 国に「定義」を要望」の記事を意識したものと思われます(沖縄タイムス.06/01/28)。
 だから、例年は展示のないシキキツの果実も展示されていたのでしょう。

 シークヮーサー(Citrus depressa Hayata)とシキキツ(Citrus madurensis Lour.)は、学名が違うことからも別種であることは明確だと思うのですが・・・。
 この話はまた別の機会にしましょう。

 話が脱線しましたが、再び「沖縄の果実(展示)」の柑橘類以外の果樹展示についてです。
 パネルは「マンゴー」「パッションフルーツ」「パパイア」「パインアップル」「毎日くだもの200g」「おきなわの果樹拠点産地マップ・沖縄における果樹収穫時期」の6種類。
 果実は「パッションF」「パパイア」「パインアップル(ソフトタッチ、サマーゴールド、沖縄8号)」「パラミツ」「アテモヤ」「スターフルーツ」が展示されていました。

 「その他果樹」のコーナーは、微妙なこだわりがたくさん見られました。
 まずパネルですが、」「毎日くだもの200g」「おきなわの果樹拠点産地マップ・沖縄における果樹収穫時期」は新作です。

 「毎日くだもの200g」と云えば、農林水産省がすすめる果物消費推進の施策です。
 沖縄県も一緒に取り組んでるんですね。
 「毎日くだもの200g」については、パネル展示の他に小さなパンフレットも配布して普及に努めていました。

 「おきなわの果樹拠点産地マップ・沖縄における果樹収穫時期」は沖縄県内における園芸拠点産地のうち果樹の拠点産地はどこかが描かれた地図でした。

沖縄における果樹拠点産地は、

 ・マンゴー(豊見城市:平成12年6月28日認定)
 ・パパイア(豊見城市:平成12年6月28日認定)
 ・パッションフルーツ(糸満市:平成15年9月24日認定)
 ・パッションフルーツ(恩納村:平成17年6月22日認定)
 ・シークヮーサー(大宜味村:平成17年10月6日認定)
 ・シークヮーサー(名護市:平成17年10月6日認定)

 の4品目6市町村だそうです。

 次に「沖縄における果樹収穫時期」のパネルですが、品目別に月別市場入荷時期と割合がわかる様に描かれたグラフでアイデア賞ものだなと思いました。
 そのうち「熱帯果樹写真館」でも真似して作ろうと思います。

 あと例年であれば果実の展示だけにとどまっているコーナーなのですが、今年は拠点産地を強調するといったニュアンスなのか、パッションFの果実展示の横に小さな鉢で結実させたパッションFの鉢物が展示されていたり、糸満市の特産品であるパッションフルーツワインが飾られている等の広がりがありました。



 小ネタとしては、アテモヤがさりげなく「ジェフナー」「アフリカンプライド」の2品種展示されていたり、この時期結実さえ珍しいであろうパラミツ(まだ幼果でしたが)が展示されている等が見受けられました。

 そして、コンベンションセンター会場を出て野外の露店を巡りますと果樹種苗を扱っているテントが3つほど見つかりました。

 そのうち1つでは、さきほど話題にあがったシキキツが売られていました。
 白い花と黄色くなった果実が同時に着いているところがシキキツらしいです。



 また別の店では結実したペピーノを看板にペピーノの苗を売っていました。
 その苗の中には蕾が着いているものもあり、「いいなぁ」と眺めていたのですが、気が付けば私は店主と値段交渉していました。
 結局、表示価格を25%引きして頂き、ペピーノが我が家のベランダ栽培果樹に加わることになりました。

 その他、アンケートに答えるだけで5kg詰めの堆肥がもらえたり、お腹いっぱいになる位にあちこちで試食ができたりと楽しいイベントでした。
 来年はもっと時間をたっぷりかけて全体をしっかりと見たいと思います。

「おきなわ花と食のフェスティバル」が開催されます

2006年02月02日 | イベント

 2006年2月4日(土)~5日(日)に宜野湾市にあります沖縄コンベンションセンター、宜野湾市体育館、海浜公園中央広場(この3箇所は隣接しています)で「おきなわ花と食のフェスティバル」が開催されます。

 このイベントは「“県内最大”農林水産の祭典」と銘打たれており、沖縄県内の野菜、花、果樹にちなんだ品評会が開催されていたり、プロの料理人による沖縄県産食材を用いた料理実演があったり、農林水産業に因んだ出店がたくさん出ていたり(果樹の植木市も充実)するのですが、今年は昨年までの「農林水産フェア」の名前を一新したことに伴い、内容がさらに充実するそうです。

 今年から追加される内容は、「同フェスは毎年開催している「農林水産フェア」を衣替えし、従来の品評会に加え、展示即売や試食、地産地消弁当・新鮮ジュース販売など、より消費者のニーズに合った内容を目指す。県栄養士会による食生活診断や、農業体験バスツアーも予定している。宜野湾市海浜公園多目的広場では、農業をテーマにした創作劇「大航海レキオス外伝豊饒遊びステージ」も開催」とのこと。(琉球新報.06/01/27

 その他「農業体験バスツアー」も開催されるとのことで体が1つでは足りない感じです。

 今週末の予定は「おきなわ花と食のフェスティバル」で決まり!
 園芸好きの方、食べるのが大好きな方、お奨めのイベントですので是非ご参加ください。


○関連情報
 ・沖縄県農林水産部流通政策課提供の詳細情報(PDF)