熱帯果樹写真館ブログ

 熱帯果樹に関するトピックスをお届けします。

台風対策事例01 バナナ

2012年09月26日 | バナナ

 2012年の沖縄島周辺は台風の当たり年の様です。

 これまでに、
 6月上旬:台風3号(6/5に南大東島が暴風域に)
 6月中旬:台風4号(6/18夕方から沖縄島で暴風を警戒)
 8月上旬:台風11号(8/5に沖縄島直撃、暴風域はなし)
 8月下旬:台風15号(8/25-27に沖縄島が暴風域に、最大瞬間風速は那覇市で38.5 m/s)
 9月中旬:台風16号(9/15-16に沖縄島が暴風域に、最大瞬間風速は宮城島(うるま市)で57.5m/s)

 そして、9月下旬には史上最大の台風17号がフィリピン沖に控えています。

 沖縄県では、台風は毎年発生する自然災害と割り切って付き合わないといけません。
 しかし、何も対策をしないと果樹園は大きな被害を受けます。
 そこで、果樹園を防風林で囲ったり、施設栽培をしたりと普段から台風を意識した栽培を行っています。
 また、品目ごとに様々な台風対策の工夫がされています。

 今回は、バナナの台風対策事例を紹介します。

 その前にバナナが暴風でどの様な被害を受けるかについて(社)国際農林業協力協会から出版されている「バナナ」という書籍から抜粋します。

 秒速20m/s以上の強風では葉は破れ、葉柄は折損する。とくに暑い乾季に強い風が長時間吹くと、葉が乾燥してずたずたに切れ、しおれてしま う。
 株丈が高いバナナでは、強風による被害が大きいことは当然のことであり(表1)、株丈の高いバナナでは、時速40km(秒速11m)以上の強風 で果実収量が著しく減少するが、Grand nain 種のようなわい性バナナは、70km(秒速約19m)以上の強風でようやく影響が出るといわれる。


表1.強風によるバナナ株の被害
(Stover R. H. ら,1987)





 上記の様にバナナは熱帯果樹の中でも特に風害を受けやすい品目であることが伺えます。
 そのため、バナナ栽培は防風林で囲んだ畑や平張りネット施設で栽培(株丈の低い「三尺」等)することが基本となります。

 この他に結果株は支柱で支えて倒伏しにくくするのも効果的です(写真2)。



写真2.杭を2本/株 使った防風対策事例



 さらに前述の冊子「バナナ」には、

・台風の襲来が明らかになって、強い風が吹き始めたら、商品性の高いと判断される果実は収穫する。(中略)

・風がさらに強くなってきて、株の倒伏と折損が懸念される場合、葉を半分の長さに切除する。風の強さにもよるが、幼葉の場合はなるべく葉の切除を少なくする。



 と云った最終手段も書かれています。

 葉を切除するときには、2012年6月11日の記事で紹介した小型鎌をVP25塩ビパイプに繋いで伸ばした道具が役立ちます(写真3)。



写真3.小型鎌を延長



 台風15号前に葉の長さを半分(強)程度でザックリと落としてしまった事例ですが(写真4)、台風16号、台風17号にも負けず倒伏していません(写真5)。
 因みに同じ場所で葉を切除しなかった結実中の株は概ね(2.5株/3株)倒伏しました。



写真4.バナナの葉を半分(強)程度切除





写真5.台風16号後も倒伏しなかった
(背景にあった他の株は倒伏したので見通しが良くなっています)



 葉の切除により葉面積が小さくなってしまったので果実肥大や品質に不安は残りますが、バナナの台風対策の手段として憶えておいて損はないと思います。


〇参考文献
 ・「バナナ」.大林宏.2000.国際農林業協力協会(AICAF).

〇参考サイト
 ・「気象庁
 ・「沖縄気象台
 ・「Joint Typhoon Warning Center (JTWC)」;米軍の台風情報

「紫グアバ」をもらいました

2012年09月12日 | グアバ

 2012年9月上旬に知人から「紫グアバ」をもらいました。
 「紫グアバ」は、沖縄県内では多くはありませんが庭木等で見かけることがあります。
 これまで花や果実を見る機会はありましたが、今回は樹上で柔らかくなった果実を食する機会に恵まれましたので、報告したいと思います。

 「紫グアバ」の食味等に触れる前に、「紫グアバ」が文献上でどの様に記載されているかを確認します。
 私は「紫グアバ」について書かれた文献を余り知りませんが、台湾の果樹図鑑「台灣蔬果實用百科3」に「紫グアバ」の写真とわずかな記述があります。
 それによると、台湾では「紫グアバ」は「紅皮拔(赤皮グアバ)」と呼ばれている様です(写真2)。



写真2.「台灣蔬果實用百科3」に掲載されている「紅皮拔」の写真



 さらに

●品種
 (中略)
 観賞用品種種有紅皮拔、香拔、草苺番石榴等。

 観賞用の品種として「紅皮拔(赤皮グアバ)」、「香拔(香りグアバ)」、「草苺番石榴(ストロベリーグアバ)」等がある。(ねこがため訳)



 という風に、「紫グアバ」である「紅皮拔(赤皮グアバ)」は観賞用品種として紹介されています。
 そのため、私は「紫グアバ」について特に興味を示していませんでした。

 とは言え、樹上完熟果を食する機会があれば、一応データを取りたくなるのがマニアです。
 以下、今回得た「紫グアバ」に関するデータを記します。


 収穫日:2012年9月4日
 試食日:2012年9月5日
 果実重:88.7g
 果実サイズ(縦径×横径×横径):48.8mm×58.3mm×57.7mm
 果肉厚:上部;12.8mm、横部;10.8mm
 Brix:9.8

 「紫グアバ」の最大の特徴は果肉色が紫色なことです(写真3)。これは珍しい果肉食の果物であるだけでなく、他の果肉色のグアバと混ぜて彩りを豊かにできる=グアバという果物の魅力向上に繋がりそうです。



写真3.「紫グアバ」の果実
(左:果頂から見た果実、右:果実縦断面




 果実サイズは一般的なグアバより小ぶりです。
 食味はBrixの数値(Brix:9.8はグアバとしては、やや高め)より薄味な印象を受けました。酸味がとても少ないことと関連しているかもしれません。
 食感はクリーミー(石細胞は僅か)で、果肉が厚く、種子が少ない様でした。
 香りは少なく、全体としては「小ぶりで風味は薄いが嫌な感じはない」という感想を得ました。

 樹勢が強い感じがしないので、収量は低めかもしれませんが、全くの戦力外として見ていたのは改めた方が良いかもしれません。
 果物は先入観に捉われずに食べてみることが大切だと改めて思いました。


〇参考文献
 ・「台灣蔬果實用百科3」.薛聰賢.2001.台湾普緑出版部.